ザ・グレート・展開予測ショー

彼の大きさ(9−5)


投稿者名:ANDY
投稿日時:(03/ 3/23)

 バラバラバラ!!
「いけ〜い!!マリア。そこじゃあ!!!」
「イエス。ドクター・カオス」
「く!!」
 マリア・カオス組みと殺刃との戦いは一進一退であった。
 いや、徐々にマリア・カオス組みの方が押され始めていると言ってもいいだろう。
 いくらマリアが『ヨーロッパの魔人』のオカルト技術の最高傑作であるといっても、その装備しているものは人が作った銃器などであり、当然その弾数に
限りが存在している。
 現に、今マリアの装備で残数がある武器は全体の三分の一へとなっていた。
 対して、殺刃の方は獲物の様子からもわかるように接近戦を得意としているようで、どうにかマリアの懐に入ろうとしているが、マリアの銃器でなかなか入れずにいた。
 ちなみにカオスはなにをしているかというと、指示という名の応援と、たまに胸からの怪光線を出したりしていた。
・・・役に立ってるかどうなのか、は突っ込まない方がいいだろう。

「うむ。いかんのう」
 マリアと殺刃の戦いを観察しながらカオスは呟いた。
 一見、二人の戦い互角に見える(すでに戦線から離脱かい!)が、このままではこちらが負けると思っていた。
 まず、マリアの残弾数が残りわずかであること。
 次に、さすがあの狂乱角の部下であり、殺刃の体捌きはみごとであり、必要最小限の動きでマリアの攻撃をよけていた。
 マリアも回避は出来ているのだが、その身につけている衣服に細かい傷が物語るように殺刃の攻撃の鋭さがわかる。
「うむ。本当にいかんのう」

「くくく。どうした?!俺の攻撃が捌ききれなくなってきてるぞ!人形!!」
「ノー・プロブレム。カツノハ、マリア・デス」
「なら、バラバラにしてやる!!」
そういうと同時に殺刃の動きは早くなった。
殺刃の攻撃は、まるで餓狼の群れのようにマリアへと殺到した。
その攻撃を円を描くように動きながら、最小限の動きでマリアは捌く。
 が、その動き全てにマリアはついていけないようで、人工皮膚が所々削られ、機械の部分が見え始めていた。
「・・・」
「どうした?俺に勝つんだろう?!それともこのまま屑鉄にしてやろうか!!」
 鋭い攻撃をしながら叫ぶ殺刃に対して、マリアは無言で回避行動に専念していた。
 だが、餓狼の牙はマリアを確実に削り取っていた。

「いかん、マリア!!え〜い。何かあったはずじゃ。どこにしまったかいのう」
 マリアの傷ついていく姿を見て、カオスは羽織っていたマントから何かを出そうと探していた。
 出てきたものは、喫茶店のシュガースティック、爪楊枝、ポケットティッシュ、有効期限の切れたラーメン屋の半額券、マッチ箱、etc.etc・・・
 どう考えても現状を打破できそうなものが出てこない。というか、半額拳なんてどうやって手に入れた?
 そんなガラクタたちと、カオスが格闘をしている間にも、マリアと殺刃の戦いは続いていた。
 殺刃の攻撃は徐々にマリアの身体を捕らえ始めていた。
 いや、すでに捕らえているのにわざと致命傷を与えないようにしているようだ。まるで猫がネズミをいたぶるかのように。
「そらそらそら。どうしたどうした!!避けてばかりじゃあ俺は倒せんぞ?勝つって言ったんじゃなかったのか?え〜?!木偶人形さんよう!!」
「・・・」
 嘲りの笑みを浮べながら、両の爪を振るう殺刃に対し、マリアは無言で回避行動をしていた。
 だが、マリアの表情には怯え、恐怖、などの感情は見えない。
 あきらめない、不屈の闘志が見えるだけだった。

「うん?こ、これじゃ〜!!」
 今までマントの中を探していたカオスが、ついに目的のものを探し当てたようだ。
 喜びの表情を浮べるカオスの周りに、クマのヌイグルミや、ナイトキャップ、お灸セット等が転がっているのは関係ないだろう。
「マリア、受け取れ〜い!!」
 そう叫び、カオスはマリアに金色のリングを投げた。
    グギ!!
「アベシ!!」
 リングを投げると同時に腰のあたりから鈍い音を響かせ、カオスはその場に蹲った。
「こ、腰が・・・」
 どうやらぎっくり腰に襲われたようだ。
 ここに、記念すべき負傷者第一号が誕生した。

 殺刃の攻撃を捌いていたマリアのセンサーに自分に向かってくる物体が引っかかった。
 それと同時にカオスの声を確認。なお、その時響いた音は認識を拒否した。
   バラバラバラ!!
 殺刃に向けて最後の弾倉を一斉射した。が、殺刃はそれを難なくかわした。
 だが、マリアの目的は当てることではなく、殺刃から距離をとるためだったのだ。
 その距離は二十メートル。
「くくく。どうやらタマ切れのようだな。さて、今から解体ショーの始まりと行こうか。どこから切り刻まれたい?腕か?足か?それともその紛い物の瞳か?遠慮はいらん。ご希望通りのところから刻んでやる」
 自らの爪を舐めながら、殺刃は醜悪な顔をゆがめながらマリアに尋ねた。
 その顔は、向けられたら一生一人では寝られなくなるほどのトラウマを与えかねないほどだ。
 が、マリアはそんなことお構いなしに、立っていた。
 左手にカオスがその身を犠牲にして渡してくれた、金色のリングを持ちながら。
「アナタノ・マケデス」
 マリアはリングをかざしながら、厳かに、そして、力強く言った。
「なんだと?ふ、まさかそんなワッカ一つで俺を倒せると思っているのか?!いかれたのか?」
「ノー。マリアハ・ジジツ・ヲ・イッタ・マデ」
「・・・ふん。どうやら完璧に狂っちまったようだな。いいだろう。俺が引導を渡してやる」
「ノー。インドウヲ・ワタス・ハ・マリア・デス」
 無言でにらみ合う二人。
 暫く睨み合いが続いた。
 時間にして数秒、それとも数時間?
 それほどまでに緊迫した空気が、二人を包んでいた。
    パン!
 どこかで銃が吠えた。
 それを合図に二人は行動を起こした。
 殺刃は両の手に力を込め、その身を風へとした。
 獲物の身体を切り刻み、弄ぶ為に。
 マリアは金色のリングを右腕へと付けた。
 付けると同時に、リングは自動的に回転を始めた。
 その速さは、とても自動的に起こっているとは思えないほどで、その金色の身から紫色の輝きを生じさせていた。
 そして、二人の距離が十メートルを切ったと同時に、マリアは動いた。
「ブロークン・アーム!!」
 そう言うと同時に、マリアは右腕を飛ばした。
「無駄だあ!二度も同じものを喰らうか!!」
 殺刃は、自分に向かって飛んでくる右腕を一度その身に受けたものと同質だと思った。
 そのため、自分の両の爪に魔力を纏わせ、切り刻もうと考えた。
 そして、爪を飛んでくる紫金の物体に引っ掛けた。いや、引っ掛けようとしたが、それはかなわず、爪は砕かれ、そのまま己の胸を通り過ぎていった。
「な、なんだ・・・?」
 そう言い残し、殺刃は倒れた。
 その胸に大きな穴を開けて。
「マリア・ノ・カチ・デス」
 そう静かにマリアは呟いた。
 この戦いは完勝とは言えない。辛勝だった。
 マリアの姿がそれを物語っていた。
 ところどころ剥げ落とされている人工皮膚。
 最後の『ブロークン・ナックル』を放った右腕は、肘の先から無くなっており、わずかにワイヤーが覗いているだけだった。
 だが、機械仕掛けの戦乙女はその手に勝利をつかんだ。


第一死合
○マリアVS殺刃●
時間:十四分三十二秒
決め手:ブロークン・アーム




「お、お〜い。マ、マリア。こ、こしが・・・。た、助けてくれ・・・」
「・・・イエス。ドクター・カオス」

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