ザ・グレート・展開予測ショー

眩暈


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 4/ 8)






 眩暈を覚える。
 残像の中に見える誰かの幻に。
 孤独は確かにあったと言うこと。
 わかっていたはずなのに。




 全てが壊れてくれたら―――そう思うことがある。

 時々は、自分の持つこの力が疎ましくあるのと同じように―――。
 俺の中には、確実に、破壊衝動って奴がある。
 要らないからと言って、くずかごの中に放れるものならどれほど楽か―――。
 考え、自嘲する。
 いや、捨てはしないだろう。
 きっと。



 手の中に転がした、球状の爆弾は。
 空に放られると輝き―――
 煌く夜空に流れる星となった。

 便利な能力。
 そんな一言で片付けられるものじゃないって分かってるんだろう?

 どうせなら、誰か俺を縛ってくれ。
 ダンボールの中に入れておくなりすれば良い。
 そうすれば、俺は何も出来なくなるだろう?
 きっと。


 持て余してる力。
 人の良心なんてもんは不安定で頼りなく。
 時には、そんな風に思うこともあるんだって。
 分かって欲しいんだ。
 俺は、聖人じゃないんだって。



 「お兄ちゃん・・・」

 「・・・ひのめちゃん?」

 「うん」

 「どうしたの?こんな時間に」

 「お兄ちゃんが・・・外に出たのが見えたから」

 「そっか」

 「そうなの」

 「・・・おいで」

 「うん」

 「空が綺麗だね」

 「うん」

 「少し寒いかな」

 「大丈夫だよ」

 「そっか」

 「そうだよ」

 「痛くない?」

 「大丈夫」

 「それなら良いや」

 「お兄ちゃん」

 「うん?」

 「これ・・・お兄ちゃんが作ったの?」

 「これって?」

 「この、お星様」

 「ああ・・・これか・・・」

 「・・・?」

 「これは・・・うん、そうかな・・・。俺が作ったよ」

 「凄いね・・・」

 「凄いね・・・」

 「えへへ・・・自分で凄いなんて変なの・・・」

 「そう・・・だね」

 「・・・?」

 「・・・」

 「何でそんなに悲しい顔してるの?」

 「そんな顔してた?」

 「うん」

 「そう?気付かなかったよ。どうしてかな?」

 「星・・・綺麗だよ?お兄ちゃんが作った星・・・とっても綺麗」

 「うん・・・綺麗・・・だね」

 



 掴めない―――光の玉。
 幻―――。俺が作ったこの星は所詮幻に過ぎないんだって。
 言えなかった事。




 ねえ、俺は―――本当に良いのかな?このままで。





 「・・・ひのめちゃん」

 「なぁに?」

 「好きだよ、大好きだよ」

 「私もだよぉ」

 「そっか」

 「うん!」

 「良かった。俺、ひのめちゃんに嫌われたらきっと・・・泣いちゃうからさ」

 「そんなことないよぉ、絶対っ!」






 ねえ・・・君がいつか俺の事を恐れる日が来るんじゃないだろうか?

 言葉の羅列の中に浮かぶ、破壊の衝動を引き起こす何かで俺が狂ってしまった時に・・・。

 君を傷つけることがないとも限らない。

 その時には―――君の手で。

 俺を・・・殺して。






 「泣かないで・・・お兄ちゃん」

 「ごめんね・・・ひのめちゃん・・・」

 「?」

 「もう少し・・・このままでいさせて・・・」

 「・・・うん」





 ぎゅっと、膝の上に乗せた小さな身体を後ろから抱きしめて・・・。





 駄目だ―――。
 もしも―――。
 俺は―――。

 誰にも―――殺させない。
 誰も傷つけない。
 大丈夫―――。




 俺は・・・一人で逝くから。



 純粋な眼に映る俺の姿。
 純粋な眼に映る彼女の姿。

 映し出されるのは残されると言う孤独。



 ―――都会に蛍はいないはずなのに。
 空を眺める君の瞳の中に―――。


 ああっ―――綺麗に。

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