ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌちゃんのハッピーベル


投稿者名:来栖川のえる
投稿日時:(03/ 3/13)


「横島さん、だいじょぶですか?」
私は開口一番にそう聞く。
「ん〜・・薬は飲んだんだけどねえ・・」
いつもはあんなにハッスルしている横島さんが、とてもつらそうです。
「じゃあ、私はお粥作ってきますんで、待っててくださいね」
と言って、私は台所に向かった。

今日は横島さんのお見舞いに来ています。
横島さんは、ただの風邪だから明日にも復帰するって言ってたんですけど、夏風邪はこじらせると大変だと言うし、横島さんろくな食生活送ってないみたいなので、仕事が終わって急いでお見舞いに来た所存であります。

「よ〜しっ!」
私は持ってきたエプロンを付けると、気合のガッツポーズをとります。
「・・ふふ♪」
なんかこうして料理を作っていると、ほんとの夫婦みたいでちょっとうれしいです。
―――すんでるところはちょっとボロいけど、こうやって横島さんのために毎日料理を作りながら、横島さんが帰ってくるのを待っている・・。はにゃ〜・・・ほんとにそんなことになったらいいのになぁ・・。でも横島さん、私のこの気持ちに、気づいてくれてるのかなぁ・・・。
横島さんと一緒にいて、横島さんの声を聞いて、顔を見ているだけで幸せいっぱいになれるくらい好きだってコト・・・。―――

・・・シロちゃんみたいにもっと大胆になれたら、この気持ち、伝えられるのかな・・・

「はい横島さん、おまちどうさま♪」
私はできたお粥とスプーンを持って、横島さんの布団のところまで持っていく。
「悪いね、おキヌちゃん」
そう言って横島さんは私からお粥を受け取ると、余程おなかがすいていたのか、いっぺんに口の中に頬張っちゃいました。
が・・
「あぢぃぃぃぃぃっ!!」
あまりに熱かったようで、思わず手に持っていたお粥を落としそうになるくらいダメージを受けています。

・・・もっと大胆に慣れたら・・・

「よ、横島さん!?」
私は緊張のあまり思わず声が裏返ってしまう私。。
「ん?」
「わ・・・私が食べさせてあげますね!」
私はそう言うと、横島さんの持っていたお粥を強引にもらいます。
「え・・えぇ!?」
私は横島さんの驚きの声を聞きながら、スプーンにお粥をすくって、ふぅーっ、ふぅーっ、と冷まします。
「はい、あ〜ん」
そう言って私は横島さんの顔の前にそれを持っていきます。

・・・・ドキドキドキドキドキ・・・・

ぱくっ

横島さんは、ちょっと迷ったやうな顔をしてから、私の差し出したお粥を口にしました。

もぐもぐ・・
「ん、やっぱりおキヌちゃんは何作ってもおいしいね」
と、私にそっと微笑んでくれました。

きゅん!

くぅぅぅ。私の胸はドキドキドキドキ、横島さんに聞こえちゃいそうなほど脈打ってます。
多少ベタな展開だろうと、横島さんのこの笑顔が見れて幸せ〜・・。
毎日一生懸命作ってた料理もおいしいって言ってくれて・・・やっぱり優しいな、横島さん。
・・ほんとにこの人のためなら、毎日料理を作ってもいいって思えるくらい・・・きゃ♪

「ごちそうさま」
横島さんは食べ終わって器を布団のとなりにおくと、神妙な顔をして私を見つめてきます。
「え・・?なんですか?顔に何かついてます?」
「いや・・・そういうわけじゃないんだけど・・」
横島さんは二、三秒考えた後にこう言いました。
「んん・・。いや、おキヌちゃんは迷惑じゃないかなあ、って・・・」
「へ?何がです?」
横島さんの口から予想もしなかった言葉が飛び出てきて、思わず聞き返します。
「なんか俺が風邪ひくたびに家に食事つくりに来てくれるし、さらには俺が栄養偏ってるから、ってなんにもないときにまで来てもらっちゃってさあ・・。いや、俺としては心のなかで小躍りするほどうれしいんだが、おキヌちゃん無理してないかなあってねえ・・。やっぱ男一人で住んでるこんな汚い部屋好き好んできてるとは思えんし・・。迷惑なんじゃないのかなあ?と思って・・」
そう言って横島さんは恥ずかしそうにポリポリと頭をかきます。
「そ・・・そそそそ、そんなことっ・・!」

・・・・みんなにあって私にないもの。それが大胆さ。美神さんは奥手だけど、ちゃんとキメるところはキメてるし・・。ルシオラさんだってあんなに積極的だったし・・。
ずっと、好きだった。幽霊だった頃から。ほんとにどうしようもなく好きになっちゃったのは、人間になってからだけど。
想いは、言葉にして伝えなきゃきっと伝わらない。みんながモーションかけてる時に自分だけ後ろで指、くわえてちゃきっとダメ。
幽霊の時出会って、それからずっと一緒にいて・・。
山々の麓の桜たちが薄桃色の花を咲かせ、あたり一面ほのかな香りがただよう春も。
木々の緑が強くなり、生命の強さを感じさせる夏も。。
夕陽に染まったかと思うくらいきれいに色づいた紅葉が燃え上がる秋も。
汚れを感じさせない、真っ白な雪の結晶が舞い降りる冬も。
ずっと、ずぅ〜っと一緒にいて、その優しさに触れてきた私。
・・気持ちなら、誰にも負けない自信がある。私に「生」を与えてくれたこの心優しい青年への気持ちは・・・

「そ、そんなこと、ありませんよ」
「そう?ならいいんだけど・・・」
「だ・・だだだって・・・」
そういって深呼吸する。

ドクン・ドクン・ドクン・ドクン・・・・

さっきよりもさらに早く心臓の鼓動が聞こえる。破裂しそうなくらい。

「だって私、・・・・今、とっても・・・・

        幸せなんです・・・」
そう言って横島さんのちょっと熱っぽい手を両手で包み込む。そして――――


                「好きです、横島さん・・」




・・多分、ずっと、言いたかった言葉・・










―――この子の可愛さ限りない。

山では木の数萱の数。

星の数よりまた可愛、

ねんねやねんねやおねんねや――――――――






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