ザ・グレート・展開予測ショー

橋姫伝説 その9


投稿者名:弥三郎
投稿日時:(03/ 3/18)

ルシオラ達が本部で騒いでいたころ、美神令子、小笠原エミ、六道冥子の3人と唐巣神父は
イギリスから派遣されてきたクリストファー・スタンレー(愛称クリス)とともに呪いの根源を探していた。

「美神君、見鬼君の反応は?」
「いいえ、何もないわ。スタンレーさん、そちらは?」
「クリスでいいですヨ。こちらは何も。」

今、4人は巨椋池跡の呪いの痕跡を調べているところだ。
橋姫が行った呪いは媒介するものを術者が常に持っていなければならず、その橋姫自身が術者であったため
4人は伏見の近くの所にあるのではないかと踏んで探しているのである。
この媒介物を壊せば呪いへの霊力供給を絶つことができるため必死になって探しているのだが、今はまだ冬。
田んぼのあぜ道や雑木林のところを歩かなければならないため、すぐに美神は文句を言い出した。

「ああ、寒い!!もうやってられないわ!!」
「美神君、そんな事言わないで。見つかればすぐに暖かいところに戻れるんだ。」
「そうよ、令子って、ホント我慢がないのね。」
「なによ色情魔!!いつもはあんただって文句言っているくせに!」
「今はなりふりかまってられないワケ!!わがまま言ってられる時期じゃないワケ!」
「令子ちゃん、エミちゃん、喧嘩は……」
「なに、私の言ってることがわがままだって言うの?冗談じゃないわ!!私は美神令子よ!!
 日本がどうなったって知ったこっちゃないわ!ただでさえ報酬が少な……」
「貴方は何を考えているんですか!!」

いつまでも言い争いをやめず、泣きそうになっていた冥子がぐずるのを一瞬で止め、おろおろしていた唐巣神父さえもびっくりし
あまつさえ、言い争っていた2人をびっくりさせるほどの大きな声を出したクリスが
無精髭が生えた顔を怒りで真っ赤にさせて美神に詰め寄ってきた。
折角のハンサムな顔が台無しである。

「貴方は国の危機のときに何を考えているんですか!!さっきから聞いていればよくもしゃあしゃあと
 自分の利益のことしか話さないで!!いいですか!!」

この後、小1時間クリスにたっぷり説教された美神はすっかり落ち込んでしまった。
説教の内容を要約してみると、

・個人主義のはき違い
・国のために犠牲になることについて
・愛国心を持つこと
・自分は女王陛下のためにどんな事でも犠牲になろうとかまわない

などとまぁ、内容が物凄く濃いこと。
唐巣神父から言わせれば

「美神君に対してあれほど説教する人は初めて見たよ」

だそうで。

ここまでクリスが説教したのは美神と言う人物をよく知らなかったという事実もある。
いろいろ何だかんだと言いながら最後までやりこなすのが美神令子である。
それを知らないクリスはただ、駄々をこねていると思ってしまったに違いない。

美神が相当落ち込んでしまったのを見てクリスはやりすぎたかな?と思ったが、我等が美神令子。
一筋縄ではいかない。
実はクリスに説教されて落ち込んだのではなく、あまりにも時間が長く、有無言わさず
マシンガンのごとく言われてたので辟易としていたのだ。
もちろん言われていたことは馬耳東風。
心身ともに完全に凹ませるにはCIAが推奨する尋問方法と旧KGBが行っていた精神拷問方法を組み合わせねばなるまい。
その上で学習させる。これしか今の美神令子を更生(笑)させる方法はないだろう。
説教が一段楽したところで4人は捜索を再開した。美神はクリスにうるさく言われてはたまらないと必死で探す。
一方のクリスは説教が効いたのかなとちょっとばかり後ろめたい気持ちで美神を見つめていた。
微妙な勘違いが成立していた。

それから30分後、美知恵から連絡が入る。

「唐巣先生、どうかしら?」
「いや、まだ見つからんよ。途中でちょっとね……」
「多分クリス君から令子に説教が入ったんでしょうけど。で、いい情報と、悪い情報が入ったわ。
 まず、悪いほうから。木津の自衛隊駐屯地が襲われて基地は全滅。装備はすべて盗まれたわ。
 いい情報はあと3時間で京都に援軍が到着するわ。」
「まずいな。木津は結構近いぞ。で、援軍というのはヨーロッパから?」
「そうよ、関空から特急で駆けつけてくれるそうよ。そちらは大丈夫かしら?」
「今のところ怪しいやつはいないけどね。」
「媒介を見つけたら破壊するか、持ち帰るかして早めに名阪高速の北に退避して頂戴。京滋バイパスはすでに破壊されたわ。」
「それも、悪い情報……いや、気にしないでくれ。わかった。そのようにする。」

そこで会話は終わり、唐巣神父は無線機を切った。

「さて、時間がないぞ!急げ!!」


数分後、見鬼君が反応した先には古い井戸があった。
どうやら中にあるようである。

「ここかしら?」
「さぁ、わからん。入って見ない限りにはなんとも。」
「私が入りまス。」
「クリス君!!」
「私ならこういった環境での作業になれていまス。命綱さえあれば大丈夫でス。」

クリスはロンドンのスコットランドヤード霊障課所属で、担当は地下での霊障対策である。
イマイチぱっとしないような仕事であるが、市民の足である地下鉄を守るため、案外重要な仕事でもある。
もちろんICPOもイギリスにあるが、管轄地域がロンドン市内ではスコットランドヤードである。
ICPOはロンドン郊外から全国にまたがる。住み分けである。


唐巣神父が井戸を覗き込んでいる。冥子の式神たちでロープをゆっくり下ろしている。

「大丈夫かぁ?」
「大丈夫でス。あ、ありました!!これです!!」

ようやく見つけたようであるが、

「唐巣せんせ〜い、怪しい人がいます〜」
「げ、敵だな。クリス君、破壊できるか?」
「すみません、手持ちの装備ではできません。」
「くそ!!クリス君、今引き上げるからそれを確保できるか?」
「すでにできてまス。」

引き上げさせようと冥子の方に向くとなんと、無線機を使っているではないか!!
今更でもあるが令子たちもそれに気が付いた。

「冥子、今すぐ無線機を切って!!」
「なんで〜?隊長さんに報告しないとだめなんじゃないの〜?」
「逆探知されて居場所わかっちゃう……遅かったわ。」

ヒュルルルルルルル……ドカーン!!

「迫撃砲だ!!クリス君、大丈夫か?!」
「ええ、なんとか。」
「物(ブツ)確認。よし、三十六計逃げるにしかず!!にげるぞ!」

そのとき、至近弾が炸裂した。

「どわぁ!!」
「ふ、ふ、ふ……」
「まさか、冥子ちゃん?」
「ふえぇぇぇぇぇぇぇーーーーーん!!!!!」

どかーん!!

「いったいこれは何ですか?!」
「六道君がよく起こす式神の暴走だよ。こういうときは伏せてほとぼりが冷めるのを待てばいい。」
「ああ、媒介物が!!壊された!!」
「むしろ好都合!!この調子で敵も殲滅させてくれたら儲けもん!!」
「神父、どのぐらい続くんですかね?」
「クリス君、それは神のみぞ知るだよ。」


数分後、敵も媒介物もご丁寧に壊してくれた式神たちの暴走はやっとこさ終わった。
焼け爛れた装甲車がひっくり返り、敵が死屍累々となってひくついている。

「見事……。偵察部隊だったようですね?」
「そうだね。敵に見つからないうちに戻ろう。」

そのころ美神とエミは

「………………」

逃げる途中に田んぼの側溝に落ちてしまったのだ。
幸い、ぬかるんだ泥に足を踏み入れただけですんだのだが。
この2人、今日はついてないようである。

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