ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その8(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 3/21)










「ママ───!!違うでしょ─────────っ!!!?」

令子は立ち上がると「ガー」という背景音と共に美智恵に迫った。

「わ、わかってるわよ・・・・。蛍、忠志、もう霊力を使ってケンカしちゃだめよ?
おばあちゃんと約束出来るわよね?」

「・・・・グスっ・・うん」
「・・・えぐ・・・グス・・・」

美智恵の優しい笑顔に涙えを浮かべ返事をする蛍、忠志はもう涙が流れて返事が出来ない代わりにコクっと頷いた。
そんな光景を見ながら・・・

「・・・ったく、こうやっていつも私が悪役になっちゃうんだから」

と、令子がボヤいたことには誰も気付かなかった。




「ねぇ、サイキックソーサーって何?令花にも出来るの?」

「え?」

腕を組みブツブツと文句を言ってる令子の上着を末娘の令花がそっとひぱった。
令花の問いに始めは何事かと思ったが、たがてその言葉が理解できると頭をクシャクシャと撫でて優しく答えた。

「ふふ、令花にはちょっと早いかな。大丈夫令花にもいつかできるようになるわ」

「えー!いつ?いつ?」

令子の諭されても尚も食らいつく令花。令子はその様子に少し困った表情を浮かべながら「う〜ん」と考える。
そして、閃いたとばかりに『パっ』と表情を明るくして令花に言った。

「そうね、この神通棍に霊力を込めれるようになったらね」

令子はそういって棚に置いてある神通棍を令花に渡した。
神通棍、GSなら誰でも扱える道具。
いや扱えなければいけない道具だからこそ今のうちから慣らしておくのもいいだろうと令子は思った。

「ねぇ、どうやって使うの?」

「ん?まずね思いっきり振るか、ここのボタンを押してみなさい。そうしたら棍の部分が出てくるわ。
で、それが出来たら自分の中の霊力を送り込むの・・・・そうね・・・神通棍も自分の体の一部・・・血が流れてるようにイメージするのよ」

「うん!」

令子の講釈に令花は笑顔で返した。令花の笑顔に令子も顔がほころぶがすぐに苦笑いになる。
令花が神通棍を使えるのはまだまだ先になることは目に見えていたからだ・・・事実令子自信が使えるようになったのも、
中学に入るか、入らないかのときだった。だから・・・目の前で懸命に神通棍を振る令花に悪いことしたかな・・・と思った矢先。

「ママーーー!!出来たよ!!」

「いいっ!!」

令花の言葉に目を丸くする令子。いや、その令花の持つ神通棍を見てもっと目を丸くすることになった。
なぜなら・・・・・・・・・令花の言うとおり神通棍に霊力が込められているから。
それに気付いた、蛍、忠志も口をアングリと開かせる・・・・そして美智恵は・・・・

「さすが私のま・・・・ごはっ!」

先程と同様令花に抱きつこうとするが、それは令子のタックルによって阻止された。

「あいたた・・・令子!何するの!」

「あのね・・・ママ。前から言おうと思ってたんだけど・・・・」

令子はそういって令花を手を引っ張って蛍と忠志の背後に回り・・・言った。

「この子達が凄いのはママの孫である前に私の子だからよ。そこらへん勘違いしないでくれる?」

カッチーン

そんな効果音と共に美智恵のコメカミに『怒』マークが浮かぶ。

「ふふ、令子何を言ってるの?元はといえばそのアナタも私の血を引いてるから凄いのよ?
だからその子達も私の血を引いてるわけで」

「あら?そんなこと言ったら私のおじいちゃん、おばあちゃんの血っていうことになって堂々巡りよ?
そろそろボケちゃったのかな?」

「ほほぉ〜、いつからママにそんな態度取るようになったのかしら?」

「女は強し、されど母はもっと強しってね」

「ふふ・・・祖母はもっと強いのよ」


((何か使い方間違ってますよ!二人ともーーー!!!))

と、叫びたい!叫びたいけど言えない蛍と忠志。
しだいに二人の霊力が共鳴しあい『バチ・・・バチ・・・』と火花を散らし始めた。

「ほ、ほたねーちゃん!長女だろ!?止めてくれよ!」
「あんた、私に死ねっていうの!男なんだからあんたが行きなさいよ!」
「何でだよ!」
「何でもよ!!」

と、こちらでも再び一触即発状態に陥る蛍と忠志。
もはやこの部屋が吹っ飛ぶのは時間問題・・・・と、なったところで・・・

「う、うえ・・・グス・・・ウグゥ・・・ケン・・・カ・・うう・・しな゛いで・・・」

小さな泣き声が四人の耳に入った。
その声にピタっと四人の動きが止まる、そしてゆっくりとその泣き声の主を見た。

「れ、令花?」

令子は泣きじゃくる娘の名を呟いた。
令花はグスグスと鼻をすすり今にも大泣きしそうな表情で四人を見つめる。
その瞳に見つめられ言葉を失くす四人。

「令花・・・もうおばあちゃん達ケンカなんてしないわ」

やさしくあやす美智恵、これで令花も泣き止むだろうと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と思ったのが甘かった。
令花は相変わらずその目から涙を流す、いやその量は明らかにさっきより増えている。
そして・・・


バチ・・・・バチバチ・・・バチ


「ま、ママ・・・令花は一度泣き出すと大泣きして泣き止むまでこっちの声は届かないのよ」

バチ・・・・バチバチ・・・バチバチバチ・・・

「へ?」

バチバチ・・・バチバチバチ・・・

「それでね・・・今、神通棍を令花が持ってるでしょ?」

令子が指差す令花の神通棍に恐る恐る視線を移動させる美智恵。そこには・・・・・
まるで雷が圧縮されたように放電を続ける神通棍の姿があった。

「ねぇ・・・・・・・・・・・・令子・・・・・・・・・このままだと」
「うん・・・そうなるだろうね」

なぜかニコっと微笑みあう二人・・・・次の瞬間

「「緊急退避ーーーーーーーーーーー!!!!!」」

そういってバっとソファーに隠れる二人、そんな二人を何?何?と不思議そうに見つめる蛍と忠志。

「あんた達も早く隠れなさい!!」

「「へ?」」

と、二人が言った瞬間・・・

「うわああああああああああああああああああんん!!!!!!!!!!!!!」


ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!



凄まじい放電と爆発が部屋中を覆った。





















「ゴホっ、ゴホっ・・・み、みんな無事?」

煙で咳き込みながらソファーを持ち上げ周囲を見回す令子。
その隣ではキューと目を回す美智恵の姿が、そして一番気になる令花はどうかと駆け寄った。

「令花?令花?」

先ほどと同じ場所で倒れている令花を抱き起こす令子。
令花はスースーと寝息を立てるだけでどうやらケガはないようだった、それが分かりホッと胸を撫で下ろす。
そして、次に長女と長男の姿を探すと

「あいたたた・・・・」

黒炭になったナニかの下からムクリと蛍が起き上がった。

「蛍、無事?・・・・忠志は?」

「え・・・と忠志なら・・・・コレ」

そういって蛍は右手でつまんで持ち上げたのは先ほどの黒炭になったナニかだった。

「た、忠志大丈夫?」

「ほ、ほたねーちゃんが俺をた・・・てげふぅ!!!」

何か言おうとした忠志に令子の死角からエルボーを炸裂させる蛍。
そして、わざとらしい口調で・・・

「忠志が爆発から身をていして私を守ってくれたの!こんな弟をもって私は幸せ者よ!」

と、嘘泣きしながら顔を手で覆ってみせた、その横では息も絶え絶えにピクピクと痙攣する忠志。
そんな光景に二人の将来が不安になる令子だった。

「ふぅ〜、にしても・・・このマンション、部屋が耐震、耐火、耐霊処理を施してなかったら危なかったわね」

「あ、ママ気がついたの?」

「ええ。全く・・・暴走するほどの霊力を持ってるなんて末恐ろしいわね
・・・・でもきっといいGSになるわよ」

そう言って美智恵は静かに寝息を立てる令花の頬をツンツンとつっついた。

「私だってなるもん・・・」

蛍のちょっと拗ねたような表情でポツリと囁きがふと美智恵の耳へと入った。
美智恵は相変わらずムスっとした表情の蛍に近づくとそっとその頭を優しく撫でた。

「蛍も、そして・・・忠志も!みんな凄いGSになれるわよ。あんた達は美神の血を引いてんだから」

「えへへ・・・」

蛍は美智恵に誉められ照れたように笑みをこぼす。
そんな光景に黒焦げの忠志を介抱している令子もクスリも笑顔を見せた。






















ガクガクガクガク・・・・

震えた・・・疲れからじゃない・・・驚きと悔しさと恐ろしさで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ひのめの膝が。

(何よアレ・・・・)

玄関のドアに背を預けズルズルとしゃがみこむひのめ。
膝の振るえがしだいに体全体に伝わっていく、
それを抑えるように腕を組み両手で両肩を押さえるがそんなことではとても収まりそうになかった。

(何よ・・・何なのよ!!これが・・・これが私の現実なの!!?)

先ほどから見ていた年下の姪っ子、甥っ子達の能力。
とても凄まじい修練から来たものじゃないことは明らかだった。

天賦の才、

生まれ持った才能、

同じ美神の血を引く者としての差、

孫と子供の才能を喜ぶ母と姉。

そんな現実が・・・・・・・・・・自分が今まで培ってきた努力をズタズタされているようにしか感じられなかった。
いや、存在自体すら否定されているのでは・・・・・・・・・・・そんな想いだけがひのめの心を覆っていく。

「・・・・ふふ・・・・私って一体何なんだろう・・・・・・・・・・・」

その日・・・・・ひのめは生まれて初めて面白くも無いのに笑いがこぼれた・・・・
自分の中でナニかが壊れていくのを感じながら・・・・・・・・

 














                                 その9に続く   

                              
                                





















今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa