ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その3)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 3/ 6)









「あいたた・・・」

ひのめは夕映えする河原をテクテク歩く。
さっき打ち込まれたボディブローが効いたのかお腹を苦痛の表情で押さえた。

「あ、ひのめお姉ちゃーーーーん!!」

その呼び声にひのめはハっと振り返った。
見れば一人の少女がこちらに手を振って走ってくる。
最初は夕日の逆光で見づらかったが、近づいてくるにつれて誰かが分かり、ひのめはその少女の名を叫んだ。

「蛍ちゃん?!」

「はぁはぁ・・・うん♪今、調度部活の休憩中なんだ〜」

蛍と呼ばれた少女、つまりは現在中学一年生の横島と令子の長女は嬉々とした表情でひのめに話しかけた。
ひのめも昔からなつかれてる姪っ子に笑顔で対応する。

「へ〜、何部に入ってるの?」

「霊力研究部」

「は?」

なにやら聞きなれないクラブ名に目を丸くするひのめ。
そんな叔母を気にしないで蛍は続ける。

「霊力っていうのは誰にでも宿ってるじゃない?それでその霊力を科学的に高めるために
自分達で開発したマシーンで実験しながら・・・(以下専門的な言葉が続くので略)」

「そ、そう・・・で、そんな文化部がどうして河原にいるの?」

「ほらよく言うじゃない!『健全な魂は、健全な肉体に宿る』って!
だから、日頃からランニングで鍛えなきゃ!!」

「そ、それはいいけど・・・他の部員さんは?」

「え〜と、川下4kmくらいでバテて休んでるんじゃないかな?」

あっけらかんと応える姪っ子に「はは」と苦笑いを浮かべるひのめ。
そういえばこの子は昔から人一倍元気があったなぁと心で呟いた。

「あ!そういえば、お姉ちゃんって六道女学院の霊能科に入ったのよね!?」

「え?う、うん」

蛍の元気な問いかけに思わず声がつまった。

「凄いなー!あそこってエリートしか入れないんでしょー!?
そんなところに入れちゃうなんてさすがお姉ちゃんよね!」

「・・・そ、そっかな・・・」

目を輝かせて自分を見つめる蛍になぜか目を合わせることが出来ないひのめ。

「私・・・お姉ちゃんのこと尊敬してるんだ!
だから・・・3年後!私も六道女学院に入ってみせるからね!
最近は私も霊力が上がって『幻術』も使えるようになったし!」

「え・・・」

「じゃあ私、他のみんなを迎え行って来るから!またね!」

「あ・・・うん、じゃね」

蛍は手を振りその場から元気よく走り去る、ひのめも手を振る・・・しかしそれは別れるつもりで挙げた手ではなかった・・・
呼び止めて言いたかった・・・

「幻術か・・・凄いね蛍ちゃんは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも・・・・
・・・・私はエリートなんかじゃないよ・・・」

蛍に言いたかった言葉がひゅうと吹いた風にかき消された・・・。


























「はぁ〜、何かプレッシャーかかっちゃうな〜」

ひのめは先ほどの蛍との会話を思い出しながらコンっと道端の空き缶を蹴った・・・
コロン、コロンと音をたて転がっていく空き缶。
しかし、3m程転がると自転車に乗った何者かがそれを拾った。

「空き缶はゴミ箱へって高校で習わないの・・・ひのめおばさん」

自転車に乗ったバンダナをした少年がニっ笑いながらひのめに声をかけた。
その少年こそ・・・

「おごおおおおおおおお!!!」

次の瞬間その少年の首にひのめのラリアットが見事に炸裂し自転車からほっぽり出される。

「げほげほ!ナレーターに名前くらい言わせろよ!」

「うっさい!おばさんって言ったら殴るって言ったでしょ!忠志!!」

自転車からほっぽりだせれた少年・忠志・・・つまりひのめの甥っ子はいててと言いながら未だに地面に倒れたままだった。
さすがに少し心配になったのか様子を見るために近づくひのめ。

「ちょっとぉ・・・オーバーに倒れてないでさっさと起きなさいよ」

「・・・・・・・・・白」

次の瞬間、顔を赤くしたひのめのかかと落としが見事に忠志の後頭部に炸裂した。

「このマセガキ!!あんたまだ小学生でしょ!」

「あつつ・・・来年は中学だっつーの。何だよ、パンツ見られたくらいで・・・」

「あんたはぁ・・・高校生になった親戚のお姉さんにもう少しまともな態度取れないの!!」

「ふん・・・偶然入れた高校だろ?」

「なっ!・・・何ですって!!」

忠志の暴言に今度は怒りで顔が赤くなった。

「知ってるんだぜ・・・ひの姉って霊能力がほとんどないって」

「!」

ひのめは忠志のセリフにあからさまに動揺の色を見せる。
しかし、すうと深呼吸すると自分の気持ちを落ち着かせて言った。

「何のことやら・・・・っていうか霊能力がないのはあんたのほうでしょ?知ってるんだからね」

これで一発大逆転だと思ったひのめ・・・しかし、忠志はまるでこれを待っていたかのように笑いを挙げた。

「ふふ、これを見ろよ」

「それって・・・」

忠志が手にしていたのは神通棍・・・しかもかなり年季が入っている品だ。
そして、忠志がムンっと気合を入れると


キンっ!


甲高い音ともに神通棍が伸びた。それと同時に霊波がこもっているのだろう、いっぱしのGSが使うように光輝いている。

「あんた・・・」

「どうだー!すげぇだろう!最近出来るようになったんだぜ!」

自慢げに語る忠志・・・・だが、


パシャっ


眩い一瞬の光に目を閉じた。そして改めてその光源を目でたどる・・・そこには
携帯のムービーメールでバッチリ忠志の姿を録画するひのめの姿。

「な、なんだよ!」

「その神通棍・・・令子お姉ちゃんのでしょ?しかもあんた神通棍持ち出し禁止令出されてたわよね?」

「ま、まさか・・・」

「今のあんたの勇姿はバッチリお姉ちゃんに送っておいたわ♪」

「!!!!!」

「はぁ〜・・・・お姉ちゃんの鉄拳は私の十倍は痛いのよね〜、今夜覚悟しておいたら?」

「鬼ぃぃぃ────────────────────────────────っ!!!!!!!」

「じゃあね〜♪」

笑顔で駆けていくひのめ。それを追うように自転車に急いで乗り込み走り出そうとする忠志・・・だが


ボカン!!


ペダルをこぎ出そうとしたところにいきなり顔面にバレーボールが直撃した。
そして、そのボールをぶつけたであろう10歳くらいの少女が忠志に近づいてきた。

「ご、ごめんなさい・・・・・・・・・・あれ?忠志お兄ちゃん」

忠志にボールをぶつけた少女、令花は倒れている人が自分の兄と知って少しだけホっとした。
しかし、忠志はそんな令花をキっと睨んだ。

「あつー、令花何すんだ!!!あれ?ひの姉は!!」

「令花知らないよ」

「なっ!バカ野郎!お前のせいで逃げられたろうがぁ!!」

そういってポカリと令花の頭を小突いた。

「いったぁ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぅ・・・・・ひどいよ・・・叩くこと・・・ないじゃ・・う・・・・・・・ない・・グス・・・うえ・・・
うわああぁぁぁぁぁぁん!!!!」

「わ!待った令花泣くな!」

妹の号泣に焦る忠志・・・・ただでさえ母・令子に怒られる可能性は大なのだ。
これで妹を泣かしたことがバレた日には・・・そう考えると忠志の背筋にブルっと悪寒が走った。
・・・・だが次の瞬間・・・


パシャ


またしても先ほどの光が二人を包んだ、しかし、令花は泣くのに夢中なのだろうか気付かず、
忠志一人がその光のふり向いた・・・そこいたのは・・・


やはり携帯のムービーメールを構えるひのめの姿・・・・(しかもめっちゃ笑顔!)

「ひの姉待ってーーーー!!!」


忠志のその声を聞いた瞬間ダッシュで立ち去るひのめ。
残されたのは今にも泣きそう忠志と、わんわんとなく令花だけだった。
















ウイーン・・

無機質な機械音が聞こえるエレベーターの中、
備え付けの鏡にひのめは自分の顔見た。

(へんな顔・・・)

鏡に映る自分の表情に自嘲気味に笑みを浮かべる、そこには自信もなくあからさまに落ち込んでいる自分がいたから。

(ママが心配しちゃうわね・・・)

両手の人差し指で口を吊り上げニパっと笑ってみる。

「うん、このほうが私らしいよね♪」


チンっ


『15階』の文字にランプが点き、到着しましたと伝える。
ひのめは扉が開くと同時に勢いよく飛び出した、まるで自分を鼓舞するように。

でも、ひのめは気付いていなかった・・・・エレベーターで練習した笑顔・・・











・・・目だけは全く笑っていなかったことを・・・









                             




                                     その4に続く

──────────────────────────────────────────────────────────
あとがき

今回のコンセプトは

『優秀な姪っ子、甥っ子に差を感じてしまうひのめ』

だったんですが・・・分かりにくかったですかね?(汗)
ホントはひのめが泣くくらいの痛いシーンしようと思ったんですが、どこかでブレーキがかかってしまって・・・

あと、マンガやアニメの兄妹って大抵

『やさしい兄、兄になつく妹』って感じが多いですけど、
実際はこのくらいの年頃の兄妹って作中みたいな感じが多いんじゃないでしょうか?(汗)
少なくとも12歳の僕は弟に優しい兄ではなかった(笑)
というわけで忠志にはちょっと生意気な男の子って感じで登場してもらいました♪



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