ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その14(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 4/11)








夕暮れに照らされる長野県N山中。
ケルベロスとの戦いは熾烈を極めるものとなった。

霊波刀、神通鞭、破魔札・・・・鋭い爪、牙、蛇の尾・・・

両者は持てる武器を最大限に生かし、お互いの息の根を止めようとする。
そんな中、横島と『美神』がケルベロスと戦闘を開始してから気付いたことがある。
それは両者の敏捷性の差。

確かにケルベロスはその巨体に似合わず素早い動きをする。
並みの人間では太刀打ちできないだろう。
しかし、横島と美神の反射神経、細かな動きという点では頭一つ分ケルベロスを上回っていた。

「いいわね、横島クン!」
「了解!」

それを理解して作戦を実行する二人。
まずは二手に分かれ相手の注意をそらす。
頭は三つあっても体は一つ、どちらかに動きを合わせるしかないケルベロス。

ヅガアァァ!!

「おっと!」

横島はケルベロスの前足をかわしながらチラっと美神にアイコンタクトでサインを送った。
それと同時に・・・

「1!」

ビシィ!バシィ!ズバシィ!!


美神の掛け声と共に神通鞭がケルベロスの三頭に傷をつける。
そして間を開けずに・・・

「2!」

ズバアァァァ!!!

横島の霊波刀がケルベロスの左わき腹をえぐる。


『グルアァァァァ!!』

攻撃後のわずかな隙を狙って頭の一つが横島を噛み砕こうとするが。

「3!!」


ヒュっ!
バシュウウウウウウウウゥゥ!!!ドガアアアアアアアっ!!!

そうはさせじと美神の投げた破魔札が炸裂し、ケルベロスを吹っ飛ばした。


パンっ。

ケルベロスとの間合いを開けながら『決まった』とハイタッチをする二人。
長年の付き合いからお互いがどのように行動し、支えるか・・・・
それを分かっているからこそ連携だった。

「でもこのコンボは経費がかかるからあんまやりたくないのよねぇ〜」
「あんたなぁ・・・」

やはり金にせこいパトーナーに苦笑いしかできない横島。
しかし、すぐさまキっとケルベロスを睨んだ。

『グルル・・・ガ・・・ア゛ルル・・・』

いたる所から真紅の血を垂れ流すケルベロス。
だが、地獄の番犬の命を消すほどのダメージは与えていないようだった。

「なら!」
「くたばるまで」
「「攻めるのみ!」」


ダっ!

気合の掛け声と共に駆け出す二人。
前足の爪をスっとかわしながら左右に別れ、走り抜き様に霊波刀、神通鞭を喰らわす。
その攻撃は先ほど同様見事にケルベロスの肉体に叩き込まれた。


しかし・・・

「あれ?」
「お?」

ケルベロスの背後に同時にまわった二人が不思議に顔をあわせた。
そしてお互いの武器を見つめる。

「ねぇ今・・・」
「全く手ごたえがなかったっすね・・・」

先ほどのコンビネーション時と同じ威力で攻撃した二人。
しかし、今度はケルベロスの皮膚と体毛を裂くことが出来ない。

『シャアアアアアァァァァァ!!!』

呆けてる二人に蛇の尾が迫る。
その唾液はトリカブト、人間が噛み付かれれば即座に死を招く。
いや、この蛇の尾にまともに胴を噛まれれば毒が回るまえに砕かれてしまうだろう。
二人はスネークテールの追撃をかわしケルベロスの後ろ足を斬りつける、さっきより霊力を上げて。


ズバアアアアァァァ!!ビシシイイイィィィっ!!!


『グルアアァァァァ!!!』

両後ろ足の痛みに悲鳴を上げるケルベロス。
追撃のチャンスとばかりに更に横島は切り込むが・・・

ガシイイイィィィ・・・


「またかっ!?」

霊波刀はまるで硬い鉱物にぶつかったように弾かれる。
それは美神も同じだった。

「なるほど・・・」
「何かわかったんすか?」

洞察力に優れる令子の声に反応する横島。

「奴はね・・・私達の攻撃力があがれば上がるほど防御力を上げてるのよ」
「なっ!!?」

つまり10の攻撃力で攻撃するとケルベロスの防御力も10。
そして10以下の攻撃は効かなくなる、だから12の攻撃力で攻撃するればダメージを与えれるが、
ケルベロスの防御力も上がる。
結局はいつまで経っても堂々巡りになり両者の体力、霊力勝負となる。


「おそらくこのケルベロスの特殊能力なんでしょうね・・・・、
・・・・だから奴を倒すにはどうすればいいのかしら?横島クン?」

「・・・・・・・・・・・・・・簡単な答えっすよ、美神さん」

横島はそういうと一つ文珠を出し美神に手渡す。
文珠を握りながら微笑む美神。

「行くわよ・・・・」
「了解!」


ダっ!

二人は同時に駆け出す。
しかしそれは何の防御の策もない突進。
そして、ケルベロスは獲物が無闇に突っ込んでくるのを待っているかのようにその鋭い爪を振り上げた。
だが、次の瞬間。


「精霊石よ!!」


カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!


『ギャウ!!』

美神の声と共に眩い精霊石の光が周囲を包んだ。
だが、それはケルベロスにダメージを与えるものではない。
そのフラッシュでケルベロスの視界がシャットアウトされたの3秒程。
しかし、その3秒の間に横島と美神の姿はケルベロスの前から消えていた。

『ガウっ!!』

狐に包まれたような感情を浮かべながら三つの頭で二人を探す地獄の番犬、
そして、その耳が「ヒュウウウウウ・・・」という微かな音を捉える。
バっとその音源・・・・自分の頭上を見上げた。そこには・・・・

「極楽に!行かせてあげるわ!!!」


神通鞭・・・いや、神通棍を振り下ろしながら落下いてくる令子の姿があった。
だが、握っているのはただの神通棍ではない、その柄(つか)には文珠がはめられており

『斬』

の文字が輝く。
文珠をはめ込むことができるよう改造してある美神の愛用神通棍。
神通棍・改はその文字の効果を最大限発揮できるような形に変形する、
その形は神通鞭を圧縮し、更に威力を高めた・・・すなわち『神通剣』とも言えるべきものとなっていた。

「でりゃああああああああぁぁぁ!!!!!!」


ズドン!!!

『ギャルワアアアアアアアアアアァァ!!!!』

令子が着地すると同時に絶叫が展望公園に響く。
そして正面から見て左側のケルベロスの頭がゴロンと地面に転がった。
絶命したその頭の瞳に『ニ頭』になったケルベロスの姿が映った。


そして次は・・・

「はあああああああ!!!!」

霊力極限まで高めながら同じく落下してくる横島。

(俺たちの攻撃力に比例して防御力が上がるなら、上がる前に全力でトドメを刺す!!)

当然にして確かな答え。
だが、もしそれで倒せなければもはや自分達の攻撃力では倒すのは難しくなる。
簡単に見えて、後がない戦法。
横島も美神同様文珠を組み合わせれば攻撃力を限界以上に上げることは出来る。
しかし、使える文珠はあと一つ。
いつでもほんのちょっとだけ策を残す横島はこの文珠を使うことを嫌った。
だからその代わりに・・・・

(これやると疲れる上に三日くらい霊力が極端に落ちるんだよなぁ〜)

心で少しボヤきながらもやるしかない!と気合を入れる。
そして・・・・・

「うおおおおおおおおっ!!!!!!!」


横島の叫びと共に限界まで高められた霊力の刃が漆黒に染まっていく。
そう・・・ルシオラから譲り受けた霊基体のおかげで魔族因子が霊体に少し含まれている横島。

その横島が使える特殊能力・・・それは霊力と魔力の融合。

昔は陰陽文珠などの反則的な能力も使えたが蛍が生まれて以来その能力は薄れつつあった。
したがって、今使っている霊波刀の強化も現在の横島の肉体には過大なダメージを及ぼす。

「くっらえ!!ハンズオブぅぅぅぅぅ!!!」

漆黒の霊波刀が横島と共にケルベロスの首を狙う。

「ハイサラリイイィ──────────────────っ!!!!!!!」


ズバンっ!!!!

極限能力暗黒の霊剣ハンズオブハイサラリーがいとも簡単にケルベロスの右側の首を斬り落とす。
それと同時にシューシューと真っ赤なの血が切り株のような首の跡から溢れ出し、
それと一緒に苦しそうなケルベロスの絶叫が大気を震わした。

「ちっ!!」

ホントなら真ん中の首まで狩るつもりだった横島は着地と同時に舌打ちをした。
しかし、それでも見ただけでケルベロスが瀕死だと分かる。
真ん中の頭はダラリと垂れ下がり呼吸も荒い、
ケルベロスが出血多量で死ぬかは知らないが体中から溢れ出る血液の量は益々増えるばかりだった。

「今ならトドメを!」

ジャキン!!

文珠の効果が切れたもののそれでも強力な神通鞭を振り降ろす令子。
しかし、冥府の怪物の意地だろうか、
ケルベロスはその一撃をかわすとグルっと横に一回転し、その尻尾を隙だらけの美神に食らわした。


バシイイイイィィィっ!!!!


「きゃあっ!」

自分の体にかかる衝撃に悲鳴を上げる令子。
その体はまるでバットに打たれたゴムボールようにふっとんだ。

「令子!!」

ズザアアアアア!!!ドサっ!


地面を滑りながらその体を地面ギリギリで受け止める横島。
そしてグッっと抱き起こしその状態を心配そうな表情で確認する。

「おい!大丈夫か!令子!」

「そんな大きな声出さなくても・・・・うっ!」

元気な表情を浮かべ心配させまいとさせる令子の表情が苦痛に歪む。
そして、ボロボロになった神通棍をカランっと落とし右手で左上腕を押さえた。

「令子、お前左腕を・・・」

「大丈夫よ、神通棍で受けたからヒビですんでるわ・・・・」

とにかく命に別状はない、それが分かりホッとする横島。
しかし、戦況的に見てこれは実質的戦力の低下を意味する。

「とにかくお前は休んでろ」

「そいうわけにはいかないでしょ・・・・ケルベロスは・・・。!!!?」

美神が目標の動きを見て目を丸くした。
自分達が狙われているならまだいい・・・しかし今のケルベロスの視線は・・・狙いは・・・

ひのめと美智恵に注がれていた。


理由は簡単だ・・・。

今、戦っている獲物は強い。
傷を負わせたものの、自分は重症だ。
ならば先に弱い者から喰ろうてやろう。

ケルベロスは苦しそうに呼吸をしながらその赤い舌、血を滴らせながらひのめ達に一歩一歩近づいていった。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa