ザ・グレート・展開予測ショー

主人公の務め


投稿者名:人生前向き
投稿日時:(03/ 3/23)

『ぬくい理想』を後のちょっとした小話(のつもり)です!







人気者・・・ってつらいのな。 今になって親友の気持ちがわかる・・・・・・わけはなかった!



 「ちくしょう、なんで男なんじゃーーー!!」

 「ごちゃごちゃいわないで走る!」

 頭の上で一匹の狐が野次を飛ばす。
 距離的にみればたいしたことはないが、全力疾走は厳しい坂道。一息で走ろうと試みたものの三分
の一を越したあたりでそれを断念し、ペースを幾分落とした。

 「あ〜もう!持久力の訓練じゃないんだから、さっさと走る。」

 「だ、だからって・・・・に、荷物が・・・」

 「ほら、捕まるわよ。」

 振り返ると、鬼のような形相をした中年が、重そうなお腹を抱えながら麺棒を片手にすぐそこまで追
いかけてきていた。

 「こ、この・・・・性悪きつねぇぇーー!」

 




 


 坂道が終わり少し走ると十字路がある。そこを左に曲がり、住宅街を越したところにある公園まで、下
調べはしてあった。 距離にして1km弱をどでかい荷物を背に全力疾走。 それを終えた横島は男の姿が
ないことを確認すると体をくの字に曲げた。事務所を出てから二ヶ月、彼らは今、栃木県の町にいた。目
的地は無いと公言した彼に、じゃあここに行こうとたまもが提案した。反対する理由は無く、それどころ
か彼自身、ぶらぶらあての無い旅をするよりも気が引き締まるため、諸手を挙げて賛同した。


 「吐かないでよ!胃を強くする特訓でもあるんだから。」

 人型に戻ると、木の下にあったベンチに腰を下ろした。横島の頭を自分の膝の上に乗せた。

 「に・・・に、荷物を持ってるんだ・・・ぞ。」

 「だから1kmにしてあげたでしょ、体力無いわね。」

 「あ、頭の上にお前がのってるし。」

 「入って無い脳みその代わりしてあげたのよ♪」

 「前より重くなってる・・・はぐっ!!」

 上から襲ってきた肘が横島の顔に深くめり込んだ。
 
 「お、おれのまちがえです。」

 「よろしい。」

 一緒に旅を始めてから一週間で主導権はたまもが握り、横島は二週目でそれに気がついた。勿論、抗議はし
たが、たまもは出したあることを条件に、横島はそれを受け入れた。条件は横島にとってとても喜ばしいもの
だったが、たまもに主として旅をするにつれ、一つ問題が姿を現しはじめた。その浮上した問題は『金銭感覚』
。大きめの街に着くと、目を放した隙に財布とともに消え、帰ってきたときには一着一万ウン千円のブランド
服に身を包ませている。それが二度ほど続くと路銀も底を尽きる。

 「ほんとにいいのかなぁ〜。」

 「まだ気にしてるの?」

 「だってなぁ『食い逃げ』って一応犯罪だぞ。」

 そう、先ほど追いかけてきた男はうどん屋の主人である。たまもの力で騙すことができたのだが、彼女は足腰
の訓練といい、『食い逃げ』をしたのだ。

 「いったでしょ・・・世の中の厳しさを読者に伝えるのもまた主人公の務めよ♪」

 「それはちょっと・・・。」

 「それに!」

 「それに?」

 たまもは胸の前でこぶしを握り締めた。そして一呼吸、間を開けた。

 「あそこのうどん屋、キツネうどんの揚げが半分なのよ、信じられる半分よ!? 絶対裏で金蓄えてんのよ!!
!」








 


 
 「お、俺はお前のほうが信じられないぞ・・・・」

 たまもの膝の上、彼女をつれてきた少しばかり(?)後悔していた。

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