ザ・グレート・展開予測ショー

橋姫伝説 その13


投稿者名:弥三郎
投稿日時:(03/ 4/ 7)

時をさかのぼって、宇治駐屯地突入直前の震電部隊。

『んじゃよろしく。』
「わかったわ。」

通信機を切ったルシオラに隊員たちが聞いてくる。

「どうしたんですか?」
「さっきの光線見たでしょ?発射場所がわかったから今から美智恵さんたちが襲撃かけるそうよ。」
「航空支援ですね、了解。場所は?」
「宇治駐屯地よ。高度500mで爆撃よ。行くわよ!!」

宇治駐屯地上空。

「タリホー(敵視認)!!魔方陣も見えます!!」
「爆弾投下!!」

隊員が放った爆弾が落下して炸裂していく。
見事に魔方陣は引き裂かれていく。
隊員たちは歓声を上げる。
しかし、中心にいた男だけは無事なようである。

「みんな、ちょっといい?」
「隊長、何ですか?」
「あの男、只者じゃないわ。魔力を感じるわ。みんなは周りの敵を掃討!私はあの男をやるわ。」
「し、しかし隊長!!危険です!!」
「心配しないの。大丈夫よ。私ならある程度の攻撃には耐えられるし。ほらほら、さっさと行った!!」
「りょ、了解。」

しかし、ルシオラはわかっていた。下手すればアシュタロス戦の2の舞。うまくいって相打ちであることを。
それを承知で突撃をかけるのである。
男の姿を確認すると急降下を開始する。あっという間に地面が近づいてくる。
男に向かって霊砲波を連発する。相手も撃ち返して来る。

(ここが限界ねっ!!)

地面に激突する寸前に水平に転じた。男の真横を通り過ぎてゆく。

(っ!!この男!霊力のバランス崩壊寸前じゃない!!)

そのとき後ろから霊砲波が連射されてくる。髪の毛を掠めていくが当たらない。

(上空に戻ってもう一度!!)

そのとき、あたりに閃光が走る。

(弾薬庫?!ヤバイ!!)

しかし、間に合わない。左側に強化シールドを展開させる。
あたりにものすごい爆音と爆風が吹き荒れる。
ルシオラに衝撃波と爆炎が襲う。

(耐え切れそうね。……えっ!!)

爆炎の中から誘爆した砲弾の破片が飛んでくる。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

破片と衝突したルシオラは近くの森に吹き飛ばされていく。
目の前が真っ暗になる……


それを上空から見ていた辻本。

「ルシオラさん!!」

必死に通信機で呼びかけるが応答が無い。あせりとともに涙があふれてくる。
そのとき美智恵から通信が入る。

「辻本さん?」
「司令官、ルシオラさんがぁ!!」
「辻本さん、落ち着いて。ルシオラさんは大丈夫よ、絶対生きて帰ってくるわ。」
「でも、でもっ!!」
「辻本さん!!あなたに命令です。震電部隊はルシオラさんが帰ってくるまであなたが指揮しなさい。」
「えっ……」
「復唱は?」
「え、あ、辻本香織隊員、震電部隊隊長を引き継ぎます!!」
「いいわ。あの程度の爆発ならルシオラさんは大丈夫だわ。ひょっこり帰ってくるわよ。安心しなさい。」
「はい!!」
「いい返事ね。思う存分暴れて頂戴。」

隊長職を引き継いだ辻本は隊員たちに声をかける。

「ルシオラさんはいないけど、司令官の助けになる事をがんばってするわよ。みんな、覚悟はいいかしら?」

隊員たちは拳を上げて答えたり、叫び声をあげている。
辻本は嫌な思いを押しやりつつ任務に戻っていった。


「くっ、あいたたたた。」

駐屯地近くの森でうめき声を上げるものが一人。
ルシオラである。
爆風と破片で吹き飛ばされたのだが、森の枝葉がクッション役になってくれたようである。
が、しかし。

(左腕が変な方向に曲がってるわ。骨折したわね。他は……足は大丈夫だわね。)

右手をついて立ち上がろうとした。
が、ぐらついて立ち上がれない。

(軽い脳震盪起こしたわね。ああ、視界が歪むわ……)

視界が乱れる。左腕をかばいつつ、ルシオラは横になった。
森の中はさっきの戦闘が嘘の様に静まり返っている。
しかし、『嵐の前の静けさ』と言う言葉があるようになにやらあるようだ。
ルシオラはそのことに気がついている。しかし、動けない。
腰にあるはずの通信機を探すが見当たらない。

少し落ち着いてきたところでルシオラは立ち上がった。あたりを探すとなにやら小屋がある。
ゆっくりとその小屋の方向に向かう。
戸をあけて中に入るが、埃臭く、何十年も使っていないようである。
その上、森の中にあるためものすごく暗い。

「まったくもう、やになっちゃう。埃臭い上に真っ暗。まずは明かりを探しましょ。」

『明かりを探しても、無駄だよ。』

若い男の声がした。
ルシオラは臨戦態勢をとる。

「だ、だれ?!」
『おっと、身構えないでくれ。余は攻撃など出来ない状態にあるし、するつもりも無い。』

次第に暗闇になれたルシオラの目に映ったのは昔の装束を身にまとったいささかやつれている男である。
しかも、呪縛ロープで拘束されて周りには封印呪文が書かれた結界がある。

「あなたは?」
『天智天皇が息子、大友皇子である。』
「うーん、よくわからないけど、どうしてあなたはここにいるの?」
『今、麓で戦闘があるだろう?そなたが戦った相手に無理やり召喚されてな。』

詳しくはこうらしい。
壬申の乱で大海人皇子に敗北した大友皇子は東山の山奥に隠れた。
落ち武者狩りから逃れた彼だったが流行病の犠牲となって若くして死ぬ。
が、天皇家は神である天照大神の子孫でもある。
半ば神である彼らの死後、魂魄は神となって日本の国土を守る。
しかし、負の思いが大きかった大友皇子の魂魄は神である魂魄と悪の化身である『鬼』となった魂魄と
分かれることになる。
ここにいる彼は『神』のほうであるが、鬼たるほうは江戸時代末期、朝廷から派遣された陰陽師
によって浄化させられ魂魄は神と1体化する。
以後、伏見の地を守ってきた彼であったが、鬼であった彼はとんでもない能力を身に着けていた。
それは『破鳳』である。
時の権力者且つ、霊能力が強い者に憑依して日の本の国を混乱させてきた。
例えば、平清盛が天皇家より強い権力を握ったのも、鎌倉幕府の最後の執権である北条高時にも
憑依して混乱を拍車かけたのも、織田信長が、第六魔王などと呼ばれるようになったのもすべて『鬼』の仕業である。
当時の文献によれば憑依を受けたのは数えられるだけで30人近くいる。
そのすべては中央政府の役人だったり、トップである。
しかもその能力は橋姫の呪いと大きく関わっているとも言われる。
その鬼が滅せられた今、その能力を使う者はいなくなったのであるがただ問題があった。
大友皇子は完全にその能力を捨て切れなかったのである。
この能力は霊基の根幹に絡んでいるため時間をかけて『デリート』していたのである。
しかし、デリートしきる前に反乱軍の男に召喚されてしまい、その能力を復活させられるのである。
さらに男は部下にマインドコントロールによって大友皇子を支配しようとしたのだが、神である彼を
マインドコントロールできるのは神だけでしかなく人間がやるのは無理であったのだ。
そこで男はその能力を発動させてその力が男に向かうように魔方陣を書き込み、その中心に王子を封印したのである。

「なるほど、そういうわけだったのね。この結界さえ消滅させればあなたは自由の身なのね。」
『そうだ。』
「それじゃぁ、いっちょやりますか。」
『無駄だ。その結界は2重防御による防御結界が張られているし、しかもブービートラップがかけられている。
 下手したらそなた木っ端微塵だぞ。』
「うげ。じゃぁ、どうしたらいいの?」
『余の言うとおりに結界を解除してくれ。このぐらいの結界は何とでもないがな。』
「左腕使えないんですけど。」
『大丈夫だ。そなたは魔族出身だろ?すぐに治るし、片手でも解除できるものだ。』

反乱軍の男の裏を掻く作戦が今始まろうとしている。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa