ザ・グレート・展開予測ショー

彼の大きさ(9−3)


投稿者名:ANDY
投稿日時:(03/ 3/ 8)

「ふえ〜。エミちゃ〜ん。なんだかすごいことになってるねえ」
「こ、この。あんたこの状況でそんな言葉しか出ないわけ?」
「め、冥子さん。もう少し緊張感を」
「は〜い」
 いつもの緊張感の感じられない声で感想を述べる冥子に対し、エミとオキヌの二人は戦う前から激しい疲労感に襲われていた。
「オキヌ殿〜」
「オキヌちゃん」
 そんな三人の下に、元気な声を上げながら近づいてくる影が二つあった。
「あ、シロちゃん、タマモちゃん」
「無事みたいね」
「ええ。でも・・・」
 タマモに答えながらオキヌが視線をある方向に向ける。
 その視線の先には、いまだ佇んでいる『下っ端ーズ』の残りのメンバーがいた。
 四人が四人とも何の動きを見せておらず、その様子は何らかの恐怖感を与える。
「あと四人でござるな」
「そうね」
「あんたら、私のために時間を稼ぐワケ」
「?なぜでござる?」
 突然のエミの申し立てに、首をかしげながら疑問をシロはぶつけた。
「私のとっておきをあいつらに喰らわせるためなワケ」
「イ・ヤ」
「な?!」
 大きな胸を張って、自信気に答えるエミに対してタマモは冷徹に拒否反応を起こした。
 その時、タマモの視線がエミの胸に向かっていたような気がしたが、気のせいだろう。
「どうして私があんたのために時間を稼がなくちゃいけないわけ。私は私の好きなようにさせてもらうわ」
「タ、タマモちゃん!!」
「こ、このガキャ〜!!」
「け〜ん〜か〜は〜、ダメ〜」
「大体あんたは―」
「なによ!バカ犬こそ―」
「狼でござる!!エミ殿こそ―」
   ゴホン!!
 場所も状況も省みずケンカを開始しようとしていたところに、一つの咳払いが起こった。
 その発生源のほうに顔を向けてみると、『下っ端ーズ』の四人が先ほどまでと変わらずに立っていた。
 が、その仮面の為わからない視線に呆れが見えるのは気のせいであって欲しいなあ、と思ったのはオキヌだけではないだろう。
「あ〜、ご〜め〜ん〜ねえ〜」
「な、なんなわけ!」
「そ、そうでござるよ!!」
「い、言いたいことがあるなら言いなさいよね!!」
 普通に謝る冥子と、その様子を見て激しい頭痛に襲われるオキヌ。
事態の当事者である三人は三人で、顔を赤くしながら叫んでも怖くないのに、『下っ端ーズ』に食い付いた。
「・・・無様」
  ピキ!
 『下っ端ーズ』の内の一人がそう言い、残りの三人も頷いたのを見せられた瞬間、そんな音が聞こえた。そして―
「「「こ、殺す!!!」」」
―三人の心がシンクロ率四百パーセントを越えた瞬間だった。
 それって八つ当たりじゃ〜、と心の中で突っ込みを入れたオキヌだった。
「はあ、くじ運が悪かったな」
「だな」
「ああ。他の奴らは面白そうな相手なのにな」
「まさか、こんな残り物の相手とはな」
 思い思いの言葉を口にする『下っ端ーズ』の面々。
 その一言一言を耳にするうちに、三人の怒りメーターが上昇していくのは当然だった。
「ふう。まあいい。仕事をこなすだけだ。おい、そこの金銀頭」
「「だれのこと(よ)(でござる)!!」」
「お前達だ。自覚あるから吠えるんだろうに。お前達二人で相手してやる。来いや」
「「ぜったい泣かす!!」」
 そう叫び、シロとタマモは戦闘体制に入った。
「そうそう。俺の名前はフリーズ・ランスだ。死の瞬間まで覚えときな。それと、俺の相棒は―」
 その言葉と共に、ランスは右手に蒼い槍を出現させた。
「―こいつだ。ま、精々足掻いてくれよ?嬢ちゃん方」
「「うっさい!!」」
 微妙に緊張感がなく、それでいて殺気を撒き散らしながら、蒼い槍使いと、人狼と妖狐の戦いが始まる。

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