ザ・グレート・展開予測ショー

或る日の情景


投稿者名:逢川 桐至
投稿日時:(03/ 3/12)




 ん、なんだ?

「どうしたの、ヨコシマ?」

 いやなんか聞こえないか?

「そう言えば…」

 タマモと二人、思わず耳を澄ます。

「………………ぇ」

 街中の喧騒に紛れて、確かに何か聞こえて来る。

 なんか聞き覚えのある様な…

「ヨコシマも?」

 と、何かの弾みか、一瞬の静寂。


「…………横島先生ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


 ずるっ

「なんだ、シロじゃない」

 あいつ、明後日まで里に居続けだったんじゃなかったっけか?

「そんな風に聞いた様な気もするけど」


 バタンッ!!!


「すぇんすえぇぇぇぇ!!!!!」


 おぅわぁぁっ?!

「やっぱり、馬鹿犬だったわね」

 押し倒されて打ったケツが痛い。

 おいシロ、いい加減重いからどけって、おい…

 だが、諸手刈りの様に脚にしがみ付いたまま、シロはぴくりともしない。

 こ、こいつ…

「どうしたの?」

 寝てやがる。

 押し倒されて腰を着いた状態の、俺の太股辺りに頭を乗せて、シロは見事に熟睡していた。

 ったく、しょーがねぇなぁ…

「ふふっ」

 なんだよ?

「ヨコシマってさ、優しいよね」

 な、何を急に。

 タマモは答える様に、俺の右手を見る。
 長い髪を軽く梳く様にして、ゆっくりとシロの頭を撫ぜている右手を。

 そ、その、なんだ。 これはだなぁ…

「私はウンと甘えられたから、怒ってなんかないわよ」

 なんで俺が怒られにゃ…

「まる二日、一つ床で身を寄せ合ったのに、そんな事言うの…」

 四つん這いで、にじり寄るタマモに気圧される。

 そ、それはだなぁ…

「それは…?」

 だぁぁ! そんな潤んだ目で、上目遣いで俺を見んといてぇ…

 わ、悪かった。 俺が悪かったから。

「そうよね、ヨコシマが全面的に悪いわよね」

 なんで、こんな事に…

「そんな…
 あんなに熱く燃え上がったのに。 あれは……あの夜はウソだったって言うの?」

 タマモ、昼メロかなんかの見過ぎ。

 そう言う人聞きの悪い事はだなぁ…

「したじゃない」

 あぅち… いや、それはそうなんだけど。

 手厚い看護と、変わらぬ下着姿とに、つい行くトコまで行ってしまったのだ。

 だって、こいつのヒーリングって『舐める』なんだぞ?
 全身、満遍無く傷だらけになってた訳で… その、なんつぅか… 体の隅々まで、余すトコ無く舐め回されちゃったのだ。
 それも、うっすらと肌が透けて見える、レースの下着だけの美少女に。

 男なら、こう、辛抱堪ら〜ん、な状況だろう、なぁ?
 そこへ持って来て、ヒーリングの効果か、どうにもこうにも妙に漲ってたし…

 何も盛られなかったよなぁ、俺…?

「それに、さ」

 …なんでしょうか。

 ジト目で再び、視線が向かう。

「こんな話してても、撫ぜるの止めないじゃない」

 あぅ…
 それはですねぇ。

 何と言うか、無防備に眠っている安心しきった横顔が、なんとも言えず可愛いらしくて手が止まらんのだ。
 起きてる時は、そこらの悪ガキとさして変わらんのだが。 それに、こうしがみつかれていると、こいつ結構胸が有ってだな…

「ま、いいけどね。
 にしても、完全に熟睡してるわね、この馬鹿犬」

 そうだな。

「…犬じゃないでござ…むにゃ」

 それでも『犬』と呼ばれると反応するのか…

「よっぽど疲れてるって事よね、かなり汗臭いし。
 この分だとシロの事だから、里からここまで脇目も振らず走ってきたんじゃない?」

 んなバカな… いや、シロなら有り得るか。

 でも、なんでだ?

「私がここに居着いちゃったって、聞かされでもしたんじゃないの?」

 あっさりと想像出来る状況に、思わず冷たい汗が流れた。

「で、どうすんの?」

 何がだよ?

「私はあんたと離れる気は無いし、でもそれだと、シロもここに住むって言い出すんじゃない?」

 …ああ?!
 ……どうすっか。

「ヨコシマの好きにすれば?
 どうせ断れる筈無いんだし」

 しょうがないとばかりに肩を竦めて、タマモは苦笑した。

 でも、おまえはいいのか?

 何と言うか、責任的な物を考えてしまうと、タマモの意向を無視する訳にはいかない訳で…

「狐ってのはねぇ、その辺、結構アバウトなのよ。 おんなじ巣穴に複数の母親ってのも、別に珍しい事じゃないし。
 私の事をちゃんと見ててくれれば、それ以上文句は言わないわ。 あんたから離れる気は、さっきも言ったけど無いわよ。 けど、雁字搦めに束縛する気も無いのよ」

 えっと、それは…

「私の事、好き?」

 えっ? あ、あぁ。

「じゃ、愛してる?」

 嫌いな女を置いたりしないってぇの。

「ちゃんと言葉にして」

 その… なんだ。
 だから、その潤んだ目は勘弁して下さい。


 だぁぁぁ、もう! 愛してるよ!!


「なら、いいわ」

 この場の勢いも有るし、先に既成事実が出来ちゃった事もある。
 けど、この気持ちは偽りじゃない。 …と、思う。

「シロも多分、あんたの事をそう見てる。
 それを無闇に拒絶する気は無いのよ、私は」

 こいつがねぇ…?

 何故だか緩んでる頬を、指先で突いてみる。

「ぅぅん、むにゃ…せんせぇ…」

 まだ、充分以上にガキだと思うけどなぁ?
 まぁいいか…

「それとね」

 あん?

「説明はヨコシマに任せるから」

 説明…? 何を誰…に……
 あっ?!!

「私もそうだけど、シロもここに居着くとなったら、また殴り込みに来ると思うわよ?」

 そ… それは確かに。
 おまえらの保護者って、結局、美神さんだもんな…

「…はぁ。 あんたって…
 ま、いいわ。 とにかく頑張ってね。 終わった後の、ヒーリングはちゃんとしてあげるから」

 ハ… ハハハ…

 これから確実に訪れる地獄に、胸の中で冷たい氷雪の嵐が吹き荒れる。



 俺、保つかな…?

 ………………………………色んな意味で。



 【おわる】



────────────────────



……ぽすとすくりぷつ……

 …何と言うか。
 これが、シロ・りべんぢとして続きを書いていた筈の代物、だったりするのだ… 冒頭部分は、その名残な訳だ、これが。
 何がどうして、こうなったのやら?(苦笑)
 電波任せな執筆姿勢がマヅイのか、タマモが出ずっぱり。 逆にシロのセリフほとんど無し。

 おぉ、あいかわよ。 萌えにまけてしまうとは、なにごとだ(爆)


 …突発的に書くとこの程度だな、やっぱり(泣) って事で、シロな方々、ごめんなさい。

 そんな春、あたりなら問題無さそうだと踏んだので、軽く加工してりふぁいん。 タマモがアレなのは、私がコワレてるからですね、はぁ…(^^;

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