ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−40a


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 4/ 4)



神界の地上駐留軍が壊滅してから二日後。
神界及びに人界に対し、魔界から大々的に一つの宣言が成される。

『宣戦布告』

人界におけるGS協会の非道な悪事。
それを知って尚、人界を擁護する神界への非難。
それは驚くほど悪意に満ちた告発であり、悲しみに満ちた告発であった。
既に魔界の霊的統治下状態と言っても差し支えの無い人界に、GS協会に、その告発を防ぐ手立てはなかった。

国連の通信衛星で。
各国間のホットラインの映像で。
茶の間のTVで。
受験勉強しながら流すラジオで。

地上のありとあらゆる電波をジャックして、その宣言は成された。
告発者、横島忠夫は最後にこう締めくくる。

『人間の成す非道許すまじ。かつて人間であった身なればこそ許すまじ。されば魔界の武威を持ってこれを正す也』と。

こうして人界は絶望的な戦いに単独で挑むこととなる。






美神美智恵はアシュタロス戦役の英雄である。
同時にアシュタロス戦役の英雄と呼ばれる存在のリーダーであった。
そして彼女はかつての仲間達に召集をかける。

美神令子。
西条輝彦。
小笠原エミ。
ドクターカオスとマリア。
六道冥子。
唐巣和弘。

集まったのは、たったそれだけであった。

雪之丞はいくら弓に諭されようとも動こうとしなかった。
同じくタイガーは良い仲の魔理に殴られても、師である小笠原エミにぶっ飛ばされようとも動かなかった。
ピートは結局、結論を出せなかった。
氷室キヌは、姉と父に動くことを許されなかった。
魔鈴めぐみはGS協会の一件で完全に雲隠れして連絡が付かない。恐らくは魔界と人界の狭間に逃げ込んだのだろう。
マリアは現地に移動しようとした途端に回路をシャットダウン。カオスの再起動にも拒否。

新規参入してくれそうな、犬塚シロは帰ってこなかった。それどころか人狼の里自体、外部との連絡を絶った。

あの時、人間をバックアップしてくれた神魔は居ない。
ヒャクメは神界へ戻り、小竜姫・ワルキューレ・ジークの3人は攻め手である魔界側に所属。
最後の最後で協力関係を築けたベスパ・パピリオも同様である。
そして当時の関係者全てに、『彼がいなければ勝利することは出来なかった』。そう言わしめた横島忠夫は居ない。
それどころか、攻め手の大将として君臨している。

そして昨日、魔界の侵攻軍が出てくるだろうゲートに異変が起きた。
ゲート周辺が魔界化したのである。
美智恵は緊急にGSを動員する。
余談ではあるが、一連の行動にGS協会の関与は許していない。
GS協会の名はすでに悪名の代名詞となっていた。その残り少ない力――――組織力のみを利用させてもらっている。
それはさておき、美智恵は世界中のGSを総動員してゲート周辺の魔界化の進行を食い止めることを決めた。

――――これ以上、魔界軍に有利な状況を作る必要はない。

ゲート周辺を囲む大規模な結界を作ることで、進行は止められた。

――――いよいよ来る!!

美智恵の予想は寸分違わずに的中する。

それはベスパを中心として編成された妖蜂部隊であった。

美智恵とて、無策でここに臨んだわけではない。
かつて秘密研究所のあったこの地には、密かに原子力発電の施設が隠されていた。
一度はベスパを敗北寸前にまで追い込んだ、大規模な電力の霊力変換。
それが今回の彼女の策のベースにあった。
膨大な電力を使った、巨大な魔方陣。それをゲートの周りに設置することで周辺の魔界化を防ぎ、同時に浄化する。
かつて古代中国の兵法家孫子は語った。
『天の時、地の利、人の和。それを得る者こそ勝利を得る』と。
天の時?そんなものはありはしない。
人の和?GS協会の悪行のせいで、人心を失っている。
ならば、地の利――――戦いに有利なフィールドだけでも手に入れよう。
それが美智恵の狙いであった。





『こんな形で再び人界に来ることになるとはね』

ベスパは自嘲する。
彼女の生まれた地――――人界。
かつて、彼女は創造主の意思に従って人界を混乱せしめた。
そして今、主を変えて再び人界を混乱させようとしている。
あの頃の自分と今の自分。それを省みると自嘲する気分がこみ上げて来る。
変わらない。何も変わっていない。
傷心を癒すように魔界軍へ入隊するも、そこで傷が癒えることなど無かった。
そして今、新たな傷を負って彼女は人界に降り立つ。

『アタシは道化だ………他人の思惑で踊る。流されるままに主も変える』

人間と戦闘状態に入った心無き部下達が疎ましい反面、羨ましく思える。
彼女達は悩むということが無いから。
闘えと言われれば戦い、死ねと言われれば死ぬ。
同じ人型でありながら、悩み、悶える自分とは違う。

彼女は自分をこんな風に作った創造主を少しだけ恨めしく思っていた。

ベスパの苦悩を尻目に戦況は動く。
美智恵の策が功を奏し、妖蜂部隊は思ったほどに戦場で力を振るえていない。
戦場では千を越えるGSと数百の魔族が入り乱れて戦っている。
戦況は一進一退。本来の力を発揮出来れば、すぐにでも決着が付くだろう戦力差にも関わらずだ。
だが問題無い。
想像以上に強力な結界ではあったが、彼女の役目は勝利ではない。

“奴等”をおびき寄せるための餌。

そのためには、何百、何千もの犠牲を払って良い。
横島にはそう言われている。

『こんなクソったれな任務。さっさと終れば良い!!』

ベスパは内心で愚痴りながら、戦場に心を戻す。
女王蜂である自分を狩りに、彼女達がやって来るのが見える。

「美神母娘か………思えばいつも中心には、ヨコシマとあいつ等がいたな。
 少し相手をしてやるか………」

ベスパはほんの少しだけ微笑んで、美神達を迎え撃つことに決めた。





40bに続きます。

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