ザ・グレート・展開予測ショー

伝説


投稿者名:TECH・TECH
投稿日時:(99/ 8/21)

魔界の奥のさらに奥、秘境と言われるが似合いのこの地に、ひとつの村があった。長老は齢三万歳を軽く超えるという。その長老の、語るは古き物語。

魔界の歴史は人間界よりも古く、されど流れにさほどの違いはない。ただ『弱肉強食』の色がわずかに濃かっただけのこと。あれはざっと三万年前、まだあのアシュタロスが影も形もない頃、わしの若かりし日々のことじゃ。
 当時の魔界は今よりも格別に生きづらかった。強ければ何をしてもよいということが暗黙の了解とされ、優れた指導者もないまま、混沌と無秩序であった時代。そんな時代をあのお方とともに生きたのじゃ。
 あのお方は不思議な方であられた。はじめてあったのはわしの部族がある魔族の襲撃に遭ったときのことじゃ。襲撃の理由は女目当てのことじゃった。当時のわしらは為すすべもなく、あるものは連れ去られ、あるものはその場で食われた。わしは自分の死を覚悟した、いや死に怯えて動けなかったというほうが正解じゃろう。そこへ、一見道化のような身なりをしたあの方がいらっしゃったのだ。といっても,怯えきったわしは目に映っても見えていなかったんじゃがな。その道化に助けられた後まで記憶がとんでるんじゃ。じゃが彼に助けられたことだけはよくわかった。
 その男に助けられ、わしは血沸き肉踊るのを感じた。魔だ若かったわしはその方について村を飛び出したのじゃ。あの方は実に情の深く、そして不思議な方だった。軟弱な道化を装いつつも、火、水、雷、森羅万象そのすべてをその手から創り出し、それはまさに小宇宙とも言える力じゃった。特別正義感の強かったわけではないし、そんな言葉すら当時の魔界にはなかったが、弱者が一方的に殺されることを決して見過ごさず、ゆえに男も女もひとたび出会えば皆惚れた。そうでないのは彼によって倒された、よっぽどの外道どもだけじゃった。その外道の中にあいつがいたのじゃ・・・・・。
 あいつはあのお方に敗れたとき、九十九の呪いをかけたのじゃ。それはみな,死しても魂に受け継がれていく呪いで、その中にはあのお方のみならず、周りのものを苦しめるものもあった。あの方は必死でのろいを解くことに努めた。じゃが一つだけ,『彼に近づく女に苦難と不幸をもたらす』という呪いだけはどうしてもとくことができなかった。
 悩みぬいたあの方は自らに呪いをかけ、すぐさま自害した。『女に嫌われ、決して寄り付かわれない』呪いをな。それから後何度か転生を繰り返したが、呪いの反動で彼は女狂いになってしまった。

 しかし、女というものは思いのほかすごいものでな。本当にみる目のある女は彼に惚れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そして今から千年ほど前、あの方は『人間』に生まれ変わったのじゃ。




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