ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−41


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 4/11)



神族達が降臨する様はユーチャリスにおいても確認されていた。
その姿を見て、ある者は蔑み、ある者は無感動に。そしてある者は死に往く元同胞達に内心で詫び続けていた。

「全て予定通り――――か。
 あまりに思い通りに事が進むと、却って疑いたくなるな」

横島の独白に律儀に応じるリグレット。

「他の魔神達と同様に、神族の上層部もマスターを侮っているのでしょう。
 でも、マスターを侮った報いはすぐに受けることになるでしょう」

「………リグレット、あまり俺を過信するな。
 俺は万能じゃない」

「私にとっては全知全能の創造主です。それが全てです」

「………そうか」

横島はリグレットを扱いかねていた。
愛すべき存在とするにはルシオラとかけ離れており、憎む存在としてはルシオラと似すぎている。
自分に対する過度の盲信。他者への拒絶。
それがここ最近、顕著になって来ている気もする。
だが正直、リグレットの心のケアまで手が回らない。それが横島の現状だった。

「?!!」

モニターを覗いているリグレットが驚いた表情をする。

「どうした?」

「妙神山の辺りに異変が………?」

「………斉天大聖か。
 擬似空間を力尽くで突破しつつあるのか?
 予想外に早いな………」

呟きつつ、戦況に与える影響をシミュレート。
何通りものパターンをシミュレートして、結局彼は思考を放棄した。

「不確定要素を制御するには、時間も手も無い。
 或いは………最大の不安材料を何とかしてくれるかも知れないな」

「放っておくのですか?
 私でも足止め程度なら可能かと思いますが」

「放っておけ。何とかなるだろ」


こうして戦場にもう一体の武神が向うこととなる。









戦場に降り立った神族達。
その面々には、名高い武闘派の神族達もいた。
それを代表するのが、メタトロンに代表される最上級神族達であり、彼らは無言のままに魔族達を狩り始めた。
その複数の翼を持った天使達の威光はGS達の士気を上げる。
その神々しさに、我知らず祈りの言葉を捧げる者もいる。目を背ける者もいる。
まず最初にメタトロン達は戦場全体にメギドの炎を放った。
邪悪なる存在だけを焼き払う神の炎。
力の弱っている魔族、力の弱い魔族はその炎に巻かれて消滅していく。
この剣呑な炎はベスパ達にすら有効であったが、彼女達は即座に結界を張ってそれを凌ぐ。
一方、メギドの炎は邪悪な人間も焼き払い始める。
GS協会の名の元、美智恵に召集されたGS達とて善人ばかりではない。
肌の黒い女呪い師や、某守銭奴も、メギドの炎に戦々恐々としたものだが、何とか無事であったことをここに記す。
とにかく、人間にも少なからず犠牲を払ったメギドの炎は確実に魔族達を弱らせていた。
メギドの炎が消えるや否や、神族達は一斉に魔族達に襲い掛かる。
美神親子との戦いを放棄したベスパ達は、すぐさまゲートに撤収を始める。

予定通りの行動ではある。
しかし、戦況自体は横島の思惑を超えつつあった。
敵がメギドの炎まで使うことなど、想定していなかったのだ。
まさか人間にまで犠牲が出るようなモノを"あちらも"使うとは思わなかった。
おかげで配下の魔族達に甚大な被害が出てしまった。
仕方無く、行動を繰り上げて最終段階に入る。

「これはプレゼントでちゅ」

パピリオが令子に文珠を投げ渡す。
込められている文字は『防』。

「魔神の力を手に入れたポチの文珠でちゅ。
 人間だった頃のモノとは比べ物にならない威力でちゅよ?
 すぐに必要になるから持っておくと良いでちゅ。
 それじゃあ、私は行きまちゅ」

そう言って令子の返事も待たずに、妖蜂の魔族達を盾にゲートへ飛び込む。
ただし、そのゲートは彼女達や神族が出てきたゲートではない。
思い出して欲しい。
ヒャクメの報告にもあったことだが、ゲートのサイズが出来た当初よりも縮んでいたことを。
魔界はゲートに干渉して、出入り口を二つにしてしまったのだ。
つまり、ゲートを分割してしまい、魔界直通の道を確保していたということになる。
では何故そのような手間を取ったのか?
元々この戦いは神軍の壊滅を目的と位置付けていた横島は、ゲートの存在に注目した。
現在、ゲートは神族が使用している。
よって、魔界側からゲートを使用すると、神族達のど真ん中に降臨する形となる。
魔界への帰還もまた、神族達のど真ん中を突っ切る必要がある。
これではどちらも危険過ぎる。
だからこそ、ゲートを分割して安全なルートを確保したのであるのだが、そこにはもう一つ目的があった。

「さて、ゲートを破棄するよ!!」

ベスパの号令の元、彼女達は自分達が使用した予備のゲートを破壊し始める。
元々不安定なゲートを、無理矢理分けて更に不安定にしていたため、簡単にゲートは崩壊する。

「これで私たちの仕事は終わりでちゅね。
 後はワルキューレの仕事でちゅ」

パピリオが背伸びをしながら言った。




同時刻。
ベスパ達の撤退を確認したワルキューレは、本来のゲートを通して、魔界からあるモノを射出する。
そのあるモノが戦場へのルートに乗ったことを確認した後、すぐさまゲートを破壊。
厳重に封印する。




それは聖も魔もない原初の炎。神界・魔界の誕生以前から存在する古の炎。そして今尚、各界で燃え盛る創世の炎。
ジェネシスフレイム(創世の炎)を内包した、言うなればジェネシスボム(創世の爆弾)。

あらゆる物を焼き尽くすそれの標的は、圧勝したと思い込んでいる神族達であった。








「メタトロン、サキエル、シャムシェル、ラミエル、ガギエル、イスラフェル、サンダルフォン、マトリエル………。
 神界の名士録が作れるな」

「竜神族や4大のセラフ(熾天使)は降臨しなかったようですね」

リグレットが残念そうに応じる。

「まあそう言うな。メタトロンとサンダルフォンは最上級神族だし、他の奴等も上級に数え上げられる天使達だ。
 他にもヴァーチャーズやソロネ、ドミニオンやアークエンジェルスが多数降臨している。
 神界の主戦力の3分の1ってところか。
 ジェネシスボムで、主力が3分の1も消し飛んでしまえば、神族どもは神界防衛で外に出られなくなる。
 神界は簡単に動けなくなる。十分な成果だよ」

「全てはマスターの意のままに………ですね?」





斉天大聖が戦場に辿り付いた時。
既に大勢は決していた。
メタトロン達は、人間には聞き取れない圧縮された高速言語による神聖魔法で、逃げ遅れた魔族達を狩りだしている。
残酷なまでに無慈悲な攻撃で、一体、また一体と魔族達は惨殺されている。
それを目撃している人間達が嫌悪感を持つほどに。
メタトロン達にしてみれば、同胞を屠った魔神達への復讐を兼ねると共に、神に対する敬意を失いつつある人間達への見せしめのつもりでもあった。

だが、彼らの調子の良さはそこまでであった。

ゲートを通して、魔界から何かが転送されて来る。
それを察したメタトロン達は、魔界の増援であろうとゲートを囲み始める。
出てきた瞬間に総攻撃。
そう決めて身構えている彼らの前に現れた、たった一塊の炎。
それを見た瞬間、彼らの身の毛がよだつ。

――――創世の炎――――

彼らが使ったメギドの炎以上に、無慈悲に、公平に全てを焼き尽くす炎。
それが目の前にあった。
ゲートのまん前に出現したために、ゲートを通って神界へ逃げ戻ることも出来ない。
彼らはこの時初めて、自分達が嵌められたことを悟った。

『魔族軍が随分あっさりと撤退したのは、勝ち目が無かったからではない。この爆弾に巻き込まれないためだったのか!!?』

次第に炎が膨れ上がり始める。

『このままでは、ゲートを通して神界にまで炎が飛び火する!』

それと察した彼らは、己の命を賭して被害を最小限に食い止めることを決意。
全神力を解放して多重の結界を張り始める。
こんな罠を張った魔族を呪いながら。

訳が分からないといった様子のGS達。
その中で中心を占める美神親子もまた、それは同様。
そこに斉天大聖が姿を現す。

「あれは創世の炎。原初の炎とも言う。
 あらゆるものを焼き尽くす炎じゃ。
 はっきり言って、あやつ等でも凌ぎきるのは難しいのう」

『じゃあどうしろと?』問う美神達に何を今更といった表情で答える。

「この辺り一帯は消滅することじゃろうな。
 神族も、人間も、逃げ惑う魔族も平等にな。
 結界を張るぞ。
 聖・魔・鬼、何でも良い。
 かつて南極で張った以上の強力無比な結界を張れ。
 ワシが更にそれを補強しよう」


唐巣の聖属性の結界。
エミの魔属性の結界。
冥子の式神を周囲に配置して、二つの属性を補強・補完する。
令子が躊躇いながら、貰った文珠を発動する。圧倒的な存在感を持った魔力の壁が展開される。
『――――横島君?』彼女だけにはそれが横島に抱きしめられるように感じられた。
令子のそんな様子に構うことなく、作業は進む。
美智恵が霊力を術者達に流し込むことで、さらに結界を厚くする。
どこから取り出したのか、カオスも訳の分からない装置を作動させている。
原理は不明だし、問い質す暇もないが、順調に結界は強化されている。
そうして張った結界の上から、さらに斉天大聖が結界を張る。

『メタトロン達が、命懸けで威力を封じ込めてくれることは確実。
 そして、"横島が魔界から手助けしてくれている"ことも事実。
 じゃが、それでもこの辺り一帯はメタトロン達ごと消し飛ぶことじゃろう。
 ………お主達は生き残れ』

斉天大聖の声が脳裏に響いた直後。





創世の炎がハジケタ。





その瞬間、魔界でうめく1人の魔神。
(文珠を媒介にしても、人界と魔界じゃタイムラグが大きいか)

拳を我知らず握る。
(図らずとも斉天大聖は良いタイミングで来てくれた………最悪、美神さんだけでも…………な)




彼、横島忠夫もまた、魔界から文珠を媒介にして守護結界を張っていた。
1人の女性を守るためだけに。






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