ひのめ奮闘記(その12)
投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 4/ 6)
ザク・・・ザク・・・ザク
ガザ・・ガサ・・・ガサ・・・
ザク・・・ザク・・・ザク
ガザ・・ガサ・・・ガサ・・・
「うああ!もうやってられ─────────んっ!!!」
N山の山中に令子の叫びがこだまする。
先ほどから獣道道を歩き、草むらをかき分けては『冥界へ繋がる揺らぎを封印』。
そんな単調作業に飽きてきたのだろう、そして何より歩き疲れるから。
「ま、まあまあ落ち着けって」
その傍らで『あうあう』と顔に縦線を引きながら冷や汗を流す横島。
不機嫌MAXの妻・・・こんなときは大抵とばっちりがくることが分かってるからだ。
(ああ〜、こういったときの令子は昔から手ぇつけられないんだよな〜・・・。
隊長恨むよ、ホント!はぁ〜これなら令子とは別行動で本部にいた女性隊員と・・・・・」
「いつも殴られる原因が誰にあると思ってのーーっ!!」
「ああー!また声に出てたーーーーー!?」
自分の顎に走る衝撃を感じながら地面にドサっと倒れこむ横島。
八つ当たり気味の一撃で少しは気が晴れたのか、はぁ〜と深呼吸して令子は上着のポケットから一枚の紙切れを取り出した。
そこには『N山見取り図』の字と共に十数か所に×印が付いている。
「ふぅ〜、今まで封印したか箇所が4つ・・・今から封印するのを入れて5つ・・・・これで私達のノルマは終わりね」
ノルマ・・・。
令子と横島に科せられた封印箇所は全部で5箇所。
封印の仕方はいたって簡単だ。封印用の護符を正しい用途の通り使えば小さな歪みは10分ほどで完全に閉じる。
少し大きめの空間の歪みも護符と封印結界を使えば2、3日もあれば完全に消えるだろう。
問題はそれ以上の歪みだが、今まで封印してきたのは『小』が3つ、『中』が1つ、
どれも令子や横島から見れば簡単な作業ものだった。
「あいちち、で?あと1箇所ってどこのへんだ?」
横島はよいしょと立ち上がると顎をさすりながら令子に尋ねる。
「え〜と、確かこの先だと思うけど」
ザクザクと神通棍で草をかき分けながら進んでいく。
すると・・・・・
しだいに肌をピリピリと刺す感じまるで静電気のようなものが令子達を覆っていった。
すなわち妖気・・・。
「準備はいい?」
「OK」
短い相内だが二人の表情に緊張感が帯びていく。
目の前は背丈ほどもある草などで垣根が出来、向こう側がどうなっているか確認できない
まだ午後四時前だというのに鬱蒼とした木々が太陽の光を遮り、令子達に肌寒さを感じさせる。
だが、そんな中で二人は緊張感と共に不思議な高揚感を感じていた。
「3、2、1・・・」
令子がカウントしていく、そして・・・
「GO!」
令子の掛け声と共に背丈ほどある草壁を乗り越えた。
ガサァァ!!
草木をかきわけ飛び出した二人!そこにいたのは!?
「あ〜!れいこおねーちゃんとただおにいちゃんだ〜」
「「はぁっ!?」」
自分達の目の前にいる少女・・・・ひのめの登場に目を丸くする令子と横島。
「な、なんでひのめちゃんがここに!?おい、令子」
あまりにも裏をかかれた出来事に現状を確認しようと妻に話しかける。
ついでに言うと先ほどまで感じていた妖気が完全に消えていた。
「私に聞かれたって」
「う〜んとね、ママがテントにいなさいっていったけどつまんないからコウエンであそんでたの」
「公園?」
そういって横島が周囲を確認する。
そこにはブランコ、砂場、滑り台、シーソー・・・およそ公園と呼ばれる所には必須なモノが置かれている。
広さもなかなかのものだ。そして、有料望遠鏡。
「あ、最後の封印箇所『展望公園』って書いてるわ」
その一言にズッコケる横島。
あれだけ苦労して歩いた獣道はなんだったのか・・・・
妻からの八つ当たりの一撃はなんだったのか・・・
それが脳裏に浮かび涙する横島だった。
「はぁ〜、ひのめちゃん、ママは?」
気を取り直しひのめに声を掛ける。
警戒令が発動したせいでハイキング客などもいないので公園にはひのめ一人。
客がいないのはともかく保護者である美智恵がいないのは腑に落ちなかった。
「んとね、ないしょできちゃった」
笑顔で答えるひのめ。
だが・・・・
「こら!ちゃんとママの言うことは聞かなきゃダメだろ!?」
珍しく横島が声を張り上げた。
現在は霊的作業の最中、除霊とは違い悪霊や妖怪がいるわけではないが、
それでも幼子がこんなところにいては危険でしかない。
ひのめが心配だから・・・・・だからこそ横島は怒鳴ったのだ。
「・・・・うう・・・グスっ・・・・ごめんなさ・・・い・・・うえぇ・・・」
しかし、ひのめのほうは普段やさしく怒ったことのない横島に驚き涙をポロポロと流した。
そこまでキツく怒ったつもりのない横島はあたふたをみっともなく慌て出す。
「あ!ひ、ひのめちゃん泣かないで!!!!!!?
た、ただね、ちゃ〜んと言うこと聞かなきゃ危ないっていうか、
親の言うことをちゃんと聞く子になってほしいっていうか、
ああ、でも令子は隊長の言うこと聞いてこんな人格になっちゃったわけで
俺はどうすればぁぁぁ!!?」
「余計なお世話だ──っ!!!」
ズガンっ!!
令子は混乱してる横島の後頭部に蹴り(←全力)を入れる。
さらに追撃しようとするが倒れた横島の後頭部を『いたいのいたいのとんでけー』と撫でるひのめにめんじて許してやる令子だった。
「ったくぅ、・・・・・・・・・・・・・・・それで空間の歪みは・・・・・」
令子はキョロキョロと周囲を見渡す。
今までならすぐに見つかった『空間の揺らぎ』が見当たらない。
さっきまで感じていた妖気もやはり全く感じない。
「ねぇ・・・」
その変化に何かがひっかかり助言を求めようと横島に話しかける。
だが、そこにはひのめを肩車するしながら遊ぶ横島の姿。
『仕事しろ』と怒鳴ってやりたいが横島の肩の上でキャッキャッと喜ぶひのめを見るとその言葉を飲み込んだ。
(・・・・はぁ〜、もう仕方ないわねぇ)
心の中で一つだけ呟くと再び一人で調査をはじめる令子。
オカルトGメンの事前調査であったはずの歪み・・・・・、
自然に消えたとしてもかすかな魔気もしくは神気があるはずなのにそれがない。
(おかしい・・・・天界、魔界に少しだけ通じてた空間が消えた・・・
それに魔界の空気(魔気)じゃなくてあれは妖気・・・・ってことは魔族か魔物がこちら側に出ようとしたってこと?)
仮定を一つ立て、そこに自分の知識を当てはめていく。
(確か・・・・向こう側(天界、魔界)からこちら側に来るには人間界の霊的物質に同調して空間を広げるらしいけど・・・)
神が神社やそこのご神木の周囲に現れやすいのはそのため。
(ここらへんにそんなものはないしなぁ・・・・・・・・・・・・・・・でもさっき確かに妖気を感じた・・・・。
・・・・・・まさか!?)
バっと振り返る。
相変わらずひのめとじゃれる横島。
そして気付いた・・・・・・・・・・ひのめに微かな魔気がまとわりついてることに。
「あなた!ひのめに結界を!!!」
「へっ?」
ひのめを肩車したままの横島が返事をした瞬間。
グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。
横島・・・・いや、ひのめの背後の空間が歪み直径3mほどの円形状の異空間が開く。
(聞いたことがあるわ!むこうから来るときは少しの間、周囲の神気、魔気が消えたりするって!)
「間に合え!このぉ!!」
横島が背後の『冥界への扉』を振り返るより早く令子がそこに目掛けて護符を投げつけた。
いや、封印護符じゃない、退魔用の破魔札を。
分かっているのだ、こうなった以上むこう側から何かが出てくることを、
そしてそれが邪悪な妖気をまとっていることを。
バシュウゥゥゥ!!!
破魔札が『冥界への扉』に命中し弾ける。
だが・・・
『ソレ』は破魔札が命中するよりも早く抜け出し、令子と横島の間に降り立った。
「おい・・・・こいつって・・・・」
自分の目の前に立つ『ソレ』・・・
明らかに敵意をこちらに向け、邪悪な魔力を放つ。
その姿を最近勉強している欧州神話からデータを引き出す横島。
「そうよ・・・・。
3つの首に蛇の尾をもつ冥界の番犬・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケルベロス」
ジャキン!!
言い終わると同時に令子の神通棍が霊力と共に伸びる。
そしてキっとケルベロスを睨んだ。
冥府の怪物はその黒鹿毛を威嚇するように立て、
獲物の威勢のよさに三重奏でうなり声を上げるのだった。
その13に続く
──────────────────────────────────────────────────────
あとがき
さ、今回出てきたケルベロスなんですが、『GS美神』の世界だと何匹もいそうな感じですね(汗)
ケルベロス族とか、ケルベロス属みたいな感じで・・・・
ホントは凶悪な人型魔族にしようと思ったんですが、性格設定作るのめんどうだから却下です(笑)
ケルベロスはメジャーな魔物なんで姿形はそのままです。
何でケルベロスなの?と言われると答えに困ります(汗)
思いつきは『地獄番犬→門を守る→冥界と人間界のつながる空間の一番近くにいそう』
っていう、簡単な思いつきで(^^;
追伸 仕事のときは美智恵のことを『隊長』と呼ぶ横島。っていう設定です
今までの
コメント:
- 『いたいのいたのとんでけー』←違う意味で飛んでいってしまいそうですが(謎挨拶)。シバキが最早日常茶飯事と化していた横島クンも、一応は痛みを感じていたのですね。ひのめに対しても横島クンが優しいお兄さん役である点に妙に納得しております。霊的作業の間にひょこひょこと現場に入ってきてしまったひのめですが、どうやら彼女がケルベロスを登場させてしまったことと関係があるみたいですね(汗)。まずはケルベロスをどうやって退けるかが気になります。次回も楽しみにしております♪ (kitchensink)
- ちょっと気になったことが。
令子の性格の捻くれ具合だけど、美智恵はノータッチのような。
ほら、バイパー編の子供令子って、意地っ張りだけど基本的に素直だったでしょ?
でもって、中学の辺りだったかな?美智恵が死亡を偽装したせいでグレたというか。
つまり何が言いたいのかと言うと、あれは血筋だ(笑) (NAVA)
- 冥界の扉から現れたケルベロス―――彼或いは彼女が、今回のひのめの力の封印にどういう風に関わっていくのか気になります・・・って、まぁ、人型じゃないからこんな風に言うのも何か違和感がありますが(汗)
何気に、美神さんの『あなた』にくらっと来た私がいるんですが。
横島クンのタメ口も良いっすけど・・・あなたは強力ですな。何故か今回、そこんとこに目がいきました。あなた・・・変な妄想が・・・(をい) (veld)
- kitchensinkさんへ
>違う意味で飛んでいってしまいそうですが
はい、飛んでいかないで下さい(笑)
ケルベロスのやっつけ方はひのめの霊力封印と関係があるっていう設定なんで、
それを上手く書けるよう頑張ります♪
NAVAさんへ
>令子の性格の捻くれ具合だけど、美智恵はノータッチのような
、性格形成がなされる幼年期に
「強くてタカビーな令子に(以下略)」みたいなことを美智恵言われ続けたせいじゃないかとにらんでるんですが(笑)
だってさだってさ・・・・
血筋のせいだったらひのめを始め、ほたるも令花も可哀想だ!
何より横島とか忠志の男性陣が!!!(TT)
(ユタ)
- veldさんへ
令子に横島を二人称でなんて呼ばせるか凄い悩みました(汗)
まずは「忠夫クン」っていうのはないだろう・・・
一番しっくりくるのは「あんた」で日常会話でもこう呼ばせてますけど・・・
「あんた」ばっかりじゃ・・・
『どこぞの妻が強い中年夫婦』
みたいで(笑)
一応設定では結婚2,3年目でまだ新婚っていう時期ですからw (ユタ)
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