ザ・グレート・展開予測ショー

KINKIステーション悪霊事件 ―3―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 3/ 8)

ゴジテレビの人気番組、KINKIステーションの公開録画中に突如として現れた女性の悪霊。
スタジオのライトを壊し歌手ユニット「シャイン」を、次に女優の葛井リオを襲った。
一般客も含むスタジオ内は一気にパニックとなったのである。
だが、その場にいた横島の活躍で皆に怪我は無く、悪霊も無事に除霊されたのだった。

・・・・・・・・・・・・








「よし・・・・・・ふ〜」

完全に悪霊が滅した事を確認し、横島はため息をはいた。そこに銀一が声をかける。

「横っち!大丈夫なんか!?」
「おお、銀ちゃん。これで大丈夫・・・」

―― え? ――

大丈夫だと言いかけて、横島は気がついた。

―― まだ悪寒が消えない!? ――

抜きかけた気を瞬時に入れなおし、即座に自分の周り、スタジオの中を見回す。

―― 悪霊はまだいる?! ――

天井、フロア、セットの影・・・
悪寒の正体を探して横島はせわしなく視線を動かす。

―― おかしい ――

どれだけ探しても、悪霊らしき影は見つからなかった。だが、それでも横島の悪寒は一向に消えない。

「どうなってるんだ?」
「なにか問題あるんか!?」

そんな横島の様子に不安を感じた銀一は、動き回る横島に近づいて声をかけた。

「ん・・・悪霊はさっきの奴だけだと思うんだけど・・・」

そう言いながらだが、それでも横島はまだ疑わしげに視線を動かしている。

「・・・どーも悪寒が消えないんだよ。多分、これが美神さんが良く言っている、霊能者特有の勘ってやつだと思うんだけど・・・」

真面目に仕事をやるようになった横島は、しばしばこの勘が働く事を・・・または勘を働かせると言う事を覚えてきていた。
その勘が横島に告げている。

「まだ何かあるかも知れん。ひとまずこの場は離れた方が良いかもしれないぞ?」
「そ、そうなのか?横っちがそう言うんなら信用するわ!でも、パニックなったらまずいな・・・冷静に誘導せなあかん。」
「その辺は銀ちゃんに任せる。俺はもうちょっと調べてみるからさ。」

そういうと、横島はもう一度細かく調べ出した。
それを受けて、銀一の方はスタッフの集まっている場所に行く。

「あ、近畿君!どうなってるの?」
「ああ、横っちが言うにはまだ何か有るかも知れないそうです。ですから、一旦スタジオの外にお客さんを移動させましょう。」
「ねえ、横島さんってGSなんだそうだけど・・・信用出来る人なの?」

横島の見かけはまだ学生と言った所だ。リハーサルでその職業がGSだと知ってはいても、当然ながらその実力を疑う者もいる。

「それは心配無いです。あいつは本当に優秀な奴ですから。だから、この場はあいつの指示に従ってください。」
「うむ・・・・・・そうだな。どのみちこのまま続けるのは不可能だろう。よし、直ぐに手分けして誘導してくれ!」

自信を持って言う銀一に答えたのは、急いで降りてきた坂田プロデューサーだ。
その指示に従って、スタッフが一般客の誘導をはじめる。

「申し訳ありませんが、一度このスタジオから移動してもらいまーす!」
「スタッフが誘導しますので、指示に従って移動してください!」

その様子を見て、坂田は出演者達にも声をかけた。

「それじゃあ、私達も外に出よう。この場は横島さんに任せて、俺たちは今後の事を話そうか・・・」

その意見に全員が賛成する。
だが!

「うわああああっ?!」
「なんだよコレ?!」

スタジオから出ようとしている一般客の方から何か叫び声が聞こえてきた。

「どうしたっ!?」
「なんか、変なんですよ!この扉の外が!?」

その声に反応して、横島がそこに駆け寄る。

「こ!?これは・・・」

扉の外は廊下のはずだった。だが、そこに見える光景はそうではなかった。
グニャリとうねって見える空間。そこには上下や左右というものが存在しない。
それはつまり・・・

「異次元・・・」

横島自身、何度かそれを目にした事がある。
人間が住む世界とは、空間の位相がずれた世界。時間軸は同様だが、空間軸が違う世界だった。

「おおお、おい!?これって何なんだよ!?俺たちどうなっちゃうんだよおっ!!?」
「あんた誰?!いや、誰でも良いよ!これ何とかしてよっ!」
「電話が通じないのよ!?いったいどうなってるのっ?!」

横島がGSだとは分からない一般客たちだったが、それでもこの問題に対応している事が分かると、途端に掴みかかって喚く。

「落ち着いてください。大丈夫!命に別状は無いから!今、調べるから!」
「本当に大丈夫なのかよ!?」
「あんたいったい誰だよ!?」
「いやー!ここから出してーー!!」

必死にそれを抑えようとする横島だったが、一向にうまくいっていなかった。

「みなさん、大丈夫です。落ち着いてください!こんな時にはパニックになるのが一番危険です!どうか落ち着いて、こちらの指示に従ってください!」
「え!」
「あ?近畿君!」
「いや、あれは・・・」

そこに声をかける銀一。だが、普段の近畿剛一としてではなく、自分の持ち役の演技で言ったのである。

「元、大阪府知事と同じ名前の横山です!ここは我々ゴーストスイーパーにお任せを!」

そして決め台詞を言う。もちろんポーズをつけて!

「うおーーー!!」
「横山ーー!!」
「きゃーーーっ!!」
「格好良いーー♪」

注目がそちらに移り、追求を逃れた横島だったが・・・

「ちくしょ〜・・・なんだか納得いかんぞ・・・畜生、畜生、なんだかとっても〜〜〜ぉぉおおおおおおお〜〜〜・・・ちっくしょうおーーーーっっ!!!」

その理不尽にへこんでいた。

―― ま、それは置いておいて ――

とりあえず気を取り直して、横島はもう一度その異次元を覗き込む。
じーっと覗き込む。

「・・・・・・・・・・・・」

・・・・・・異次元だった。

―― 駄目だ。それ以外には何も分からん! ――

だが、横島にもそれ以上事は分からない。

「あ〜・・・なあ!出入り口って他に無いの?!」
「え?いえ、非常口があります!」
「何処?」

横島の質問に、スタッフの一人が答える。

スタッフに連れられて、横島は非常口のほうに行く。
だが・・・

「ああ!?」
「・・・・・・こっちも同じか・・・」

非常口の外も、全く同じようにグニャリと曲がりくねった空間が広がっていた。

「お、おい横っち?!これってもしかして閉じ込められたんか?」

一般客へのポーズ用に一緒にやってきた銀一が、ヒソヒソと横島に尋ねる。

「ああ。けど・・・これで分かった事もある。」
「え?」

異次元のその先を睨みつけるようにして、横島は銀一に答えた。

「さっきまでは、あの扉の場所に異次元への扉が開いたんだと思ったけど・・・違うぞこれは。」
「な、何が違うんや?」

そこで視線を銀一の方に向けて続ける。

「このスタジオ自体が、通常の空間から切り取られているんだ。異次元への扉が開いたんじゃなくて、部屋ごと異次元に放り込まれたって事さ・・・」
「何?!そ、それってヤバイんやないのか?!」

横島の言葉に銀一が慌てた。

「ああ、つまり閉じ込められていて脱出不能だって事だからな。でも、もう一つ分かった事がある。」
「な、何だよもう一つって?」

横島は真剣そのものので語って行く。

「これは、その辺の悪霊が起こせるレベルの事じゃ無い。無論、自然発生するなんてのも考え難い。」
「ど、どう言うことや?」

横島は、もう一段声を低くして銀一に耳打ちする。

「誰か裏にいる。」
「だ、だれかって?」

―― ゴクッ ――

唾を飲み込む銀一。額から汗が流れ落ちた。

「そりゃ、流石に分からんよ。可能性として大きいのは、呪い屋か魔族・・・まさかとは思うけど神族って可能性も無いわけじゃ無い。でも、これだけの事が出来るのはかなりの実力者だって事は確かだ。」
「・・・・・・・・・・・・」

つまり、この事象には何者かの意思が働いていると言う事。横島はそう言っている。

「一番可能性が高いのは呪い屋だと思う。魔族や神族が突然このスタジオを襲う理由なんてあまり無さそうだしな。」
「な、なあ?呪い屋ってのはなんなんだ?」

聞きなれない言葉を銀一が聞き返してきた。

「あ、ああ・・・GSってのは悪霊を祓うのが仕事だろ?だけどオカルト能力者の仕事ってのはGSだけで無くてな、裏の仕事になると殺し屋みたいな仕事なんてのも有る。」
「こ、殺し屋・・・」

オカルト技術は一般人には分かりにくく、それでいて効果も大きい。
当然、それを使った裏の仕事も生まれてくる。

「ここから先は俺の予想なんだけどな・・・」
『きゃーーーっ!!!』
「!?」
「!!」

と、横島が自分の考えを話そうとしたとき、ステージの方から悲鳴が聞こえてきた。

「どうした!?」

横島は急いで悲鳴の聞こえた方に向かう。
すると、そこには悪霊が現れていた。しかも3体も。

「くそっ!別の霊が出てきたのか?!」

3体の悪霊は、出演者達が固まっている場所を取り囲むようにしてフワフワと漂っている。今にも襲い掛かっていきそうだった。
それを見た横島は、急いで文珠を生成し投げつける。

『浄』

その文珠の役割は浄化。
悪霊によって歪められた空域を、それらが存在できない程に清めていく。
そこは、悪霊たちにとっては存在するだけで苦しみを伴う空間となり、やがてはそれに耐えられず・・・

『ぎゅわあああああっっ!!!』

断末魔の悲鳴と共に消滅した。

「はぁ、はぁ・・・ああ〜・・・・・・流石に疲れるな・・・」

先ほどから連戦の横島は、ボチボチ息が上がってきていた。

―― でも、おかしくないか? ――

横島は疲れつつも、今の状況に違和感を感じ始める。

「なんで、悪霊に気付かなかった?」

今、この空間は異次元という密室だ。
そしてさっきまで悪霊の気配はしなかった。

「この異次元から入ってきた?」

それも全く有り得ない話では無いのだが・・・

―― もしかして?! ――

横島はある可能性に思い至る。そのままスタジオ中を見回した。
だが、さっきまで見ていたのがスタジオ自体だったのに対して、今度はスタジオにいる人間全員を観察しだしたである。

―― この中に呪い屋がいるんじゃ無いか? ――

確信は無い。
しかし・・・・・・


今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa