ザ・グレート・展開予測ショー

憑依魔の復讐 〜 タイガーの成長


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(03/ 3/17)

間の悪い事も集まった連中の心を暗くしている。
最早かかりつけの医者である白井病院は改築休診中に加え、
カオスがいない。旅行中らしい。
因みに厄珍も買出しで外国へ出ているとなれば、
「知識も、道具も無い状態じゃないの」
俯きながら呟いた美智恵である。
「ママ・・」
おろおろするばかりの娘にしっかりしろといってやりたいでもないが、
自らも恐怖にとらわれているが故、娘のことをいえない母親である。
心配して集まった連中と言えば、
暴れまくる愛子、すすり泣く小鳩に、呆然としているピートに、
「・・・・」
妙に冷静であったタイガーである。
「で、ですノー」
鼻声であるのは花粉症にやられてるが故であろうか。
「ワッシは初めてみる悪魔なんじゃガ、普通はどうすればいいのですかイナ?」
唐巣に聞くと、鎮痛な面持ちを少し上げ、
「そうですね。普通は霊力を押さえ込んで餓死させるというのが通例です」
「じゃが、横島ハンは元々霊力を持ってるタイプじゃないからノー」
それに元が霊能力に関しては差ラブレットの美知恵が宿主であった事をかんがみれば、
「普通のチューブラー・ベルよりは、知識や行動は熟知してるでしょう」
ため息に似た言葉を吐く唐巣である。
「ほんとカイナ?」
「えっ?」
「・・実はさっきから、精神観応をしとるのじゃが、眠ったままかと・・」
「それは横島クンが寝てるからだわ。憑依者の睡眠には逆らえないの」
美知恵が説明する。それはつまり、寝ている間に横島を殺害すれば本体は消滅する、という事なのだ。
事実中世時代にはこの方法が存在し、
「かつてのヴァチカンでも・・専属の殺教師がおりましたが、私には出来ません」
唐巣が教会の暗部を漏らした。
「それに、今はいいかもしれません、二人が」
タマモとシロが微微ながら霊力を供給してる為、すぐには死なない保障はある。
「な、何がいいのよ!神父」
涙も拭わず食って掛かろうとする令子に身動き取れない唐巣であったが、
「お、落ち着いて、美神しゃん。神父さんを殴っても解決にはなりゃせんですノ!」
羽交い絞めにされると、弱弱しく力を抜いていく。
「・・わかってるわよ!」
半狂乱な美神につられてか、泣き出すオキヌちゃん。
「さっきの話からすると、横島はんが寝ている間は行動できない、ですノ?隊長」
「え、えぇそうね、そういうことだけど?」
「ならば、静かにしんしゃ・・いや駄目じゃったな」
毎度ながら、タイガーにもテレパシー能力がある。故人間の反応には敏感である。
『通訳してもらおうかい?ガタイのいい坊や』
直接脳に語りかけてきた。
「何がいいたいのジャ?」
左の手のひらを耳にあてている。知る人が見れば空気を使わぬ会話方をしているのだ。
『俺様は弱い存在よ。寄生ができねぇなら、死んじまう』
「で?」
『でだ、俺様一族はいつでもよりよい寄生主を探してる』
「ほぉ?」
『この横島っていうのか、いい奴じゃないか』
「おまはんに言われんでもみなしっとるわい」
この間、美知恵なり令子なりはどういう会話をしているのかは、感覚でしか判らないのが幸いであったか。
『馬鹿な奴等よ。霊気を浴びせればこの宿主は死なないが、俺の力は漲る』
「・・・・・」
「な、何を言ってるの?奴は?」
美知恵が恐々聞こうとするが、むっすと結んだタイガーの口からは何も漏れない。
『で・・だ。俺は宿主にいってやったのよ。もう一度元の美知恵か娘に取り付かせろってな』
「・・・悪魔」
この時ばかりは、あくまと口から漏れたタイガーである。
『ぎゃぎゃ。この横島はなぁ。死を覚悟、精神の死を覚悟してるのよぉ!』
「なんじゃと?よ、横島しゃんが??貴様・・」
今まで耳にあてていた左手が拳になる。
『最後に一言だとよ。聞いてやりな』
力を使い切った様相のタイガーが呟いた。
「よこしましゃんがおきるですノ」
「えっ?だ、大丈夫なの?彼は」
一瞬笑顔を見せた令子に背を向け、美知恵にだけ小声で話す。
「横島しゃんは、死を覚悟している、らしいですノ」
聞き終わるかどうかの前、美知恵の意識が遠のいた。
「私の・・所為で・・」
とだけ、聞き取り、あとはタイガーに身を任せる形になる。
そんな様子を見ていない令子は、周りにいる女の子達を跳ね除けるように。
「ね、ねぇ大丈夫なんでしょ?横島、横島君!」
うっすらと目をあけて、
「・・・・あぁ、美神・・・さん」
「な、何よ!今にも死にそうな声を出して、男の子なんでしょ?」
「えぇ・・男だからっす・・よ」
「・・判ったわよ、お風呂覗いたことも許してあげるか」
「はは。そうじゃないっす。ほれた女を守るのはとうぜ・・・んじゃないすか?」
「えっ?」
「詳しくはタイガーから聞いてくださいあいつが知ってます。で、ですね」
と、手を差し伸べてほしいという態度をとったようなので、右手を差し出すと。
「文殊?・・まさか横島クン・・なんのつもりで・・?」
ひっと、息を呑んだ。
「横島さん・・形見の・・?」
「やめてよ!」
どこからそんな大声が出るのか、涙も鼻水も一緒にという状態の大音声がこだました瞬間。
全員がバランスを崩した。いや落下しているのだ。
「なっ、なんで御座るか?」
「私飛べるのに、なんで?なんで?」
落下してる光景なぞ目に見えないが美知恵に神父だけは妙に覚えている。
かのサンシャインから落ちていく光景そのものであった。
『な。なんなんだぁ?』
一段下にいるのは仮面を被った男。ならばチューブラーベルの行動は決まっている。
というよりも取らされている。
生命を掛けた移動を開始した時、全員が重力の恩恵に預かっている。
「な、何事だったのですか?」
最初に息を取り戻したピートである。
全員つんのめっていると思いきやタイガーが左手を伸ばしている。
「精神観応をつかったのね?」
したたか腰を打って目が覚めた美知恵がタイガーに向かって剣を差し出している。
だが、
「アレ?」
本人もびっくりしている。
「わっしの左手に乗り移ったと同時に」
拳を握り締めるとぱらぱらとペンキがはげかかったような物が落ちる。
「しんどる・・」
危機がさればあとは横島の蘇生作業である。
その時、形見に貰った文殊を強引にでも飲ませるため、皆の見ている前で大胆な行動にでた美神令子については今回はどうでもいい。

後日、ICPOに呼ばれたタイガーであった。
「改めて御礼を言うわ。タイガー君」
先ずはふかぶかと頭を下げる美知恵に対し、そんな事はしないでと、身振りで示すタイガーである。
因みにつまらなそうにしている西条もわかぬでもない。
最近二人の仲が富にいいからだ。そんな男はほっといている美知恵である。
「つまり、私が意識を失ったとき、以前倒した方法を観応したのね?タイガー君」
「そうですノ。いちかばちかで、やってみたんジャよ」
で、一度自分の手に憑依させてから退治してもらうつもりが、
「どういうワケか、わっしの手が霊力を増幅させて」
風船が割れるような感覚があった後、空気を振動させない断末魔を感じたという。
「タイガー君、もしかして君、新しい能力が出たのかも!」
「新しい?能力」
「えぇ、霊能力者には珍しくないけど、体の一部が霊的な武器になるのよ」
簡単な例では魔理のスタイルになるのだが、
「でもそんな単純じゃないわね。おそらくは霊的存在を破壊しうる力ね」
証拠とばかりに、霊気の詰ったボールを軽く投げ左手で取ると、
「あっ」
音もなく壊れている。
「すごいわ!タイガー君、クラッシャー・ハンドなんてむこうでは言うわね」
特にキリスト世界では一年に一度手のひらに血がにじむ霊能力者がいるが、
そういう類であると説明する。
「そんなにすごい事なんですかノー?」
当然とせつめいする美知恵である。
今までは攻撃が出来なかったタイガーが攻撃が出来るようになったのだ。
かなりの前進である。
更にその後、コントロールの為妙神山に修行しに行き、その帰りに、
「貴方なら扱えるでしょう、元は悪党のものですが、ね」
と、小竜姫から拝領した武器はかつて邪蛇女が扱っていた三叉であったが、
次回の免許取得試験では運も手伝ったが、驚異的な速さで一位獲得していくが、
それも又未来に属する話である。
FIN

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa