ザ・グレート・展開予測ショー

悪夢 第二夜


投稿者名:ライス
投稿日時:(03/ 4/ 3)





























…………ガタンッ、ゴツッ。




























 なにか倒れる音。美神は椅子と共に床に倒れていた。

「アイタタタ……、」

 頭をさすり、椅子を元に戻して、起き上がる。ここは自分の部屋……。

「悪い夢を見ていたみたいね……。」

 机の前で残務処理をしている内に寝入ってしまったようだ。窓の外はいつの間にかとっぷりと闇に包まれている……。気付くと彼女は寝汗をかいていた。それも相当に。汗臭いのはいやだったので、シャワーを浴びることにする。




















「フゥ………ッ。」

 シャワーから上がると、バスローブに着替え、台所の冷蔵庫からビールを数本取り出すと、自室へと戻る。そしてベッドに横たわりながら、おもむろにリモコンでテレビのスイッチを入れた。

『大丈夫--!?横島クーン。重くない--?』

『大丈夫ッス!うわはははははははははーっ!!』

 映し出されたのは自分と横島。それもまだ幽霊だったおキヌちゃんのいない頃の自分たち。

「? なにこれ、ドコの番組?」

 飲みかけのビールを片手にもう一方の手でチャンネルをまわす。が、ドコを変えても同じ映像が映る。美神は、疑念を持ったが、何故そうなったか原因が分からないし、害はなさそうなので、何も考えずにテレビを見ることにした。


『日給はフンパツして30円!!』

『美神さぁは〜〜ん!!(ドゲシッ!!)』

『あたし…、あたし…、バカだから上手く言えないけど…』

『勝者、横島!!横島選手、GS資格取得!!』

『非常識だーー!!納得いかーん!!』

『おまえ……、優しすぎるよ。』

『私の――、天地創造が……、あんなガキの手で……………、終わった………!!』


 ……色んな事があった。横島、おキヌちゃんとの出会い、妙神山のでの修行、横島のGS試験そして資格の取得、自分と横島の遠い昔の因縁。他にはアシュタロスやメドーサなどとの魔族との闘い。自分でもまぁ、よくタダで仕事したものだと感心する。
 しかし、全て過去のことだ、今さら振り返っても仕方ない気はするが、テレビから流れてくる映像を見るとひどく懐かしく思えることもあった。アシュタロスを退治したあともひのめの誕生や居候が増えたりと、話題には事欠かないものばかりだ。そういった感慨にふけながら美神は、何本目かビールの缶を開ける……。 

『私の信条は―――現世利益、最優先!!』

 テレビの自分がそのセリフを言い終える頃には、すっかりほろ酔い気分で見ていた。これでテレビは終わると思い、電源スイッチを押す。が、しかし、何度押しても画面は消えない。それどころかテレビは突然、画面が砂嵐になったかと思うと、今度はある画面を映し出した……。


























カラ〜ン、コロ〜ン…………


 画面は何故か唐巣神父の教会。屋根の上の鐘が柄にもなく鳴る。その入口の前には,お馴染みの面々がめかしこんで立っている。もちろん、自分の親も居た。でも、おキヌちゃんは少し寂しそう、シロはくやしそう、西条は平静を装ってるようで青筋が立っている……。


ゾクッ、ゾワワワ〜………!!


 今、美神の背筋に凄〜〜く嫌な悪寒がした。あってはならない事が、んなことになるはずがないと思っていることが、テレビに映し出されようとしている。美神が脳内混濁気味になっているのを横目に教会の扉は開かれた。


ガチャリッ!!


























「結婚おめでと〜〜〜〜〜〜っ、横島クン、美神さん!!」


 扉が開けられると、花吹雪が舞う中、御両人がゆっくりと姿を現す。横島は髪型がオールバックに、着慣れないタキシードを着てぎこちない感じだ。一方の自分は言うと、ウェディングドレスを身にまとい、少し照れくさそうに下をうつむいている。

「ちょっと、何よ、アンタ!?その顔はなによ、その顔はぁ!?」

 自分で画面の中の自分に突っ込む。しかし届くわけがない。鳥肌が立ってきた。有り得ない事実。有り得ない自分。有り得ない仕草。そして、有り得ない……………………
























「この笑顔!!」






「なによ、バカ丸出しじゃない!!こんなの私じゃないわよ!!」

 何もかもが気にくわないし、さっきから嫌な鳥肌が立ちっぱなしだ。何で好きこのんで、丁稚と何か………。美神はもう馬鹿馬鹿しくなって、テレビは付けっぱなしのまま、寝ようとした時であった。テレビの中の観衆がざわめく。何かと思って、見たのがいけなかった。






























 それは自分と横島が全員の前で口づけを交わした瞬間であった。
























 それを見た瞬間、美神は紅潮し、ベッドの下に隠しておいた神通棍取りだし、テレビを破壊しようとした。
 しかし、振りかざす瞬間、そのテレビがまるで生き物かのように動き、神通棍を避けたのである。すると、テレビの画面は歪み、砂嵐になる。しかし、その砂嵐の画面からくっきりとした輪郭が現れ、その「顔」がノイズ混じりに喋りだした……

『……随分と、ザザッ、手痛い仕打ちだな?』

「それはこっちのセリフよ!!あんなモン、今の私にとっちゃ、精神的苦痛でしかないわよ!!」

『しかし、ジィィィ……、おまえの望むところでもある。ズザッ』

「!?」

『頭の中じゃ、ザッ、そう思っているかも知れないが、心の奥底ではそうあ、ザサァ、りたいと思っている。そう、ジジッ、ではないのか?』

「そ、それは……」

『テレビは、ザジィッ、おまえの過去を映し出した。そしてこれ、ガガ、から起こりうる未来も映し出した。しかも、おまえの望、ザズッ、むべく未来だ。これ以上、ザザァッ、何の不満がある?』

「うるさい」

『なぜだ?何故拒む理由がある?前世からの因縁からの理にかなった道筋ではないか?』

「うるさいっ!!」

『ザザッ、これは運命なのだよ、誰にも抗うことの出来ない。』

「ウルサイッ!!って言ってるでしょっっっっっっっ!!」

 堪忍袋の緒がぷつんと切れたのか、美神はあらん限りの力を神通棍に込め、テレビにぶつけた。テレビは吹っ飛び、壁にブチ当たるとグシャグシャに壊れた。

「運命?なによ、そんなもの!!あれが変えることの出来ない運命だって言うならゴメンだわ!!大体、この私が、人が作ったレールに乗ると思ってるの?私は自分で道を切り開くわ。それにね、私の信条は現世利益最優先なの!!」

 美神はその壊れたテレビに向かっていった。すると、ひび割れた画面に例の「顔」が浮かび上がる。

『いいのか、それで?ザザッ』

「当たり前でしょ?自分で決めたんだから。それに切り開いていった先に結局、あの結果になったとしても、それは自分で選んだことだし、その頃には納得済みのことなんでしょ。」

『そうだな………、だったらまず、ここから逃げないとどうにもならんぞ?』

「え?」

「顔」にそう言われ、何のことかと思って辺りを見ると、そこは自室でなく真っ白な部屋。ドアが一つ。ポツンとあるだけだ。

『ザザッ、私が壊れたせいでこの空間が崩壊しかけている。はやくあのドアから逃げんとおまえも消滅するぞ?現世利益最優先なのだろう?』

「バ、バカ!?なんでそんなこと先に早く言わないのよ!?」

 美神は急いで、ドアに駆け寄る。「顔」はそんな美神を見つめている。

『ザザッ、フッ………、相変わらずだな。m…………、』

 美神がドアを開き、向こう側に出ていくと、崩壊の速度は速まり、ドアが閉められる頃には塵一つ無くなっていた………。



































































































 そしてまた、扉は次の世界を開いた………。



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