ザ・グレート・展開予測ショー

KINKIステーション悪霊事件 ―4―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 3/10)

突然現れた悪霊を横島が祓うも、撮影スタジオの出入り口は、異次元空間への扉になっていた。
どうやらスタジオごと異次元に閉じ込められてしまったらしい。
これは明らかに雑魚霊ごときに出来る芸当ではなく、横島は裏に何者かがいると推測する。
そんな中、新たに3体の悪霊が現れ、出演者達を襲おうとしたのだ。
今度も横島の活躍で事無きを得たのだが・・・・・・
横島は、さっきまで全く気配を感じなかった霊が突然現れた事に疑問を抱く。

―― 霊を操ってる犯人はこの中にいるんじゃないのか? ――

・・・・・・・・・・・・










駄目だ!
俺がどんなに目を凝らしたって、これだけの人数の中から犯人を見つける事なんて出来ないぞ。
どうする?1人1人調べていくか?
いや・・・それで本当に見つけられる保障も無い。だいたい、本当にこの中にいるのかどうかだって分からないんだ
そうだよ。もしかしたらこの空間の外から遠隔で霊を送り込んでいるのかも知れない。
確か離れた場所を映し出す水晶とかもあるんだ。こっちの様子は外からでも伺える。

―― くそ! ――

ひとまずこの中から犯人を探し出すってのは却下だ。
そもそも俺が考えた所でいい考えなんか出てこないぞ!

「お、おい横っち?これからどうすれば良いんや?ここから出られるんかいな?」

銀ちゃんが不安そうに、でもそれを客に悟らせないようにヒソヒソと話し掛けてきた。
まてよ?これからどうすれば良いのか?
そうだよ。これからどうすれば良いのかは決まってる。

「そうだよ銀ちゃん。ここから出なきゃいけないよな。」
「は?な、何言っているんや?そんなん当たり前やんか?」

俺はすっかり忘れていたみたいだ。犯人にばかり気を取られていたせいだな。
犯人を捕まえる前に、ここから出る方法を考えた方が良い。

「さて、どうやって出れば良いだろう?」
「って、オイ!横っち!?」
「まぁ、落ち着けって。多分出る事は出来るぞ。」

異次元と繋がっているっていう事は、何らかの方法で空間が歪められているって事だ。
言ってみれば歪な状態な訳で、そこでは空間の復元力っていうものが発生しているはず。
特に今回は人工的に行っていると推測されるんだから、何らかの方法で戻ろうとする空間を押しとどめているはずなんだ。
となれば・・・

1.空間を歪ませている力を減少させる。
2.空間が戻ろうとする力を増幅してやる。
3.空間移動で脱出。

このどれかでいけるだろう。
1の場合、術の効力を無効化させればいいって事だろ?文珠で術の無効化をイメージしながら「無」の文珠を作れば上手く行くんじゃなかろうか?
2の場合は空間の復元だから・・・空間を直すイメージで「直」の文珠を作れば良いだろうな。
3だと・・・・・・果たして文珠で瞬間移動みたいな事出来るのか?あ、いや・・・そういえば未来の俺が時間移動してたよな。
ってことは空間移動だって無理じゃ無いはずだ。今回は次元も超えなきゃいけないけど、それくらいおまけでなんとかなるよな?

「あ・・・」

そうすると、この空間に他の人を残していかなきゃいけなくなるんだ。
そもそも全員を移動させるとしても文珠が圧倒的に足りない。
1年前に比べたら随分たくさんの文殊を生成出来るようになったけど、流石に100人以上の人間を瞬間移動させるなんて不可能だろう。
自分が外に出て後からなんとかするにしても、その間にさっきみたいに悪霊で襲われる可能性が高いだろうし・・・

「やっぱり、この空間を何とかするのが先だな。」

3は除外だな。
となると1か2だけど・・・どっちでも良い気がするな。
文珠っていうのは、珠に浮き上がる文字以上に生成する時のイメージが重要だ。
ただ漢字をイメージしただけじゃ十分な効果は発揮しない。そこに込めるイメージの方が優先される。
逆に言えば、イメージさえ強く鮮明に出来るなら、非常に柔軟な力を発揮する万能の技なのだ。
今回は術の邪魔をするって言う点で1も2も同じなんだから、どっちの方法を使っても大丈夫だろう。

「良し・・・・・・銀ちゃん。スタッフにスタジオの客を扉の前に並ぶように指示してくれるか?」
「お、なんか良いアイデアが浮かんだんか?」

俺は銀ちゃんに考えを説明する。

「ほー・・・良くは分からんのだけど、とにかくここからは出られるんやな?」
「多分。勿論絶対に成功するだなんて言えないけど、成功率は悪くないはずだ。」

文珠っていうのが万能と同士に強力な武器だということを、俺はアメリカにいた1年間にかなり理解する事が出来た。
文珠の研究ではいろんなパターンに併せて文珠を使用したのだが、殆どどんな術にぶつけても、瞬間的な霊力という点では圧倒的に文珠が上を行っていたのである。

「分かった。早速話すわ。」
「頼んだぜ、銀ちゃん。」
「そらこっちの台詞や。頼んだで横っち!ここは横っちが頼みなんやからな。」

そうだ。
ここで便りにされているのは俺なんだ。
俺がしっかりしないとここにいる人たちは助からないかもしれない・・・
そう思うと足が竦む。
ここ1ヶ月くらいはこんな思いが頻繁にあった。美神さんが重要な仕事を俺だけに任せてくれるようになったからである。
昔は失敗しても責任を負ってくれる美神さんがいたけど、今は俺が自分で負わなければいけない。
前は命が惜しくて足が竦んでいたけど、今では信頼を裏切ってしまう事が怖くて足が竦む・・・

―― でも ――

わりと頻繁に失敗しつつも、何とかかんとかこなして行くうちに、自身みたいなものが付いて来たんだ。
今回だって大丈夫。きっとやれる。自分を信じろ!

「・・・・・・ぷっ・・・」

昔は、それがこの世で最も信用できない物だなんて言った事もあったっけな。
俺も成長したじゃないか・・・

「横っち、言ってきたで!今誘導してもらってる。」
「おう。サンキュー銀ちゃん。じゃあ一丁やってみるか。」

―― パン ――

「良し!」

俺は頬を叩いて気合を入れた。
イメージ・・・歪んだ空間を修復して、歪めている力を邪魔するイメージ。

『直』

直れ!直れ!直れ!
俺はそれだけをイメージして異次元へと繋がる扉に投げつける。強くイメージする事が文珠をより良く使う為の条件なのだ。
次元の境目に固定された文珠は、バチバチと電撃のような霊気を発生させて歪んだ空間を修復しようとする。
そんな状態が少しだけ起こった後・・・

―― ブォン ――

「良し、開いた!」

さっきまでグニャグニャになっていた風景が、文珠を避けるように円形に広がっていく。
その先には、テレビ局の廊下が見えた。

―― ちっ! ――

完全に繋げる事が出来なかった。まだ術の効力の方が大きい。

「さあ、ここから順番に外へ出るんだ!大丈夫だから、ゆっくりと慌てずに出るんだ!」

先頭にいたスタッフと、その後ろに並ぶ一般客に言う。
本当は文珠の効力が消える前に一刻も早く出て欲しいが、パニックになるのは困りものだ。
まあ、最悪の場合はもう一度文珠で穴を開ければ良いんだからな。
そろそろ本当に霊力が足りなくなってきたけど、根性出せばなんとかなるだろ。

「はい、落ち着いて!」
「ゆっくりと、慌てずに進んでください!」

スタッフの誘導にしたがって、一般客が順番に外に出て行く。その間中、俺は再び閉じようとしている次元を繋ぐ穴を霊力で押しとどめていた。
う・・・ボチボチ文珠が持たないかも知れん・・・
でも、一般客はあとちょっと。それが終わったら残りのスタッフと出演者だけだ。
なんとか持たせる!

「大丈夫ですか?」

ようやく最後の一般客にさしかかった所で、その最後の客から声を掛けられた。
何処にでもいるような30〜35歳くらいのおっさんである。
心配されるのも無理も無い。俺は汗だくで霊力を放出し続けているのだ。周りの人間にはとても大丈夫には見えない顔をしている事だろう。
とはいえ弱音を吐くわけにも行かん。

「はぁ・・ええ。なんとかね。あんたも早く脱出するんだ。」
「有り難うございます。」

そう言っておっさんは頭を下げて・・・

―― !? ――

その瞬間、さっきまで感じていた以上の悪寒が俺の背中を突き抜ける。

『ぎりいいいいやああっ!!』
「ぐあっ!!」

痛ぇ!!

「横っち!?」
「きゃああああああっ!!」

悪霊か?くっ!わき腹を・・・
不意打ちだった。頭を下げたおっちゃんの体の死角から、悪霊が飛び出してきのである。
俺は咄嗟に体を捻ったが、完全には避けきれずにわき腹を引き裂かれてしまった。

「横っち!!」
「大丈夫だ、銀ちゃん!かすっただけだから!それよりこっちに来るんじゃない!下がってろ!」

咄嗟に駆け寄ってきそうになった銀ちゃんに怒鳴る。
痛ぇな・・・もしかして結構深いかも知れん・・・
霊力を傷口に集中するイメージでこれ以上の出血を止める。とはいえ傷が塞がる訳ではなく、あくまで応急処置だ。
文珠で直したいが、今後を考えてなるべく無駄にはしたくない。
次元の壁に開けた穴も塞がっちまったし・・・

「よく避けたな。直撃出来ると思ったのに。」

目の前のおっさんが笑いながら言ってきた。

「あんたが今回の犯人かい?」

俺は痛みを無視しながら平静を装って聞き返す。

「まあな。」
「何故こんな事をする?」

時間を稼ぐんだ。少しでも。体力と霊力を回復して、あとはコイツの情報も仕入れる。
俺は美神さんに習った戦闘のいろはを不器用でも実践していく。

「商売だからな。頼まれればやるさ。」
「誰に頼まれた?目的は何なんだい?」
「答える義理はないだろ?」

う!結構、雰囲気あるじゃねえか・・・強そうだぞ。

―― でも! ――

俺の後ろには銀ちゃん他、20人くらいの人間がいるんだ!
負けるわけにはいかん!
大丈夫、俺はアシュタロスだって出し抜いた!こんな奴には負けん!
自信だ!
俺は出来る!俺は出来る!俺は出来る!俺は出来る・・・

「なら、倒してから聞くさ。」
「ふん、出来るならやってみろ。」

そう言って、俺はバックステップで距離を取る。
おっさんはニヤリと笑って懐から「符」を取り出した。

「道士か・・・」

相手誰だろうと・・・・・・



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