ザ・グレート・展開予測ショー

戸惑い中編


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 3/ 7)

そして例によって例のごとく漫才(?)をしているのと同時刻
かたんかたんかたん
おきぬは、電車に揺られていた。
もう太陽は西の空に沈み、闇色の空の真上には、きいろい三日月が飾り物のよーにある。
こつんと、窓へ額をぶつけ、その瞳は外の景色を向いてはいるが映してはいない。

膝に置かれた両手はぐっと握り締められており、その気だるい表情と、ひどくアンバランスである。
「あんなこと言われるなんて…だめだなあ」
そうして呟かれる言葉は、ひどく力ないものだ。

わかっている。
美神はきっと自分のためにあんな言葉を言ったのだ。
それは分かりすぎるくらいわかっているし、ありがたいとすら思える。
横島が心配してくれたのだって、とても嬉しいことなのだ。
それでも、可哀相だと思ってしまったのだ。
ここに、苦しみのまま強制的に払われるのは、可哀相だと。
だって、わかるから。
誰よりも、誰よりも、この世にとどまって居たい気持ちを。
誰かに分かって欲しい気持ちを。
この苦しみを軽くして欲しい気持ちを。
もちろん、躊躇うのがいい訳ではない。
もし、ここで払えなかったとしたら、きっと今回の霊は悪霊になるだけだっただろう。
どう考えても、ここで、成仏させてあげるのが、ベストなのだ。

そんなことは、わかっている。

分かっているのに、躊躇う。
そして、大切な仲間を苦境に陥れる。

(情けないなあ…)
と思う。
もっと冷静になりたいし、優しくなりたい。
こんなんでは、中途半端だ。
半端に同調して、余計に苦しみを招くだけなんて。

「二度と、こんなことしない…から」
おきぬは、ぐっと手を握る力を込めそう、呟いた。


くんっと
服を引っ張るのに気付く
「え?」
それにおきぬが気付き視線を向けると、小さな女の子がいた。
年齢は五歳くらいだろうか?
ぱっちとした目とお下げ髪が印象てきな可愛らしい女の子である。
(なんでこんなとこに女の子が?)
「どうしたの?おかあさんは?」
身を屈め目線を合わせおきぬが聞くと
女の子はふるふると首を左右に振り
「だいじょうぶ?」
といった。
「え?」
「おねえちゃん、ぐあいわるそうだよ?だいじょうぶ?」
その瞳にはこちらを気遣うことしかない。
「うん…大丈夫だよ」
おきぬがにっこりと笑うと、女の子は安心したようにほうっと息をつくと
「よかったあ」
と嬉しそうに、言った。



「あれ?」


何故だろう。
その瞬間ひどく、泣きたくなった。

つづく

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