ザ・グレート・展開予測ショー

修行の日々〜7〜


投稿者名:初心者1069
投稿日時:(03/ 3/ 8)

現在に戻ると何故か美神達が集まっていた。

「何でここに戻るのが分かったんですか?」

「この人に聞いたのよ。」

二人が泣いているのを冷静に(冷ややかに)見ていたタマモが答える。
指を差している先には見たことの無い一人の男が立っていた。

「そんなことより、ルシオラを復活させるんでしょ?早くしてあげなさいよ。」

「何で知ってるんすか?」

「それもこの人に聞いたのよ。」

(何で俺が過去に戻った目的を知ってるんだ? 
 まさか‥神魔の追っ手か!
 ここで捕まる訳には行かない。少なくともアイツを助けるまでは。)

急いで文珠を作るために手に霊力を集中させる。

「無理しない方がいいぜ。
 過去で使い過ぎて時間移動したので最後だったはずだから。」

その男の言う通り文珠を作り出せるほどの霊力はもう残っていなかったらしい。
いくら集中しても出てこない。

「お前は誰だ?何故俺がしてきたことを知っている!」

「とりあえず敵じゃねえよ。
 それより早くルシオラを助けてやれよ。」

そう言うと男は文珠を二つ横島に渡した。
<移><動>と込められている。

「そうよ横島君。事情は後で話すから。
 とりあえず、することをしてしまいなさい。」

(文珠使い!
 でも珍しい能力ってだけで俺以外にいないわけじゃねえか。
 よく考えれば美神さん達が一緒にいるんだから敵じゃないよな‥‥多分。
 美神さんだけなら買収されてるかもしれないけどおキヌちゃんもいるし。)

本人に言ったら殺されるようなことを考えながら男から渡された文珠を発動させる。
すぐにルシオラの霊体を預けていたICPOの施設に到着した。
施設の人間には話がしてあったらしく何の問題もなくルシオラの霊体が置いてある部屋に着いた。

(あの時あきらめずに霊体を保管してもらってよかったな。
 俺が生きている間にアイツを救える技術が発展するなんて信じてなかったしどうしようか迷ったっけ。)

部屋に入るとパピリオとベスパが来ていた。
パピリオが駆け寄ってくる。

「修行してた理由ってルシオラちゃんを助けるためだったんでちゅね。」

「ああ。隠してて悪かったな。」

「別にかまわないでちゅ。」

パピリオと話しながらも目はベスパを見ていた。

「お前も来てくれるとは思って無かったよ。」

「ああ。だが私の能力があった方が早く復活できるだろう?」

気まずい空気が流れる。

「悪いな。俺だけ‥。」

「気にするな。あの方の望みはかなえられたんだ。」

「おいおい。感動の再会もいいけどさっさとルシオラを復活させてくれないか?
 俺はアイツに話があるんだ。」

男が話に割り込んできた。

「お前ルシオラと知り合いなのか?」

「そう警戒するなって。
 別にお前の女取るような真似はしねえよ。」

(話はぐらかしやがった。一体何者なんだこいつ。)

疑問に思ったがルシオラを早く復活させたいのは同じなのでベスパに始めるように頼んだ。
ベスパが復活した時のように霊破片をベスパの眷属である蜂が一つの個体の状態にする。
ルシオラが復活するのを待っていると、小竜姫がやって来た。

「今日は神魔の横島さんへの処置を知らせに来ました。」

(ついに来たか。
 せめてアイツが復活するのを見届けてからにしたかったな。)

小竜姫は懐から命令書を取り出すと、読み始めた。

「神魔の上層部は今回の時間移動及び魔族一名を復活させようとした罰を次のように下します。
 一、今回の時間移動について
   移動先で大きく歴史が変わるような行動が無かったこと、横島さんの先の大戦での功績を考慮、神魔の指導者の強い希望の三点から不問とします。
   ただし、今後同じようなことが繰り返されるのを防ぐため文珠の同時使用の個数に制限をかけます。
 二、魔族一名の復活を企んだことについて
   これは許されざる行為ですが、この魔族の死の原因が我々神魔にも有るということから復活は認めます。
   ただし、横島さんが次の項の契約を認めない場合はこの場で私が処理します。」

「俺に処分が下るってのは分かりますけど、状況しだいでアイツを処理するってのはどういうことですか!」

ルシオラに危害が加わる可能性があることに横島が反応した。
ここで再び彼女に何かあれば三度彼女を助けられなかったことになる。
彼が過敏に反応するのもしょうがないだろう。

「そう怒るな。小竜姫様が決めた処分じゃないんだ。文句があるなら神魔の上層部に言えばいい。
 おそらく、小竜姫様は美神さん達に事を知らせた処分でここに来てるんだ。
 お前の安否を案じてくれた人にその態度は無いだろう。
 それに、契約を結べば彼女の安全は保障される。」

小竜姫はその男の正体を知っているらしく、ただ黙って頭を下げた。

「三、契約についてです。
   魔族が復活した場合それほど強くないにしても神魔のバランスを考慮する必要があります。
   その積み重ねがハルマゲドンにつながなりますから。
   そこで、横島さんの魔族の霊体を神族の物に転換し、横島さんを神族側の勢力とします。
   最も神族といっても、バランスを調節するだけの役割なので今まで通り生活していただいて結構です。」

「それって、いざってときはルシオラと敵になるってことですよね。」

「いや、そうとは限らんさ。
 お前はあくまでバランスを保つための形式的な神族だ。バランスが崩れてしまえば、お前がどうしようと自由だ。」

(この男、何故こんなに事情に詳しいんだ?やはり神族か魔族の関係者か。
 そんなことより、この契約を結ばないとルシオラは助けられないか。)

「どうしますか?
 この三つを守らない場合この場で‥私があなたを消さなければなりません。」

思いつめた表情で小竜姫が言った。

「アイツの安全が保障されるためなら仕方ないでしょう。
 でも、一つお願いがあります。時間移動をもう一度だけ認めて欲しいんです。
 歴史を変えるような事はしませんから。」

自分が霊破片を持ち去った世界のルシオラがどうなったのかを確かめたかった。
過去の自分も同じ事を繰り返すはずだが、万が一ということもある。

「分かりました。上層部に聞いておきます。
 それと、文珠の措置については後日連絡します。
 私はこのことを上層部に報告しなければならないのでこれで失礼します。」

安堵した表情を見せ部屋から出て行こうとする小竜姫に横島が声をかけた。

「小竜姫様、迷惑をかけてすいませんでした。」

小竜姫は答えることなく部屋を出て行った。
それに合わせたようにルシオラの霊破片を集めた繭が光り始めていた。

「そろそろだよ。」

そういうベスパの顔からは何の表情も読み取れなかったが、色々思うことがあるのだろう。声が少し震えていた。
パピリオは喜びが抑えられずに顔がにやけていた。
シロタマは美神が大体の事情を話したのだろうが何か感情がわく訳もなく、黙ってみていた。
美神とキヌはなにやら複雑そうな顔をしていた。

横島は意外と落ち着いていた。
過去での出来事が忘れられないのだろう。

さまざまな反応の中ついにその時が訪れた。
繭を突き破ってその女性が出てくる。

「ここは‥‥私はどうなったの?」

「ルシオラ!」

皆が立ち尽くす中で一番最初に彼女に声をかけたのはやはり横島だった。

「ヨコシマ!アシュ様はどうしたの?」

「終わったんだ‥‥全部終わったんだよ。」

「感動の再会は結構だが、俺には時間がない。悪いが先に話をさせてもらうぞ。」

男は文珠<眠>を発動させ、横島に向かって投げた。

「な!まずいルシオラ逃げろ‥‥。」

横島が眠らされたにもかかわらず、美神達は驚いた様子もなかった。

「ちょっと、こんなやり方しなくてもいいんじゃないの?」

「俺の時もこうやられたんですよ。」

そう言いながら男は文珠の発動を解いて、自分の姿に戻った。
その姿を見たルシオラが思わず声を上げる。

「え!ヨコシマ?」

この男は未来から来た横島だった。
ちなみに時間移動から戻ってきた時に美神が何もしなかったのは、
この横島を勘違いしてひと通り折檻を加えていたからだったりする。

「ルシオラ、驚いてるだろうけどあまり時間がないんだ。
 今理解できないことも多いだろうけど、この時間の俺の話を聞いたら分かるだろうから今から言うことを聞いてくれ。
 俺の時間のオマエを助けるためとはいえ、この時間でオマエが復活できないようにしたんだ。
 こうして復活できたから良かったけど、今考えれば危ない賭けだった。すまなかった。」

「何言ってるか良く分からないけど、別にいいわ。
 私はこうしてヨコシマともう一度会えたんだから。」

ルシオラは微笑みながら言った。

(良かったな。あの時二匹の蛍を救えるのは俺だけなんて言われたのが唯一気になってたからな。
 あの世界の俺が未来で同じ行動にでるかどうかは分からねえし。)

冷静な顔をして話に加わっていたが、ルシオラが復活するかどうか正直不安だった。

「ありがとう。
 さて、これで心残りも無くなったし帰るよ。」

未来の横島の体がぼやけ始めた。
そこで、シロが禁忌の言葉を口にした。

「ずっと聞こうと思ってたんでござるが、最後だから聞くでござる。
 先生は未来で誰と結ばれるんでござるか?」

ルシオラのことを美神の話で聞いてから、彼女なりに危惧していたのだろう。
他にも数名この質問をしたかった者がいたので、皆が期待に満ちた目で横島を見ていた。

(この質問に答えるのも今回のお楽しみの一つだったんだよな。
 何て答えるんだったかな、結果は覚えてるんだが‥そうだ。)

「今この時間で俺が付き合ってる奴だよ。」

そう言って意味ありげな笑顔を残し、未来へと帰っていった。
この後目が覚めた横島に尋問(拷問?)が行われるのは間違いないだろう。

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