ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その10(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 3/28)











「ハっ、ハッ、ハッ・・・」

タンタンタンタっ タタタタ タンタンタンタっ タタタタ

一定のリズムが薄暗いマンションに鳴り響く。
令子はそのリズムを崩さずにマンションの階段を15階からダッシュで駆け下りた。
ちらっと壁を見ると『2F』の文字。
エレベーターで降りたひのめは既に遠くへ行ってしまっただろうか・・・
そんなことを思いながら最後の一歩を踏み出した。



タンっ


軽やかな音共に着地する令子。そして、ひのめを追おうとした彼女の目に入った光景・・・・それは・・・
















『エレベーターの前で抱きしめあう夫と妹』


─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─


次の瞬間

『何やっての!!このヤドロクーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!』

『グホォっ!!!』

令子のジェットアッパーで10mは吹っ飛ぶ横島。
さらに・・・

『私の妹にまで手ぇ出すなんて!!!ぶっ殺すっ!!!』

『うわー!!令子落ち着けーーー!!!』

ドガドガドカボク!!!

『ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』



─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─




とまぁ一昔前なら以上の展開になっていただろう。
しかし、さすがに時を重ねたのか、それとも結婚生活を経て信頼という絆が高まったのか・・・・・
令子はその光景に慌てることなく二人に近づいた。

「お、令子」

当の横島も同じく慌てるそぶりを見せず近づいてくる愛妻の名を呼んだ。
ひのめは横島の声で令子の存在に気付き止まりかけた涙をグっと拭いサっと横島の影に隠れた。

「ひのめ、ほら帰るわよ・・・」

「やだ!」

ひのめは短く言い放つと、まるで某『巨●の星』の主人公の姉のようにその影からジーっと令子を睨む。

「ったく・・・」

そんな妹にはぁ〜とタメ息をつく令子。
二人の間で板ばさみとなった横島はまぁまぁと苦笑いを浮かべる、
何となく何があったかはある程度推測がついた。

「なぁ、ひのめちゃん・・・・今から俺とドライブしようか?」

「え!?」

突然の申し出に驚くひのめ。
しかし、横島はニコニコと笑顔を浮かべるだけでそれ以上答えはしなかった。


ギュー!

「いででで・・・!!」

突然令子に耳を引っ張られ叫ぶ横島。

(あんたねー!何考えてんのよ!?)

令子は少々ヒステリックな声で横島の耳元で囁いた。

(まぁまぁ、このまま強引に家に連れて帰っても逆効果だろ?・・・・・・・・まかせとけって!)

そういって横島は令子の肩をポンポンと叩いた。

「はぁ〜、わかったわよ。ママ達には私から言っておくから・・・。ひのめ、ちゃんと帰ってくるのよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

ひのめは令子の声をわざと無視し、背を向ける。
令子は妹の後姿にもう一つ大きくタメ息をつくのだった。

「ほらほら!じゃあ夜のドライブにレッツゴー!」

二人とは対照的に明るい声でひのめの背を押す横島。
ひのめはそんな背中に添えられる手のひらの温かさに安堵の笑みを漏らした。























「ねぇ、どこ行くの?」

ひのめ助手席に乗りながらさっきから無言の横島に話しかけた。
横島はチラっとひのめを見て軽く答えた。

「ん?ああ、ホテルに・・・・」

「え!!」

ボッっと一気にひのめの顔が赤くなる。

(え!え!?ホテルって!そんな!私はまだ高校生なうえに、お義兄ちゃんには令子お姉ちゃんっていう妻も!!?
キャー!!私はどうしたらーっ!で、でもお義兄ちゃんになら私─────!!」

「あ、あの・・・ひのめちゃん。全部声に出てるから」

「へっ!!?」

苦笑いを浮かべながら運転する横島の言葉にさらに顔がカーっと赤くなるひのめ。
そんなひのめに「ははっ」と笑みを浮かべながら横島は言った。

「たまにな、何らかの事情で事務所じゃ受付出来ないっていう人のために日頃からホテルの一室を貸しきりしてんだよ、
あと、時々家族で使ったりね」

「あ、そ、そういうことね・・・・・・・。私ったら浮気用にでも借りてるのかと思っちゃった♪」

「ギクッ!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、そ、そ、そんなことあるわけないじゃないか〜!!」

ひのめの何気ない一言にダラダラと汗を流す横島、
そんな横島を見て「付いていって大丈夫だろうか」と一抹の不安を感じるひのめだった。



















ぎ〜、バタン。

「ただいま」

重い音と共に玄関のドア閉め令子が美智恵邸に戻ってきた。
それに気付き少し慌てたように美智恵と蛍が駆け寄ってくる。

「ひのめは!?」
「お姉ちゃんは!?」

「いっぺんに言わないでよ。・・・・・・・・・・うちの旦那が連れて行っちゃった」

「忠夫クンが?」

意外な登場人物の名に少し驚きを見せる美智恵。
令子は取りあえず自分が見たさっきの経緯を話した。
そして思い出したように言った。

「忠志は?」

「え?まだ令花と一緒に寝てるけど」

ピっと蛍が指差した方向には忠志と令花が仲良く寝息を立ている。
令子は二人を起こさぬよう静かに二人の枕元に立ち

「こら、起きてるのは分かってんのよ」

ペシっと忠志のおでこを叩いた。

「すー、すー」

しかし、忠志は反応を見せず寝息を立てるだけ。
そんな忠志をジーと見つめながら令子はすぅ〜と息を吸い込み低い声で言った。


「2秒以内に起きないとむこう3か月小遣いなしよ・・・」
「何でございましょう、母上!」

忠志は『小遣い』という言葉に反応したのか、バっと起き上がると丁寧にも令子の前に正座した。

「あんた・・・何でひのめの霊力が低いこと知ってたの?」

「そ、それは〜」

「答えなさい・・・」

蛇に睨まれた蛙、またはその蛙が鏡映し出された自分の姿を見たようにタラタラと汗を流す忠志。
そして、観念したように自白した。

「たまたま、父さんと母さんの会話を聞いちゃって・・・」

「そういうことかー・・・はぁ〜しくった」

忠志の話を聞いて自分にひのめを追い込んだ一端、いや原因があることに後悔の念が令子の心を覆った。
左手で頭を抱える令子・・・これは昔から令子が失敗したと思ったときにとるクセ。

「ねぇ、ママ」

「ん?」

「お姉ちゃんの霊力が低いって一体・・・・」

蛍の言葉を聞いてからチラっと美智恵のほう振り返る令子。
美智恵は何かを覚悟したような表情でコクンと頷いた。

「まぁ、今日はそのことで集まったんだからね・・・・話すわよ・・・その前に・・・」


ピッぽっパ。


令子はポケットから携帯電話を取り出し、すばやくボタンをプッシュする。

「もしもし?ああ、私・・・・・・・・・・今から例の話するから。ひのめにはあんたが話なさい。
・・・・・・・そうよ・・・子供達には私からするわ・・・うん・・・・じゃあ・・・・」

ぴっ

再び携帯のボタンを押しポケットしまう令子。
その表情はどこか悲しい哀愁を浮かべていた・・・・












その10Bに続く

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