ザ・グレート・展開予測ショー

父、親をする


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(03/ 3/30)

これは、久しぶりに会った親子の触れ合いのお話です……彼らなりの。



部屋の隅で頭を抱えて、自分の過去を振り返っていた大樹が突然宣言した。

「よし!シロちゃんと言ったか?俺が服を買ってやろう!」

取り合えずシロを手なずける事にしたらしい。

もっとも、過去を振り返っていたら「もしかして、他にも…」と色々とヤバい心当たりがゴロゴロ出てきてしまったため、現実逃避に出た、とも言える。

「なんだとー?俺には今回お土産も無しだっつーのに、それは無いだろ!」

抗議する横島。ちなみに前回のお土産は既に幾人もの血を吸った、ゲリラの愛用していたナイフである。そりゃあ抗議するだろう。

「やかましい!息子なんぞそれでいーんだっ!俺はず〜っと女の子が欲しかったんだよっ!…あ、そうそう。渡すの忘れてたが、ほれ土産だ」

そう言って大樹が取り出したのは、一個の銃弾。

「…何だこりゃ?これをどーしろってんだよ?」

「うちの支社に復讐にきたゲリラの一人が御守りに持ってた銀の銃弾だ。お前GS免許取ったって電話で言ってたろ?持ってろや」

「………ありがとうよ」

「おう」

前回といい、今回といい、どうやって税関通ったのか少々疑問だし、全く金をかけてはいないが、一応心はこもっている。

その辺のところが分からない男ではないので、横島は素直に感謝し、大樹はニヤリと笑ってそれを受け入れた。



そして、シロの服を買いにデパートに来た3人。

「せんせっ。ねっ、これ似合う?似合う?」

「むぅっ。シロのミニスカート姿…新鮮な魅力がっ…っていかん!落ち着け!落ち着くんだオレ〜!!」

いつも片足だけカットしたジーンズ姿のシロのミニスカにクラッと来てしまい、頭を振って我に帰ろうとする横島。

横島から感想が聞けそうに無い為、大樹に聞いてみるシロ。

「その…ぱ、パパはどう思うでござるか?」

「グハァッ!!」

『パパ』の一言にダメージを受ける大樹。

見知らぬ子にパパと呼ばれる事での精神的ダメージ。こればっかりは、受けてみなければどれほどのダメージかは分かるまい。心当たりが有ればあるほど、そのダメージは倍加する。

大樹はさっきまでは『父上』と呼ばれていたので、それほどダメージを受けていなかったのだが、不意に『パパ』と呼ばれた事で実感を伴ったショックを受けたのだ。

「大丈夫でござるか!しっかりして下され!パパ!パパッ!」

「グフッ!!」

倒れた所にパパの連呼というシロの追い討ちをくらい、心臓(良心?)が痛む大樹。

それを見て密かにビデオで撮影しながら笑う横島。

「(くっくっく…あとでお袋宛てに送っちゃる…)」

しかし、もし送った映像が原因で離婚騒動が起こったら、また母親の百合子が日本に来て、事務所メンバーを巻き込んでの騒動を起こして自分も困ると思うのだが…彼はそこまで考えてはいないようだ。

「大変でござる、先生!パパ上殿がっ!」

「落ち着けシロ!大丈夫だ、俺に任せろっ!」

シロが振り返るや、一瞬でビデオを隠して大樹に駆け寄る横島。パパ上ってなんじゃい!とシロにツッコミを入れたいのを我慢して、大樹に耳元で囁く。

「大丈夫だ親父…ここにお袋はいない。落ち着け…それに、さっきからあっちの美人のデパガのねーちゃんが見てるぞ?…ほら、こっち来た」

「どうなさいました?お客様。大丈夫ですか?」

途端にシャキッ!と立ち直り、デパガを口説きだす大樹。

「ははは、あなたのような方に心配して頂けるとは光栄ですね。ですが、もう大丈夫ですよ」

「本当ですか?」

「ええ。あなたがしばらく一緒にいてくれるなら、間違い無く!…いかがです?ご一緒にお茶など」

極自然に女性の隣に移動し、大人の笑みを浮かべて誘いをかける大樹。しかし今の彼には弱点があった。それも致命的な…

「あら、お子さんはよろしいんですか?」

営業スマイルを浮かべて、さらっと返すデパガのお姉さん。そう。本人は忘れていたが、今の大樹はコブ付きだったのだ。

「親父?」

「パパ?」

出来るだけ意識して純真な子供の目をする横島と、天然でその目をしたシロの無垢な穢れなき視線が大樹を射る。

「……すまなかったな。お前達の事を忘れていた……どうだ?メシでも食いに行くか?」

横島だけだったら「いや、アイツは他人です」と切り捨てられただろうが、シロの視線に良心を射抜かれた大樹は、久しぶりに父親モードが発動。シロに向かって「さぁ、何が食べたい?」と優しい目をして聞き、もはやデパガのおねーさんなど眼中に無い様子だ。

しかし、横島のカメラにはしっかりと大樹がおねーさんに自分の電話番号を渡すのが写っていた。自分が無視された事に怒る横島によって、その映像も間違いなく百合子の元に送られるだろう。彼女の来日は近いのかもしれない。



大樹に連れてきてもらった焼肉屋で、己の胃袋の限界に挑戦するシロ。

こっそりとビデオのバッテリーとテープの残りを確認しつつ、シロと肉を取り合う横島。

見る見る積み重なる大皿を数え、財布の中身を確認して、この店はカードを使えたかどうか不安になる大樹。

この3人の明日はどっちかは…まだ、決まっていない。

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