ザ・グレート・展開予測ショー

夕日を眺めたその後で


投稿者名:紫
投稿日時:(03/ 3/ 7)


その日は満月だった。明るい月に照らされた、人気のない夜道を一組のカップルが腕を組んで仲睦まじく歩いている。
季節は春。午後八時頃の夜分、少し肌寒いような風が吹いているが、体を寄せ合っている二人は寒そうには見えない。
先ほど食べた魔法料理の効果もあるようで、身震いすらしない。あっつあつ(死語?)ってやつだ。
特になにを話すワケでもなく歩いている。だがその静かさが、この二人の思いの深さを物語っているようだ。

・・・一緒にいられれば幸せだと。





古い洋館風の建物が見えてきた時、不意に女の方が立ち止まった。男が訝しげにその顔を見る。
その建物は女の居候先で――先ほどまで二人はデートをしていたのだが――男が女を送って来ていたのだ。

「どうしたんだ?ルシオラ。」

男が女――ルシオラに話しかける。
声を掛けられた彼女は、少し俯き加減に目をそらしてぼそぼそと何事か言う。
聞き取れなかった男は聞き返す。良く聞こえなかったからもう一回言ってくれと。
少しデリカシーに欠ける行為である。まあ仕方のない事ではあるが。
良く聞こえるように、口元に耳を寄せる。
だが、夜の闇のせいで、彼女の顔が真っ赤になっていたのには気づけなかった。

小さい声で、しかし聞き間違えようのない程度にははっきりと、彼女は言った。

「き・・・今日はあそこに帰らないで・・・ヨコシマの家に・・・と・・・泊まろうかな・・・」

と。それを聞いた男――横島は・・・止まった。
十秒経過。
一分経過。
五分経過。
・・・再起動。

「そ、それってあの、その、」

「い、言い直さないでよ、もう・・・・・行こ・・・」

どうやらこの二人、『そういうこと』はまだのようである。ま、それも今日限りになりそうだが。
ルシオラが、きゅっ、と横島の手を掴み、建物に背を向ける。
来た道を戻る。横島の家へは電車に乗らないと行かれないので、駅へ向かっているのだ。





・・・がたたん、がたたん、がたたん・・・

電車は適当に空いていた。二人並んで座り、二駅過ぎるのを待つ。
ルシオラは俯き、横島はちらちらと隣のルシオラを見ながらも、目は合わせようとしていない。
心臓の音が聞こえてるんじゃないだろうか、とか、自分の体が熱くなってるんじゃないだろうか、とか考えている。
その為か、相手の体温が感じられない程度に、体を離している。


電車に乗ってから三駅目で下りた。
やたらと二駅過ぎる時間が長かったような、一瞬だったような変な気分に浸りながら、横島のアパートへ向かう。
ちなみにルシオラの『宣言』からこの間、二人とも無言である。・・・やたらと会話が弾むのもそれはそれで嫌だが。





アパートの戸の前に着く。横島が鍵を開けて中に入り、明かりを付ける。その後に続いてルシオラも中に入る。
どーでもいいが隣の部屋の住人は基本的に早寝早起きの超健康生活を送っている。多分もう寝たはずだ。
・・・騒がしくすれば起きるだろうが。

さして広くない、というかやたらと狭い部屋の中央の辺りで立ち止まり、手荷物をそこらへんに置く。
意外だがこの部屋はこぢんまりと片づいている。ルシオラが来たときのために、と横島が片づけておいたのだ。
以前――ルシオラと知り合う前――には食料品の包装紙などのゴミがそこら中に散らばっていたのだが、そんなもの一つもない。チリぐらいはあるがそこら辺は男の部屋である。大目に見てやろう。
さらに、おそらくは知り合いの大半は信じないだろうが、『健全な男子なら一度はってゆーかしっかりと興味を示すであろう本』とか『健全な(以下略)ビデオ』とかもきっちり処分してある。・・・おかげで最近金に余裕ができていた。それなりの値段で売れたらしい。
ま、それは置いといて。

部屋の中央でついに向き合う。ただし目は合わせていない。相変わらずルシオラは俯いているし横島は目を泳がせている。
が、意を決して横島が声を出す。なにを言おうとしているか自分でもよく分かっていないようだったが。

「あ、その、あのな、ルシオ・・・」

すっ・・・とん。

最後まで言えなかった。ルシオラが不意に近づき、頭を横島の胸に当て、抱きついて来たのだ。
心臓が跳ね上がった。そしてもの凄い勢いで脈を打ち始める。手が泳いでいる。どうもやり場に困っているらしい。
が、だんだんと落ち着いてきた――それでもまだ脈はやたらと早いが――らしく、ルシオラの背中に手を回し、抱きしめる。


どれぐらいそうしていただろうか。気づけば見つめ合っていた。ルシオラの目が潤んでいる。
横島は手をルシオラの腰の辺りに当て、ぐっ、と更に抱き寄せる。
ルシオラは腕を横島の首に絡ませ、少しだけぶら下がるような体勢になる。

初めはついばむように。唇が軽く触れる程度に。
だんだんと深く。音が出るほどに。
舌を絡ませる――

たっぷり二分ほどたっただろうか。唇をゆっくりと離す。
そしてどちらからともなく服に手を掛け、

























・・・これ以上書いたらまずいよね?ね?
だから後は脳内補完でよろしく。



・・・くやしい?ねえ、くやしい?(くすくす)


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