冷たく降る雨3
投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 4/10)
続けたいから続けちゃった♪
真っ白な部屋の中で告解していた。壁や天井が、まるでないのではないかと錯覚するほどに真っ白な部屋。何処までも果てしなく続くその白色に、言いようのない不安を覚える。
ないことが、あることと同意に思えた。窮屈なその部屋の中に、身を縮め、小さな身体を更に小さくする。
そこにあるのは、柔らかな空気と、穏やかな雰囲気。
それでも、僕の心の中にあるのは、どうしようもない程に重い罪悪感だった。
「ごめんなさい、お母さん。僕はふしだらな夢を見てしまいました」
お母さんは尋ねた。
「どんな夢を見たの?」
と。
僕は身体を震わせながら小さな声で言った。
そよ風でも吹けば、かき消されそうなほどに・・・小さな声で。
お母さんの言葉が、厳しい口調のものであったなら、僕は答えるのに幾ばくか躊躇いを覚えたろう。それとも、話すことを拒んだかもしれない。
でも―――お母さんは優しくて。
「・・・おキヌちゃんが・・・僕にこう言うんだ」
おキヌちゃんって言うのは、僕の幼馴染の子で―――。
蒼色の髪をした、綺麗な女の子で―――。
優しくって、それに、控えめだけど、強い子で。
僕の、憧れと言っても良かった。
理想の女の子・・・そう。
今までは、近くにいたのに意識することもなかった。
男の子、女の子なんて、そんな事、考えることもなかったんだ。
だから、触れることもなく―――。
でも・・・僕は知ってしまったんだ。
抱きしめた彼女の身体の柔らかさに。
彼女は、女の子なんだって。
だから、こんな夢を見てしまったのかもしれない。
「忠夫くん、抱いて欲しいの、ぎゅうって、抱きしめて欲しいの」
僕は、何も言えなくて・・・。
言葉を失ったまま―――彼女を見つめてる。
すると、彼女は泣き出しそうな顔をするんだ。
だから、僕は・・・優しく彼女の頭を撫でてあげたんだ。
「うん」
こう、答えながら―――。
お母さんは何も言わなかった。
考え事をしているみたいで・・・腕を組んでる。
でも、難しい顔はしてなくて・・・。
笑顔のままで、でも、困ったように僕を見つめてる。
時計を見ると、そんなに時間は経ってない。
秒針が一回りした程度。
でも、僕にはとても長い時間に感じて―――。
そして、お母さんは腕を下ろすと、口を開いた。
「それはね?みんなが見る夢なのよ」
いつものように、穏やかな笑顔。
僕はお母さんの言葉に驚いた。
「そうなの?」
そうよ、お母さんはにこにこと笑って私の頭を撫でた。
あんたも、大きくなったのね・・・そう言って、僕の身体を優しく抱いた。
僕はどうしたら良いか分からなかったから、身を任せてた。
ふんわりとしたセーターの感触にうとうととしながら、僕は、胸いっぱいに空気を吸った。
甘い匂い―――僕の意識は沈んでいった。
・・・待てよ?
お母さん、こんなに優しかったっけ?
・・・いいや、こんなに優しいはずがない。
息子に向かって包丁を投げつけるような両親だぞ?
その片割れだぞ・・・?
・・・優しいはずがない。
すると、誰だ?
これは―――
この感触は・・・誰だ?
―――まぁ、良いや。
このまま、眠っちまおう。
だって・・・気持ち良いし。
・・・何て言うか・・・本当に久しぶりな気がする。
こんな・・・優しい感覚に包まれて眠るのは・・・。
俺―――本当に、恵まれてないからなぁ・・・。
苦笑―――。
私は深紅に染まった布団カバーを洗濯機に入れ、洗剤と柔軟材を加えて、スイッチを入れた。ぶんっ、という起動音と共に流れ出す水の音を背に、彼の眠っている部屋に入っていった。
溜め息をつきつつ―――何か、本当に虚しくなってくる。どうして、こう上手くいかないのかな・・・?そんな事を考えるのに、躊躇いはあるものの、覚悟は十分すぎるほど出来ていた。
健やかな寝息だけが部屋の中あった。私は布団の中にあるであろう、彼の姿を見た。
少し苦しそう。
少し悲しそう。
言いようのない、恐怖に怯える幼子のような表情。
正直、似合わないと思った。くすっ、と声を出して笑ってしまう。
すると彼はぶすっとした憮然とした表情を浮かべた。私はまるで自分の姿が見られているようで、少し戸惑い、照れた。
また、不安そうな顔。
いてもたってもいられない気持ちになって・・・。
彼の頭を優しく撫でる。そんな顔しないで、私はここにいるよ?
まるで、子供をあやすように、私は撫でてた。
ずっと、そうしてた・・・でも、私も彼の頭を撫でているうちに眠くなっちゃって・・・
・・・眠ってた。
彼の眠る布団の中に入り込んで。
「・・・おやすみなさい。横島さん・・・」
何時の間にか眠ってました、と・・・そんなふりをすることにした。
柔らかな感触。
肌と肌が触れ合う温もり。
どうしようもなく、気持ち良くて―――。
ふわふわと、宙に浮かんでいるかのようで―――。
人影が見えた。
俺よりも、少し小さな誰かの影。
知っている人かもしれない、声をかける。
「お〜い」
でてきたのは、情けないほど小さな声だった。
答えは返って来なかった。
聞こえなかった?
「お〜い」
もう一度呼びかけてみる。
返事はなかった。けれど、彼女は振り向いた。
そう、それは彼女だった。
蒼い髪の少女―――。
彼女が、微笑んで―――。
そこで、目が覚めた。
そして―――俺の視界いっぱいに蒼色が入ってきた。
続きます。ああ、続くともさっ!!
今までの
コメント:
- 再び夢廼世界へと入ってしまった横島クンの様子と、それを優しく見つめるおキヌちゃんの様子が最高であります(笑)。彼がおキヌちゃんの優しさ&包容力に触れ、あと一歩の勇気を奮い立たせることの出来る日はやって来るのでしょうか?(謎) 今回は個人的に夢の世界の描写が秀逸だったと思います。次回も楽しみにしております♪ (kitchensink)
- ふしだらな夢ですか〜(笑)
今回はこう・・ほのぼのしていて、かつシリアスというか・・。
とってもいい感じです。
次回はどうなるんでしょうね。気になります。 (かぜあめ)
- 読んで下さった皆さん。どうもっす。
コメントを下さった皆さんっ、本当に有難うございますっ!!
というわけでっ、コメント返しさせてもらいますっ!!
・kitchensinkさん
夢廼世界が難しくて、どういう意味なんだろうと日々、悶々(ふしだら)と過ごしているveldです(偽挨拶)。
何が偽だっ!!と綺麗に突っ込みを入れつつ、コメント返しをば。
つーか、とことん、夢の中に入り込む男です・・・書いてて呆れてしまうわけですが(汗) まぁ、何となし、蒼髪の幼馴染シチュエーションを書いてみたかったそれだけで。(をい)
優しく見つめるおキヌちゃん。やっぱ、ここんとこ、御母さんですね・・・(笑)
何か凄く彼女にはお母さんがあってるなぁ・・・と思って。あと一歩の勇気・・・あると思うなぁ・・・。
秀逸・・・何か、嬉しくて仕方がないです(涙) (veld)
- ・かぜあめさん
ふしだら・・・書いた後で少し恥ずかしくなったのは未来永劫、私の胸の中でだけにとどめられる秘密でしょう。おもいっきり話してますけど。
ほのぼのシリアス・・・なかなか書けないと思っていたものがここに現れていたなんて・・・ちょっと・・・軽くショックであったりもするんですが。
でも、結果おーらい(何がだ) (veld)
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