ザ・グレート・展開予測ショー

＊＊花＊＊

投稿者名：姫桜
投稿日時：(03/ 4/ 4)

　　　　　　　　　　　　アノ人の居ない　星の下
　　　　　　　　　　　キレイな華を咲かせましょう。

　　　　　　　　　　　　　　　＊＊花＊＊

アノ人が、この世から消えた。最後の願いを残して・・・。その願いを叶えるべく、私は人間になった。人間になったって、この胸の傷跡は消える事はない。忘れる事なんか出来ない。
――私に、愛する事を教えてくれたヒト――
あのヒトを失ったこの場所で、人間になった私は、独りたたずむ。生まれ変わる事を祈りながら・・・。悪の元で生まれた私の願いを、神は聞き入れてくれるのだろうか。
願えば願うほど・・・その願いが強いほどに、瞳から熱いものが溢れる。あのヒトを想えば想うほど、燃えるように熱いその雫が、次から次へと溢れ出す。
あのヒトを失ったその場所で、うずくまる。着物の裾が汚れる事なんて気にならない。着物の袖で雫を拭う。拭うと同時に、喉の奥から、音が生まれた。
「逢いたい・・・・。逢いたい・・・・・。」
その音は、後に声になり、静寂が支配する星空へと放たれた。
「・・・・この場で命を絶てば、あのヒトにもう一度会えるかしら・・・。あのヒトの３つ目の願い、叶えることが出来るかしら・・・。」
唯一人間の姿にならなかった、右手の小指。爪は鋭く尖り、紫色だ。その爪を、喉に当てる。
「この場所で・・・・。高島殿・・・・。」
目を閉じ、この世で最後となるだろう熱い雫を一粒流し、小指に力を込めた・・・・。その時！
「葛の葉！！！！何をしているんだ！？」
右手を、強く引かれた。もう少しの所で、高島殿の所へ逝けるはずだったのに、それを邪魔されてしまった。
「西郷殿・・・・。」
「葛の葉、ここで何をしていた？」
西郷殿の目は、怖かった。
「・・・・かせてよ・・・・。高島殿の所へ逝かせてよっ！！！」
パシッ！！勢いのいい音が、静寂に響いた。そして、後からジーンと頬に痛みが走った。
「な、何するのよっ！」
「死んでどうするんだ！それで高島が喜ぶと思うのか！？・・・葛の葉。お前は私の妹だ。お前がこの世から消えたら、悲しいではないか・・・・。」
西郷殿は、真剣な目で、私を見つめた。
「高島殿に逢いたい・・・・。逢いたい・・・。どうすれば逢えるの？どうすれば・・・。」
雫が次から次へとあふれる。高島殿に逢いたくて・・・、そして、西郷殿の優しさが嬉しくて・・・・。
「生きるのだ。高島の分まで精一杯生き抜いて、胸を張れるような人生を送るんだ。そうすればきっと、高島の側に生まれ変われるさ。」
「神は、悪であった私を許す？」
「以前は魔族でも、今は人だ。」
声にならない想いが溢れた。希望の光が見えた気がした。熱い雫・・・。さっきとは違う感情から生まれる熱い雫が、頬を伝い、地面を濡らした。
「生きる・・・・。高島殿。私、生き抜く。そして、きっとまた、あなたの元に・・・・。今度生まれ変わったときは、貴方に願いを叶えてもらうからね。」
「来世では、幸せになれ。」
西郷殿が、珍しく、私と高島殿の事を、はっきりと応援してくれた。私は、うなずいて、返事をした。
「葛の葉。死者の墓には、供え物をするものなのだ。花や、酒や、高島が喜びそうなものをな。」
高島殿の墓を見つめていると、西郷殿が言った。
「花や、酒？？でも、そんなものここには・・・」
私が困ったような顔をすると、西郷殿は微笑んだ。
「葛の葉、お前の笑顔が、最高の花だ。泣き顔では高島は喜ばんぞ。最高の花を咲かせてやれ。」
「笑顔が、花？」
私の笑顔が花・・・。高島殿はそれで喜んでくれるの？
その瞬間、高島殿の声が聞こえた気がした。「また、会おうな」って、高島殿の声が・・・。その声で、私は最高の笑顔を高島殿に向ける事ができた。
「また、会おうね。」

ｆｉｎ――


＊＊お久しぶりの姫桜です♪覚えてらっしゃいますか・・・？？（ドキドキ）今回は葛の葉のお話を書きました。現世の美神さんでは考えられないようなセリフがバンバン出てきますが、ご了承ください（笑）葛の葉は、すごく純粋な女の子だったんじゃないかなぁなんて思いながら書きました。楽しんでもらえたら幸いです♪＊＊
今までの コメント：
[ 戻る ]
管理運営：GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa