ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その11)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 4/ 3)


横島がひのめに過去を語り出した同時刻。
美神邸マンション1501室。



「12年前・・・・?」

キョトンとした瞳で蛍は令子の言葉を反芻(はんすう)した。
今、美神邸の居間は崩壊状態なので台所テーブルで話を進めている。
令子の話に、美智恵は少し表情を暗めに、蛍は不安そうに、忠志はちょっとだけワクワクしながら耳を傾ける。
ちなみに令花はいまだ夢の中、リビングで熟睡中。

「あれは・・・・・長野県のN山、オカルトGメン・・・・っていうかママと仕事したときだったわね・・・・」

美智恵は何も言わず令子の視線に頷いた。
一つだけ息を吐くと少しだけ視線を上げ懐かしい瞳で令子は語り出した・・・・

「そのとき・・・・ひのめもいたのよ・・・」























12年前・・・
長野県N山。

PM1:24



「ったく!!!何で民間GSの私達がオカルトGメンの仕事しなくちゃなんないのよー!!?」
「まぁまぁ・・・・」

白のタートルネックに黒のジャケットにジーンズと、ラフな格好で叫ぶの今年2●歳の横島令子。
それをなだめるのはスーツ姿の横島忠夫(22歳)だった。

「こら、令子。そんな大声ださないでよ、隊員の人たちが見てるわよ」

オカルトGメンの制服姿の美智恵があからさまに不機嫌そうな表情の令子に話しかけた。
美智恵の言うとおり、N山の拓けた広場に本部テントを建てようとするオカルトGメンの隊員達が何事かと令子に注目していた。
『あ〜、いいからいいから』と美智恵が手を振ると隊員達は自分の作業に再び戻っていく。

「ふん!無理矢理連れてこられた仕事にやる気なんて出るわけないわよ」

「そんなこと言わないでよ、今や『民間GSとオカルトGメン』の溝を埋めるため
お互いの情報交換、公開、装備支給・・・その他いろいろなことで協力するっていう取り組みが行われてるの知ってるでしょ?」

「だからって何で私達なのよ!?」

「そりゃあ、やっぱこの業界のTOPクラスのあなた達が率先してくれればその取り組みの活性化になるじゃない?」

『トップクラス』という言葉に照れて頭をかく旦那に裏拳を入れつつ令子はさらに噛み付いた。

「現場まで旦那に強引に連れてこられてなんだけど、私はプロよ?金にならない仕事はやらない主義なの」

「報酬はあるわよ?」

「いくら!!!?」

とたんに令子の瞳がキラキラと輝いた。
そんな令子に笑みを浮かべながら美智恵は部下に持ってこさせたファイルを見せる。

「そ、それは・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・・・・」

そのファイルを途端にサーっと令子の顔が青ざめていく。
対照的に美智恵はニコっと笑みを浮かべ言った・・・・




「そ、あなたの処分しそこなった『裏帳簿』♪」
「何でそんなもん持ってんの───────────────っ!!!!!?」

令子の絶叫で耳がキーンと鳴る美智恵。
そんな令子に横島はあうあうと涙を流しながら近づいて言った。

「令子ーー!結婚するときに、
『脱税・・・・・もとい、申告漏れはもうしない』って約束したじゃないか──っ!!・・・おごぉっ!」

「分かってるわよ!だから裏帳簿も全部処分したし、税金だってちゃんと払ってるわよ!!」

令子は横島に八つ当たり気味のボディブローを食らわすとキっと美智恵を睨んだ。
さすがに結婚、そして2児の母となった令子は以前に比べてあこぎなコト、犯罪ギリギリのことはしなくなった。
ただし、以前していたことは隠蔽、または処分して『何のことでせう?』知らん顔。
そんな折こんな決定的な証拠が残っていようとは・・・・。自分の詰めの甘さを痛感する令子

「これはあなたが未払いの税金のに関する帳簿よ、日付は3年前だから時効はまだまだね〜♪」

「そ、それでも親なの!?蛍と忠志、かわいい孫から母親を取り上げたいの!!?」

「私だって蛍と忠志に可愛そうな想いをさせたくないわ、だから手伝って♪」

満面の笑みで自分の意志を押し通す美智恵。
分かっているのだ・・・・同じ母親として子供を不幸にしたくないという気持ちが。
片親に育てられる辛さが・・・・・・・・・だから令子の返事は・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・ううう、分かったわよ───────っ!!」

涙を「ダー」っと流しながら承諾する令子。
美智恵は「ありがと♪」と笑顔で言うと機嫌よく本部テントに帰っていく。
そんな母親の後姿に・・・・・・・「親殺し・・・ブツブツ」と呟く令子。そんな愛妻の表情に戦慄の走る横島忠夫、22歳だった。






















極楽ホテル2005室。


「ま、ママって昔からそんなキャラだったのね・・・」

オレンジジュースをチビっと口に含みながら苦笑いを浮かべるひのめ。
横島は涙を流しながら「うんうん」と頷いた。(ちなみに令子はこの件(くだり)を蛍達に話してません)

「そうなんだよ・・・・そんなGS母娘が身内だぜ・・・・?
もうそれから苦労の連続で・・・。だからひのめちゃんだけはまとな人格者になるよう小さい頃から・・・・・」

「お、お義兄ちゃん、苦労したのね。で、でもね・・・・」

しくしくと涙を浮かべる横島に向けて、ひのめは笑顔を浮かべる。

「お姉ちゃんいつも言ってるよ。
『私のパトーナーは世界最強のGSよ。
だから、私は・・・、私達は常に世界最高のGSでいられる』だって」


この時代、正直『横島忠夫』よりも『美神令子』のほうがGSとしての名が売れている。
最強のGSは横島かもしれない、しかし、GSとしての判断、仕事の成功率、経験値、
ときには依頼のために非情にならなくてはいけない場面もある。
令子はそこらへんが横島よりも秀でていた。
だから世間では『世界最高のGS』は美神令子、『世界最強のGS』は横島忠夫・・・というのが通説だった。
もちろん、これに異を唱えるものいるが。

「れ、令子がそんなことを・・・・」

ひのめの一言に目が丸くなる横島。
令子からは『甘い』とか『遅い』とか決してよくない評価を言われることがまだまだ多い。
世界最高のGSのパトーナーをやっているのだ、令子からの要求度は高くて当然。
しかし、それでも『もう少し誉めてくれたって・・・』と思うことがあるのだが、
本当は自分をそんなに評価してくれてるなんて・・・・

なんだか恥ずかしいやら、嬉しいやら・・・・そんな気持ちになる横島だった。


「で、話の続きは・・・・・・?」

「あ、ああそっか・・・・」

照れ笑いを浮かべながら『ハッ』と気付く横島。
そして・・・また静かに語りだした。











再び12年前。
長野県N山。


「で、今日の仕事は何だって?」

「え〜と、『N山中に存在する冥界チャンネルの歪みの調査及び封印』だとさ」

令子に聞かれ今回の仕事内容の用紙を読み上げる横島。



冥界チャンネルの歪み・・・・
5年前のアシュタロス事件以来、世界のあちこちに今までになかった冥界へ通じる空間が開いてしまった。
だが、それは人間はもちろん神族、魔族が移動できるほど大きいものではなく9割5分は何の支障もないものだった。
しかし、それをほうっておけば、何十年後、または何かのきっかけで魔界、神界へ通じる入り口になってしまうかもしれない。
そんな空間を正常な状態に戻すのもオカルトGメンの仕事だった。

「N山って今まではノーマークの霊山だったらしいな」

「まぁ、何かのきっかけで何の変哲もない山が突如霊力を持つってこともあるらしいけど・・・・
はぁ〜、山歩きって疲れるから嫌なのよね〜」

(若さがないなぁ〜・・・・)

と、思いつつそんなことを決して口に出せない横島だった。
そして、ふと空を見上げ呟いた。

「ああ〜、蛍と忠志・・・元気かな〜」

「あんたね〜、数時間前に別れたばかりでしょ。
それにお義父さんとお義母さんが見てくれてるから大丈夫よ」

「そうだけどさ〜、蛍はまだ一歳で忠志なんて3か月だぞ?
もし、何かあったらどうすんだよ〜」

「はぁ〜、この親バカ・・・・」


旦那の親バカぶりに頭が痛いというポーズの令子。
そんな令子には構わず横島はソワソワした様子で棒立ちのまま難しい顔する。
そして気付いた・・・・・自分のズボンがちょいちょいと引っ張られていることに。

「おにいちゃんだいじょうぶ?」

「ああ、大丈夫大丈夫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って!!!?」

バっとその声のしたほう・・・つまり自分の足元に視線を移す。
そこにはいたのは・・・・・・・・・・






4歳になった美神ひのめ。

「ちょっ!ひのめがなんでいんのよ!?」

令子もそれに気付き慌てた口調でひのめに声を掛けた。

「おねえちゃん、こわーい」

「うっさいわね〜・・・・で、ママどういうこと?」

『なんでひのめがいいのよ!?』・・・令子の視線がそのまま美智恵に突き刺さる。
美智恵は苦笑いを浮かべなかがら答えた。

「いやね、いつもひのめ預けてる託児所が急遽休みになっちゃって、
忠夫クンのお父さんとお母さんが帰ってきてるのも知らなかったのよ」

「だからってね〜」

旦那と戯れる年の離れた妹をチラっと見る。
現場に幼子、いくら本部テントとはいえ危険がないと言いきれない。
それに・・・

「部下に示しがつかないんじゃないの?」

「そんなことないわよ?ね、みんな!?」

そう言ってテントに向かって声をかけると

女性隊員A(21歳)「ひのめちゃんいたほうが何か和みますよね♪」
男性隊員A(29歳)「うちのチビが今このくらいなんで・・・・何か他人とは思えないっすよ」
女性隊員B(23歳)「はぁ〜、私も早く子供欲しいなぁ〜」
男性隊員B(37歳)「今回だけにして下さいよぉ」
女性隊員C(30歳)「早くお嫁に行きたい・・・・しくしく」
男性隊員C(25歳)「ひのめたん萌え・・・・ハァハァ」


横島&令子「「最後変なの混じってた─────────────────────っ!!!!!!!?」」

横島と令子のツッコミに全速力で顔を横に振る隊員達。
顔は見えないが上司が上司だけに隊員達の人間性に不安を感じる二人だった。






                                             その12に続く。

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