ザ・グレート・展開予測ショー

交差点


投稿者名:にゃんまげ
投稿日時:(03/ 4/ 3)

――2037年6月21日
しとしとと雨が降っている中、とある古びた教会にシロとタマモの姿があった。
月日がたっているおかげで彼女等の外見は昔とは違い、美しい成人した女性となっていた。
シロは少女の頃とは違い、後姿の時必ず見えていた美しく長い銀髪の後ろ髪は既に無く白くしなやかなうなじが見える。身には黒い着物を纏っている。
一方、タマモの髪型は以前と変わっておらず、九つに房分けされたされた金髪のポニーテールが肩甲骨のやや下の辺りまで垂れている。服装は黒のドレス。
今日はある人物の葬儀であった。故に二人は黒の服装、つまり礼服を着ているのである。そして二人に見送られる人物の名は――

美神ひのめ……享年74歳である。

ピートの礼拝が終わり、次に彼女の亡骸が墓地に埋葬される。十字架の墓標の前には棺を納めるための穴が掘られていた。棺が穴に入れられ、葬儀に来た人々が順々に土をかけていく。
シロの番になり、スコップを持ち、穴の近くまで歩み寄る。土をかけた瞬間、彼女は大声を上げて泣き崩れた。タマモが彼女に歩み寄り、肩を抱き宥めその場を離れた。

葬儀が終わり、二人は白いポルシェに乗り、帰路についていた。
運転席のタマモはチラリと助手席に座っているシロに目を向ける。シロはまだ泣いていた。タマモは彼女のその姿を見るとめんどくさそうに頭を掻いた。
「好い加減泣き止みなさいよ…葬儀が初めてってわけでもないんだから…ったく」
目、鼻、口からも体液を流しているシロに彼女は持っていたハンカチを差し出す。シロはハンカチを受け取ると涙と涎を拭い、さらに鼻をかんだ。
タマモはその音を聞くと表情を引きつらせた。

家に着いたのは7時を回った頃だった。もともとあの教会は遠くは無い。しかし葬儀が終わったのが6時半過ぎだったと言う事で、まあ仕方が無い。
いつもは交代で食事の支度をしていたのだが流石に二人とも今日は何もする気になれず、店屋物をとることにし、それが届くまで二人は飲むことにした。以前は酒になど興味は無かったのだが、ココ最近、と言っても十年前なのだが…ある日を境に飲むようになったのである。今では専用の冷蔵庫がある程である。居間にあるガラス張りのテーブルの上に冷蔵庫に入っている限りの缶ビールとそれぞれ好みのつまみを乗せた。二人はテーブルを挟む形で座ると缶ビールのフタを開ける。
喉を鳴らしながら勢い良くビールを飲むタマモ。一方シロはいまだ機嫌が直っておらず、半ば気分を紛らわすかのように流し込んだ。
「…っかー!やっぱ一日の終わりにはこれよねぇ」
上はノーブラでキャミソール、下は短パンと言う無防備な姿のタマモはご機嫌そうに裂きイカの袋を開け、中の一つを取り出し咥える。
「ったく、まだそんなしてるわけ?」
以前機嫌の直ってないシロに彼女はテーブルに頬杖をつきながら話しかける。そして咥えていた裂きイカを食べ終えると突然立ち上がり台所へと向かった。シロがビーフジャーキーに手を伸ばす。
タマモがマヨネーズを持ってきた。
「やっぱ裂きイカにはこれよねー」
そう言うと新たに袋から取り出した裂きイカにマヨネーズをたっぷりつけて咥える。
「……74歳だったんだから人間にしては立派に生きたんじゃない?」
タマモは缶ビールに口をつける。
「……相変わらず良く簡単に割り切れるわね」
飲んでいた缶が空になったことに気付き、二本目のフタを開ける。シロはもう以前の口調ではなかった。それは月日が経ち、様々な人間と言葉を交わしていくうちに自然とそうなっていったのだ。ある意味、世間に毒されたのである。
「だからっていちいち悲しんでられないわよ。私達は人間じゃないんだから」
タマモも二本目のフタを開ける。
「…大人ね、タマモは」
再びビールに口をつけながらシロ。
「そうよ、大人よ」
タマモは勢い良く飲み干した。
その時事務所にインターホンの音が鳴り響く。
「来たみたいね」
シロはその音を聞き、おもむろに立ち上がる。しかしタマモがそれを制した。
「あんた自分のカッコ見てみなさいよ。私が行く」
「あ…」
シロはブラジャーとパンティだけと言うタマモ以上に無防備な姿だった。
タマモが立ち上がる。成長したCカップの胸が僅かに揺れた。

二人は食事を終えてもなお飲んでいた。
「そう言えば覚えてる?あの子が中学の時に…」
おのずとひのめの話が出てくる。後に他の他界していった面々の話も……。
シロはただタマモの話を聞いているだけだった。

次の日、事務所にシロの姿はなかった。外は昨日より強く雨が降っていた。

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