ザ・グレート・展開予測ショー

ハンター4


投稿者名:運値
投稿日時:(03/ 3/ 8)

次の日。六道女学院の理事長室に、横島とおキヌを除いた(学校のため)美神除霊事務所の面々が呼ばれていた。
「…と言うわけで、犯人を探して欲しいんです」
「警察に任せたら?」
美神は理事長の頼みをにべも無く断る。
「大体、貴方の学生の靴下が大量に無くなろうが私には関係無いじゃない」

美神はげんなりとした顔で言う。実際、朝早くに電話で呼び出され低血圧で辛い上に、依頼の内容が除霊でなく、
お門違いの靴下強奪犯を探して欲しいと言うものでは、流石にムッとくる。

「でも〜、警察のお世話になると、この学院の評判が…ね?」
「まあ、確かに世間体は大事だけど…」
「だから〜、この学院で内々に処理して、犯人には然るべき呪いをかけようかと〜」

理事長がしれっとした顔でえげつないことを言う。

「それに、令子ちゃんの事務所なら、丁度良い人材が二人もいるじゃない〜〜」
「まあ、それは確かに…」

そう言って、後ろにいるタマモとシロを見る。彼女達なら、その嗅覚で犯人の足取りを追うことも可能だろう。
美神の頭の中で、算盤がはじかれる。そう、何も自分が捜査する必要は無い。この二人に後をまかせて上前だけはねれば…。

(働かざるもの食うべからずって昔から言うしね)

美神の心は決まった。

「報酬、しっかり頂くわよ」
「ありがとう〜、令子ちゃん!」



理事長室を出て、校門の前に着くと美神はタマモとシロに後を任せてさっさと帰っていった。
ぽつんと、女子高の前に取り残される二人。

「仕事をするのはかまわないでござるが、なんでこいつと…」
「あら、奇遇ね。私もそう思っていたわ」

シロは不機嫌さを思い切り顔に出し、それに対照的にタマモは表面上はしれっとした顔で言う。

「言ったな、女狐!!!拙者は一人でやる!!!」
「勝手にすれば良いわ。まあ、犬に頭を使うことなんて出来ないと思うけど」
「拙者は狼だ!!!」




場の空気が険悪なものに変わり、独特の緊張感が二人の間に発生する。周りにいる生徒達も二人
を出来るだけ見ない様にしている。

「こうなれば、どちらが先に犯人を捕らえられるか勝負でござる!!」
「いいわ。唯の勝負じゃつまらないから負けた方が勝ったほうの言うことを一つ聞くなんてどう?」
「ああ、拙者に異存はない」
「ふふ、吠え面をかかせてあげるわ」
「それは拙者の台詞でござる」



そして、二人(匹?)は別々の方向に歩き出した。



《シロサイド》


シロはまず犯行現場に来た。遠方から通う生徒の為に用意されている六道女学院の寮。既に授業が始
まっていることもあり人影は疎らだ。

「まだ、タマモの奴は来てないようでござるな」

シロは一通り中を見て言う。寮は小奇麗な建物で、洗濯物は各々の部屋にかけてあるのではなく、屋
上の物干しにかけてあるようだ。しかし、犯人は、その洗いたての靴下は歯牙にもかけず、洗濯前の
物を狙っている。(これは、洗う前に一箇所に集められて、最低学年の生徒が交代して洗濯している)

とりあえず、その洗濯物の集積場所に来ると何とも言えない汗臭い匂いがする。男ならば悦ぶかもしれ
ないそれも、常人の数十倍の嗅覚を有する人狼には悪臭以外の何物でもない。タマモがここに来なかっ
た理由ももしかしたらこれにあるかもしれない。

(くう〜〜〜、我慢でござる!!!)

意を決して悪臭の中、犯人と思しき臭いを嗅ぎ分ける。嗅ぐこと数分、朦朧とした意識の中で良く知っ
た臭いが鼻腔の網にかかった。それは、もしかしたらシロにしか分らないような、本当に微妙な臭いで
あった。

「こ、この臭いはまさか…」

一人の男の姿が脳裏に浮かぶ。それは最愛の師匠の物であった。だからこそ、シロには分った訳である
が…。
この時、シロの中に天使と悪魔が現れ囁いた。

『さあ、犯人は分ったでござる。美神殿に報告を』
『何を言っている!!!これをネタに先生に散歩の回数を増やしてもらうでござるよ』
『強請るような真似は武士の名折れ』
『寝言は寝て言うで御座る。お前も本当はもっと散歩に行きたいのでござろう?』
『それはそうでござるが…』
『なら良いではないか』
『それもそうでござるな。それに、言いつければ先生に報復の呪いが襲いかかるでござるし、それを救
う為にもしょうがないでござるな。昔から清濁併せ呑むと言うでござるし…』
『…いや、そこまで言わないけども』
『タマモとの勝負よりもやはり先生が優先でござる♪』
『お前、本当に天使なの?』


心の中の天使と悪魔が自己正当化を完了し終えると、シロは足取り軽く横島のアパートに向かった。
そこで何が待ち構えているかも知らずに…。




《タマモサイド》

一方のタマモは、シロと別れた後、空気中に微妙に漂う靴下の臭いを追って街に出ていた。タマモ自身の
嗅覚では悪臭の中から特定の人物の臭いを嗅ぎ分けるなど不可能に近く、ましてや悪臭のど真中に行くこ
となどクレバーな自分のポリシーに反する。そんな泥臭いことはあの犬にでも任せておけば良い。

そう言う訳で、彼女は空気中に拡散しつつも、その質量ゆえか未だに根強く残っている芳香を追いかけて
いるのである。
巧妙にあらゆる所を迂回させてはいるがその臭いはある方向に向いていた。

(この先にあるのは…確か…)

そこは、ICPO日本支部。美神の事務所の隣にある建物である。

「…なんでこんな所に?」

ほんの少し疑問が湧き上がる。ICPOと言えば、自分を除霊しようとした組織である。そのような国連
の組織に何故靴下の臭いがあるのか…。
タマモの心の中で好奇心が鎌首をもたげてくる。

(確かめてみよう。一応、国連の組織だしいきなりバッサリということは無いだろうしね)

建物の中に足を踏み入れる。そして、周囲を見まわしてICPOの事務所に入る。幸いなことに目に付く範
囲には誰もいない。また、建物の中にも人の気配は無かった。

「西条は居ない様ね。出張かしら?」

もともと、この事務所には西条と美神の母親以外のメンバーが常駐していることは無い。その両者がいないと
なれば、この事務所はいま空っぽということになる。

「まあ、好都合だから良いんだけど」

タマモはこっそり忍び込むと一通り部屋を調べる。しかし、臭いは残ってはいるが肝心の靴下は何処にも無い。

「臭いはここで消えているのに…」

首を傾げ考え込む。しかし、答えは出てこない。

「おかしいわね…」
「何がおかしいのかい?」

突然後ろからかけられた声にビックっと驚いて後ろを振り向く。そこには西条が悠然と立っていた。

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