ザ・グレート・展開予測ショー

***鉄樹木***


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(03/ 4/ 4)

アノ人の居ない 空の色
           鉄骨の大樹に登りましょう。
               **花**

あいつが、この世から消えた。最後に希望を残して・・・。その希望を叶えるべく、俺達の世界は残った。救ったからって、あいつが蘇らない。忘れる事なんか到底出来ない。
――俺に本気で惚れたヤツ――
あいつを失ったこの場所で、涙もなく俺は、独りたたずむ。娘に生まれ変わる事を祈りながら・・・。悪の元で生まれたあいつを、神々は聞き入れてくれるのだろうか。
思えば思うほど・・・その思いが強いほどに、身体からため息が溢れる。あいつを考えれば考えるほど、氷のように冷たい息が、次から次へと溢れ出す。
あいつを失ったその場所で、しゃがんでみる。ズボンの裾が汚れる事なんて気にならない。ジャケットの袖で息を止める。止めたと同時に、喉の奥から、音が生まれた。
「逢いてぇ・・・・。逢いたい・・・・・。」
その声は、後に木霊になり、清涼が支配した青空へと放たれた。
「・・・・この場をもう一度再現すれば、あいつにあえるか?あいつの願いを聞いてやれるのか?」
今現在唯一残る武器、手の平にある。丸い\、紫色だ。その\に文殊喉を当てる。
「宇宙の卵と・・・・。文殊・・・・。」
目を閉じ、再度再現するであろう地獄絵図を思い浮かび、小指に力を込めた・・・・。その時!
「横島!!!!何をしているのよ!?」
右手を、強く引かれた。もう少しの所で、歴史を再現することが出来たのに、それを邪魔されてしまった。
「美智恵さん」
「横島クン?、ここで何をしているの?」
美智恵女史の目は、怖かった。
「・・・・せろよ・・・・。あいつのいた世界を蘇らせろよ!!!」
パシッ!!勢いのいい音が、静寂に響いた。そして、後からジーンと頬に痛みが走った。
「な、何するんすか!」
「歴史を戻してどうするのよ!それで彼女が喜ぶと思うのか!?・・・横島クン。あなたは娘にとって重要な人よ。その貴方ががこの世を地獄に戻すなんて、酷いじゃないのよ」
美智恵女史は、零厘な目で、俺を見つめた。
「ルシオラに逢いたい・・・・。逢いたい・・・。どうすれば逢えるの?どうすれば・・・。」
雫が次から次へとあふれる。ルシオラに逢いたくて・・・、そして、美智恵女史の報告が嬉しくて。
「歴史は変えちゃ駄目。彼女の分まで精一杯生き抜いて、胸を張れるような人生を送るのよ。そうすればきっと、貴方の娘として生まれるわ」
「神々は本当にあいつを?」
「そうよ。娘の令子、前世も魔族だったらしいじゃない」
声にならない想いが溢れた。希望の光が見えた気がした。ため息が・・・。さっきとは違う感情から出される熱い息が、空気を通り、鉄骨を濡らした
「変えない・・か・・。ルシオラ。俺は、生き抜く。そして、きっとまた、おまえと会おうな。今度生まれ変わったときは、血のつながりになるけどな」
「そうよ。私の孫候補ですもの。」
美智恵女史が、珍しく、私と美神さんとの事を、はっきりと許してくれた。私は、うなずいて、返事をした。
「横島クン死体が眠る樹木はね。とっても綺麗な華をさかすそうよ。」
鉄骨の塔を眺めていると美智恵女史が言った。
「大樹っすか?でもこれは鉄だし華なんか・・・。」
私が困ったような顔をすると、美智恵女史は微笑んだ。
「横島クン、貴方の持ってる卵、これが最高の花だ。ため息ばかりのパパじゃ娘に好かれないわよ。だから卵の能力を華にするの」
「卵を?」
物語の根底といえるアイテムを華にする・・・。あいつははそれで喜んでくれるのか?
その瞬間、あいつの声が聞こえた気がした。「はやく産んでね」って、あいつの声が・・・。その声で、私は最高の笑顔を美智恵女史に向ける事ができた。
「また、会おうね。」

fin――


久々のオマージュでした。

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