ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌの昔話(終)


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(03/ 3/10)



これはおキヌが語る、雪乃丞の前世のお話である。



「あ〜〜…死ぬかと思った…くそっちょっと食いモンを盗んだ位でこれはやりすぎだろ…」

雪正さんは文句をいいながらも、割とあっさり立ち上がりました。

それで私、つい声を掛けちゃったんですよ。

「大丈夫ですか〜?」って。

そうしたら雪正さん、こっちを見て返事をしたんです!

「まぁな……って、アンタ誰だ?」

雪正さん、頭を強く打ったせいで私の姿が見えるように…つまり、霊能力に目覚めたんです!

でも私って死んでた時って基本的に空中に浮いてたじゃないですか。それで聞いてみたんです。

「怖くないんですか?」って。

そうしたら……こう言いました……



「ああ、母上に似ているから……で、アンタ誰だ?」



あの時は分かりませんでしたが…前世でもアレだったんですね…

それで、私自分の事を話したんです。死んでから初めてだったんで嬉しかったです!

周りで遠くから「やっぱり打ち所が悪かったんじゃ…」「お前声掛けて来いよ…」とか聞こえてましたが、それが気にならないぐらいに!

でも今考えてみると、私の姿って雪正さんにしか見えてないんで、他の人には雪正さんが一人でブツブツ言ってるようにしか見えなかったんでしょうね…

まぁ、それは置いて置いてですね、私は自分の事を話したんです。

「私キヌっていいます…昔、山が危険な状態になった時に人柱になったんです。で、一応この辺りの神様になったんですけど…私才能無いみたいで何も出来なくって…」って…

雪正さんは何でもない事みたいに聞き流して

「そうか…さっき、庇ってくれた声はアンタだよな?ありがとよ」

って言ってくれました。氷室神社の息子なのに、私の事をさっぱり気付いてなかったみたいです。

でも私も神様として何も出来ないんで、その方がいいかなって思って話を別の方に振ったんです。

「どうして食べ物を盗んだりしたんです?」

そうしたら、これもあっさり答えてくれました。

「この村を出ようと思ってよ。旅に出るならやっぱり食い物か金がいるだろ?」

「ええ?出て行っちゃうんですかぁ!?」

私は驚いて聞き返しました。だって、初めて出来たお話しできる人だったんですよ?

でも、雪正さんは胸を張ってこう言いました。

「ああ。こんなシケた村で一生暮らすなんてゴメンだ!オレはもっと何か大きな事がしたいんだ!」

これが戦国時代とかならまだ解りますよ?でも、当時は確か元禄の頃…すでに肩までドップリ江戸時代です。太平の世の中、なんて言われてたのに…

そんな珍しい理由で友達になれるかもしれない人を無くすのはイヤだったんで、私、ちょっとした提案をしたんです。

「しばらく一緒に修行しませんか?」って。

だって、何か大きな事をするって言うんで「ええっと…具体的にはどうするんですか?」って聞いたら…

「おう!取り合えず江戸に行ってそれからだ!それから考える!」

って行き倒れ確定な事を言うんですよ?だから提案したんです。

「何の当ても無いんなら…しばらく一緒に修行しませんか?せっかく霊力に目覚めたんですし…」って。

でも、断られちゃいました。



「修行って…何をやるんだ?」

「ええっと…地脈の流れを感じてそれを操ったり、自分の物にしたり…」

「それってアンタの、ってーか神様の修行じゃねぇの?」

ギク

「そ、そうとも言いますね…」

「ひょっとして…神様の役をオレに押し付けて自分は成仏しようとか考えてねーか?」

ギクギク

「…そ、そんな事考えてませんよー」

「…考えてたんだな?」

「……ちょっとだけ」

「………………」



っていうやり取りがあっての事なんですけどね。まぁ、250年前の事なんで…もう時効ですよね?…あ、あはは…

コホン

それで雪正さんは自分が霊力に目覚めたってのを自覚して、それでも私と修行する事を断りました。

「霊力を鍛えるってのは悪かねぇ。せっかく手に入った力なんだからな…せいぜい活用するさ。だが、俺は自力でやるのが好みでな!じゃ、オレは行くぜ!アンタも頑張れよ!」

そう言って、そのまま旅立っちゃいました。

「ええ?行っちゃうんですか?」って聞いたら…

「おう!何せ家の方に書き置き残してきちまったんでな!カッコ悪くて戻れねぇんだ!じゃな!」

そう言ってシュタっと片手を上げて…そのまま行っちゃったんです。

それっきり、雪正さんの事は見た事も、話に聞いた事もありませんでした…





「ふ〜ん、そんな事がねぇ…」

美神がそう呟き、他の事務所メンバーも人の不思議な縁に感心する。

「しっかし、その後どーしたんだろうなぁ?ソイツ」

当然の疑問を口にする横島。

「多分、行き倒れてるんじゃないの?」

「拙者は犯罪者かヤクザになったと思うでござる」

実も蓋もない意見を述べるシロタマ。

「お前らなぁ…」

「否定できるのか?」

「………チッ」

一応文句を言うが、深くツッコまれると自分でも否定できない雪乃丞。



しかし、彼らは知らなかった。

後に雪正が江戸で由比正雪と名乗り、何百人と浪人を集めて幕府に反乱を起そうとした事を…その反乱がきっかけとなり、幕府が武断政治から文治政治へとその政策を転換した事を…

雪乃助は確かに大きな事をしたのだ……



しかし、それはあくまで前世の話である。

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