ザ・グレート・展開予測ショー

閉幕


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(03/ 3/31)




『だから―――おまえは美神さんのところに行ってあげて。』



バイクのヘッドライトに照らされてルシオラの横顔がうつる。
こころなしか落ち着いた、それでいてすべてを悟ったような表情に見えた。

「ちょ・・・ちょっと待て!!
 それでお前は―――――!!!!」


ゴウッ!!


凄まじい爆炎。
俺のセリフが終わらないうちにルシオラが壁に穴をあけて爆風を巻き起こす。
俺はその爆炎に巻き込まれバイクから振り落とされ、
ベスパは振り落とされた俺に気付かずにルシオラの乗ったバイクを追いかけていった。



―――分かってる。
これは俺をベスパの追跡から逃がすためのおとりなんだという事を。

―――分かってる。
今、アシュタロスを倒せる確率があるのは俺しかいないことは。

―――分かってる。
ルシオラが死ぬ覚悟をしている事くらい。



「だからって・・・だからって・・・
 見捨てて行けるわけねーだろ!!チクショォーーー!!!!」

すぐに新しいバイクを見つけてルシオラを追う。

・・・くそっ!
バイクは見つかったがキーがささっていない。

「時間がねーんだ!!動け!動けよぉ!!!!」

『動』の文珠を握りしめながらエンジンに向かって拳を叩きこむ。
勢いあまって自分の拳を傷付けてしまい、血がにじんでいるが
そんな事を気にしている余裕は無い。
文珠の効果によって動き出したバイクにまたがり闇夜の東京の街を疾走する。



・・・・・ルシオラはどこへ行ったのだろう?
ルシオラの霊波を探ろうにも
コスモプロセッサが甦らせた魑魅魍魎が多すぎて霊波が捕らえられない。
だがそんな思案にかまわず、
魑魅魍魎たちはアシュタロスの敵である俺達に襲いかかってくる。


「どけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!
 お前等にかまってるヒマはねぇんだっ!!!!」

霊波刀を一振りする。
一瞬にして魑魅魍魎たちは灰燼に帰すが――――数が多すぎる!!
こんな連中に足止めされてる場合じゃねえのに・・・


そんなときに遠くの方で二つのきらめきが飛びまわっているのが
俺のまぶたに飛びこんできた。

・・・・・東京タワーだ!!



バイクのモータ音が加速する旋律を奏でだした。
その加速音と共に全てが猛スピードで後ろにすっとんでいく。
目に写る風景も、今までの思い出も、世界を救うという使命さえも。


途中、魑魅魍魎たちが襲いかかってきたが無視して走り続けた。
腕を、足を削られる。
激痛と共に鮮血が流れ出たが東京タワーまであと500メートルといったところだ!
このまま走りつづけたほうがはるかに早い!!



「ルシオラーーー!!
 まだ死ぬなーーー!!俺にはお前が必要なんだ!!!!」

『破』の文珠で東京タワーの入り口にあるシャッターをふっとばして
そのまま中に進入する。
ルシオラたちが戦っているのは展望台の近く。

ルシオラ・・・・生きててくれ!!



ようやく展望台に着いた俺の目に飛びこんできたものは―――
せめて相打ちにもちこもうと霊波砲を撃とうとするルシオラと
ルシオラより1テンポ早くすでに霊波砲を発射したベスパの姿だった。

その直後、俺は迷わずバイクのアクセルを踏んでいた。



加速する車体。

迫り来る窓ガラス。

ガラスが割れる音。

目に写るのは夜空に舞い散る窓ガラス。

空中でバイクを蹴ってルシオラの方に跳ぶ俺。

さらに手を伸ばす。

あと3センチ。



――――あとたったの3センチだった。
空中でルシオラの腕を掴み引き寄せる、ベスパの攻撃をかわし反撃する。
最悪でも俺がルシオラの盾になってルシオラを助ける。

――――だが、それはすべて3センチ先の世界の話。
実際には・・・・・・とどかなかった。たった3センチが。


「ルシオラーーーーーッ!!!!」

真夜中の東京タワーに一人の男の絶叫が響いた。



ベスパは俺が乗ったバイクが直撃し、
それに気を取られてる間にルシオラの霊波砲を受けて・・・・俺の視界から墜ちた。

ルシオラはまだ生きているが霊其構造がドンドン破壊されていっているのが分かる。
・・・・このままじゃ時間の問題だ。

「ルシオラ・・・・!!
 死なないでくれぇ!!!!お前がいなくなったら俺はっ・・・・!!!!」

文珠に『蘇』『生』の文字を込める。
・・・・が発動しない。
ここまで破壊された霊基構造を蘇生する力は無いのだ。


「くそぅ・・・俺の文珠二文字じゃ蘇生できね―のかっ!!」

こみ上げる自責の念。

あの時、俺は本当に全力で跳んだのか?
もう少し手を伸ばす事ができなかったのか?
本当はルシオラの盾になって死ぬのが怖かったんじゃないのか?
無意識に手が、足がすくんでいたのではないのか?だから、とどかなかった?

俺のせいだ。


自分を責めている間にもルシオラの霊其構造は破壊されていく。
もう、時間が無い!!!!

「・・・・・・死なせねー、どんな事をしてもだ!!!!」

俺の手に握られるのはありったけの文珠6つ。
それぞれに『霊』『其』『構』『造』『再』『生』の文字を込める。
正直、六文字の同時使用は俺の霊力の限界を超えている。
だが絶対に成功させてみせる!!この命に代えてもだ!!!!


ルシオラを抱きしめながら文珠を発動させる。
全身がバラバラになりそうな衝撃を受けながらも
ルシオラの霊其構造が再生していくのを感じる。
・・・・・・これでいい。多分俺は死ぬだろうがルシオラは助かるはずだ。
生きてくれ、ルシオラ・・・・・!!


・・・・・・駄目だ!!
まだ俺には最後に大きな仕事が残っている!
ルシオラを笑顔で見送らなくては。
それまでまだ俺は死ぬわけにはいかないっ・・・!!!!







「あ・・・あれ!?私――――」

「壊れかけてた霊其構造を文珠で再生したんだ。もう大丈夫だ。」

ぐったり鉄柱にもたれながらもなんとかルシオラに返答する俺。
もう少し―――もう少しでいいんだ。

「そんな・・・大丈夫なの?ヨコシマ・・・?」

「さすがに六文字同時使用はキツかったけどな。
 それよりも早く美神さんを助けに!!
 早くしないと今残っている魂も分解されちまうんだ!頼む!!」

もう俺はお前と一緒に歩けそうにないな・・・
ごめん、ルシオラ。どうか幸せに――――


「ほんとに・・・大丈夫よね!?
 ウソだったらタダじゃおかないからね!!」

ルシオラがクルリと振り返って念を押す。
まったく・・・・こんなときばっか鋭いんだからな・・・

「大丈夫さ・・・!!」

今できる限りの最高の笑顔を作ってルシオラを見送り、いなくなるのを確認する。
ああ・・・これが俺の最期の仕事なんだな。


未熟な霊力で文珠の六文字同時使用した反動か俺の霊的中枢がバラバラにはじけそうだ。

ははは・・・嘘ついたこと――――あんまり怒らないでくれよな。

ここで一緒に見た夕日、綺麗だったな。


『昼と夜の一瞬のすきま―――短い間しか見れないからきれい。』って言ってたっけ。
でも、夕日を見つめるお前が一番―――――綺麗だった・・・・・


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