ザ・グレート・展開予測ショー

as time goes by


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 3/11)






忘れたくない女性(ヒト)がいる。
忘れさせる女性(キミ)がいる。

妹として予防線を張る俺は、卑怯なのだろうか?







―――― as time goes by ――――







「泣いてるのかと思いました」


東京タワー。展望室のさらに上。それは丁度夕暮れ時で。今は無き幻影を追う。強い風に吹かれながら。傾く夕日に照らされながら。


「あれから随分経ったんだ。今更泣かないよ」

「命日なのに?」

「今日はただの日曜日さ」

「説得力………ありませんよ?」

「かも知れないな」


彼女にとって。蛍の幻影は強大過ぎて。儚い光が眩しすぎて。彼女の想いすら弾くほどに。


「いつもそうやってはぐらかす………」


むぅ。
ほっぺを膨らます彼女。横顔を夕日が照らす。

――――既視感

いつか見た光景。あの女性(ヒト)と彼女がダブる。重なる。上書きする。またひとつ………曖昧になる。


「もう4年か………」

「ええ、もう4年です」


がむしゃらに走り抜けたあの頃。今となっては良い思い出。辛かったはずなのに。良い思い出。
そう、思い出なのだ。


彼女にとっても。彼にとっても。


4年の月日は人を変える。
彼は一人前として認められた。
彼女はめっきり女らしくなった。

――――違うな。俺が彼女に女を感じるようになったんだ。

彼女の美しい横顔を眺めながら。彼女のささやかな胸の膨らみを意識して。自分が緊張していることを知る。
風が変わる。彼女が風上になる。彼女の甘い香りが。また彼女の女を意識させる。

――――香水………か。


「もうすぐ日が落ちる。こんな時間にこんな場所で男と二人っきり。身の危険………感じないの?」

「良いですよ?責任取ってくれるなら」

「………結構、ロマンチックな状況だろ?」

「そうですね。斜陽って言うんですか?凄く綺麗です」

言いながら彼女は腰を下ろす。器用にスカートを膝裏に挟み込んで。彼はぼんやりとその様を眺める。“あの”彼女と“目の前”の彼女の同じ仕草をぼんやり眺める。


「でもいつか忘れるんだ………」

「忘れません」

「俺はきっと忘れる」

「私はきっと覚えてます」

「現に俺は忘れかけてる」

「でも貴方は忘れまいとしてる」

「アイツの顔がぼやけて来てる」

「それは恐怖ですか?」

「恐怖だな」

「それは嫌悪ですか?」

「嫌悪だな」

「それは愛情でしたか?」

「………………」

「それは初恋でしたか?」

「………………」

「私は今、恋をしています」

「それは多分、素敵なことだよ」

「これは初恋です」

「……実ると良いな」

「私は今、貴方と二人っきりです」

「それは多分……危ないことだよ」

「貴方は今、幸せですか?」

「どうだろうな。不幸せ……なんて思えなくなった」

「それは不満ですか?」

「不幸せだと思えないことは幸せなんだろうと思う。でも俺は不満だ。不満に感じてると思う」

「貴方は今後、恋をする予定はありますか?」

「いつか……新しい恋をしたいと思ってる自分がいるよ」

「その言葉だけで満足します。今のところは」

「………そうしてくれると助かる」


彼は彼女の気持ちを知っていて。彼女はそのことを知っていて。

彼は答えを出そうとしない。彼女も答えを求めてはいない。



――――いつか彼女を忘れるまで。


――――いつか彼が忘れるまで。




時の流れに身を任せ。全ては流れのそのままに。自然に落ち着くその日まで。

二人の距離は………。





































「ところで………どうやってここへ?」

彼女はにこりと笑いながら。口元に人差し指を当てて。ウインク一つ彼に向ける。

「それは乙女の秘密です♪」







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