ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その13(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 4/ 8)







PM4:35
長野県N山 展望公園




『ハッハッハッハッ・・・・』

まるで血のような赤い舌をだらしなく垂らし呼吸する地獄の番犬。
その体躯は人間界の犬など比べ物にならないほどの巨体だった。

「おい・・・・・・・どうなってんだ・・・」

いきなりのケルベロスの出現に戸惑う横島。

「冥界へ繋がる歪み、その大きさ、その近くにいたひのめの霊力への共鳴・・・・
悪い偶然が重なっちゃったみたいね・・・・」

顔しかめる令子と横島に対してケルベロスは現世への出現を喜ぶかのように舌なめずりをした。
赤い舌で、自分の右足の先についた赤い血をすすりながら。


(血!!?)

そのケルベロスの行動にハっする令子。
おかしい・・・・誰一人まだケガを負ってないないハズなのに・・・・・・まさか!!
令子はケルベロスのむこう・・・・横島とひのめに急いで視線を移した。





SIDE横島

「こんなんと戦うんか!?あ、でも昔・・・・・」

横島はふと15年前に逆天号でケルベロスと対峙したことを思い出す。
パピリオのペットルームでうっかりケルベロスの檻を壊してしまい食われそうになったことを・・・。
そしてそのときの自分と今の自分を少し比べてみる。
あのときは魔族のペット・・・・それが今やGS界でも売れっ子の自分。

(出世したな〜俺・・・・)

ちょっとだけ自分の境遇に涙する横島だった。

「ってそんなことよりひのめちゃん・・・・」

「避難させなきゃ」そう思い肩車のままのひのめを降ろそうとする。
しかし、それを中断するようなことが起こった。

「何だ・・・?」

横島の額からツーと何かが一筋垂れてくる。

「!!?」

自分の頬までつたってきたソレを拭ったとき、横島の表情が変わった。
今横島の手にベッタリと付いているもの・・・・・・・それは・・・・血・・・・・

「なっ!!?」

自分の手についている赤い液体を確認し驚愕の表情を浮かべる。
だけど、それは血を見たからじゃない・・・・その血を流してるであろう人物を

「ふえええぇぇ・・・・おにいちゃ・・・・・グスッ・・・いたいよぉ・・・」

泣き声のひのめをゆっくり肩から下ろす。
少し震えた手から腕に、そしてさっきまでひのめが腰をかけていた横島の首まわりには血がベッタリ・・・・

そう・・・・血はひのめの背中から流れていた・・・・


「くっ!!」

おそらく『冥界への歪み』からケルベロスが出てきたときに裂かれたのだろう、
それにも気付かず自分は何てマヌケなんだ!!

そう自分を責めながら横島は掌に霊力を込める。


ブンっ!!

文珠。
公認登録GSでは横島しか使えるものがいない、万能の能力。
横島はその直径2cmほどの文珠に念を込めひのめの背中にかざした。


『治』

いつも自分や仲間をケガを治療するときに用いてきた文字。
今回もこれで応急処置は出来たはず。・・・・しかし

「何でだ!?」

横島は声を挙げた。
文珠によって傷は治っていく、だが、ある一定のところまで治るだけで完治とはいかないのだ。
確かに一つの文珠で回復しきれないということはある。
しかし、横島は文珠をもう3個も使っていた。

「くそっ!何でだよ!!?」

焦りと苛立ちの表情で4個目の文珠を使おうと右手の霊力を溜めたとき。

パシっ

その腕を誰かが掴んだ。

「落ち着きなさい、忠夫クン!」
「おか・・・いや、隊長!!?」

何でここに!?・・・・横島はそんな野暮なことを言いそうになるが答えは一つしかない。ひのめを探しに来たしか。
横島が自分に気付いたことを確認すると美智恵はその手をゆっくりと離す。

「隊長!ひのめちゃんが・・・!?」

「だから、落ち着きなさい・・・・。文珠はちゃんと効いてるわ。
その証拠に出血は止まりかけてる、完治しないのはケルベロスの爪に含まれる妖毒のせいでしょうね」

冷静な声で横島を落ち着かせようとする美智恵。

「だったら!」


横島は文珠を二つ出現させ、『解』『毒』と念を込める。
しかし、それを発動させるのを美智恵は遮った。

「な!?何すんですか隊長!!?」

少し声を荒げ、睨むような眼差しを美智恵にむける横島。

「これ以上文珠を使えば今後の戦闘が不利になります。
ケルベロスは私達にとっては強敵よ、それなのにこれ以上霊力を消費しては勝ち目が薄くなるわ」

単体で使うならともかく、2個以上のキーワードを制御する並行文珠はかなりの霊力を消費する。
2個くらいなら今の横島にとっては楽勝の能力だが、万全、必勝を期すならここで使わないほうが確かにいい。
しかし・・・

「だから、何だって言うんだ!!」

横島はそんな提案に、そしてそんなことを言う美智恵に怒りを覚えた。
正論だ・・・美智恵の言ってることはおよそ正しいだろう。
けど、親子の情、人としてほっとけない場面・・・それがあるじゃないか!
そう思いカーと熱くなる横島。・・・・だが・・・・気付いた。

美智恵のひのめを支える手が震えていることに。

「隊長・・・・」


一言呟き横島はその表情を緩める。


バカか、俺は・・・・

どこの世界に子を思わない母親がいるだろう・・・
どこの世界に子を見捨てる母親がいるだろう・・・

本当ならこの場で治療してすぐにでも病院に連れて行きたい。
それをしないのは横島の霊力の消費を抑え、
今後のためにここでケルベロスを倒すのがオカルトGメン隊長としての第一目標だからだ。

『公』のために『私』を殺す。

今、美智恵は一番辛い感情に耐えながら指示を出している。
それに気付いた横島は何も言えなくなるのだった・・・・


「大丈夫よ・・・あなたの治療のおかげで出血もほとんど止まってるし死ぬことはないわ・・・。
それに今日連れてきたメンバーは戦闘員は少ないけど、情報、医療に優れてるのよ。
今、連絡いれたからあと10分もすれば応援にくるわ」

「はい・・・」

横島は苦渋に満ちた表情で立ち上がると、母の腕の中で必死に痛みをこらえるひのめの頭をなでた。

「すぐにやっつけてくるからな」

少し無理な笑顔でくしゃくしゃと撫でる。
それに気付いたひのめも泣き顔のまま「うん」と小さく頷くのだった。

「隊長、一応文珠渡しときます」

「ええ」

横島は文珠を二つ手渡すと憤怒の表情でケルベロスへ向かって猛烈な勢いで走り出した。



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