ザ・グレート・展開予測ショー

彼の大きさ(9−2)


投稿者名:ANDY
投稿日時:(03/ 3/ 6)

「殺刃のやつ、侮りすぎだ。あのような攻撃を受けるとは」
 マリアのロケットアームにより、吹き飛ばされた殺刃にたいして、『下っ端ーズ』の一人がそう感想を漏らした。
「あら?あなたは違うのかしら。名無しのごんべえさん」
「・・・私はダガーと言う名だ。美神美智恵どの」
「くす。私も有名になったものね」
「どうもあなた方人間は自分に対して、拡張して認識するか、卑下して認識するタイプに分かれるようだな」
「そう?ちなみに私はどっちなのかしら?」
「もちろん後者に決まっている。あなたのその戦術知識や、非常さ、計算高さは軍関係者には有名だからな」
「ふ〜ん、あなたは元軍人なのかしら。それともまだ現役?」
「・・・ふ。私としたことが、こうも口が軽くなるとわな。だが、それもいたしかたがあるまい。かの大戦での二大功労者の一人と話すのだからな」
「?それは違うでしょう。あの大戦での功労者は令子と―」
「―横島忠夫、か?半分正解で半分不正解だ」
「?」
「正解部分はイレギュラー的存在だった『横島忠夫』の土壇場での化け具合だ。あそこまで土壇場で成長するとは誰も思わなかったからな」
「くす。そうね」
「不正解部分はあなたのご息女だ。ご息女は『エネルギー結晶』を持っていただけであり、あの時、たまたま『横島忠夫』との同調が可能なだけであって、彼女は決して主役ではなかったのだよ。実際、あの時彼女が何らかの理由で参戦できていなくとも、他のものとの同調した結果でも同じ決末を迎えただろうという回答が出ている。まあ、周囲に与える影響は比べ物にはならないがな」
 ダガーの言葉を聞き、美智恵は軽い衝撃を受けた。
 横島に対しては正当な評価を与えられて、納得が行っているが、まさか自分の娘に対する評価がそんなものとは。
「気分を害されたなら謝罪をする。が、事実なのでご容赦を」
 ダガーのその言葉を聞き、美智恵はどうしようもなく笑いたくなった。
「ねえ」
「うむ」
「あなた、よく生真面目すぎる、って言われるでしょう」
「・・・あなたには時空転移能力のほかに心も読む力があるのですか?確かによく言われます」
「くす。私あなたのような性格のヒト好きよ」
「恐悦至極」
「どう?どこかでお茶でも一緒にしない?」
「魅力的なお誘いですが・・・」
 そう言い、ダガーは両手に短剣を持ち構えた。
「我にも志があるゆえ、あなたと戦います」
「そう」
 残念そうに、本当に残念そうに言葉を出しながら、美智恵は西条の銃を構えた。
「わかったわ。全力でお相手をするわ」
「感謝します。では、いざ」
「尋常に」
「「勝負!!」」
 二人の声の唱和と同時に、鋭い銃声が咆えた。
 バン!バン!バン!
 美智江の正確な射撃がダガーの身体を狙うが、対してダガーは両の短剣を動かし銃弾をかわしていた。
「やるわね!」
「あなたこそ、まさか人間でここまで正確な射撃をする者がいるとは!」
 お互いがお互いを認めながらの戦いが行われていた。
「が、嘆くべき点があるとすれば―」
 バン!カチッ!!
 銃弾を撃ちつくし、新しいマガジンに交換しようとするところに―
「―あなたの武器が人間のモノのところよ!!」
―ダガーは一瞬で詰め寄った。
 
ここで武器についてだが、なぜダガーは人間の武器に対してこうコメントしたのか?
 それは、人間の武器には寿命、または弾切れという現象が起きるためだ。
 確かに精霊石を使用する銃が、魔界軍では正式に採用されている。
 これにも弾切れという現象が起きる。が、これは部隊内の力のバランスを取るためにあえてわざと取った処置なのだ。
 考えても見ればわかることだが、兵隊とは駒なのだ。
 駒の力は一定のほうが使いやすい。
 だが、個人の能力には絶対差が出てくる。
 だが、武器で統一できればどうだろう?
 そうすれば力だけは最低でも一定することが出来る。
 こう考えて、軍で支給される武器はそこそこの威力を持ちながら、寿命・弾切れというリスクを背負っている物が与えられるのだ。
 ちなみに、個人の力に左右される武器もあり、それは自分の霊力をそのまま武器として使うものだ。
 例を挙げれば、「PK−39ライフル」別名「ジョウロ」と言う武器が軍の正式武器の候補に上がったことがあったが、これはあえなく却下された。
 なぜなら、この武器は使う相手を選ぶからだ。
 銃弾は無く、使う者の霊力を放出するため、威力が一定ではないのだ。
 例えるなら、小竜姫がこれを使えば岩を砕くことが出来るとする。
 同じ武器を老師が使えば、小山を一つ消すことが出来る。
 このように使うものによって威力が変わる武器など欠陥品でしかない。
 よって、リスクを背負うが力が一定の武器が好まれるのだ。
 ここでダガーが言ったのは、弾切れを起こさぬ武器ならばよいのに、と言う意味合いだ。
 銃を使っているときに訪れる最大の弱点、それは弾切れの瞬間だからだ。
 もし、美智江の銃が無尽蔵に咆えることが出来れば?
 そう考えた末の叫びだった。
 場面を戻そう。

「く!!」
「もらっ、ちぃ!!」
「父よ、彼の者に罰を!」
 ダガーの短剣が美智恵の胸に達しようとした瞬間、ダガーは大きく後退をし、一瞬前までダガーがいた場所に雷が落ちていた。
「美智恵君、大丈夫かね?」
「ありがとうございます。先生」
 美智恵の前には、聖書を片手に颯爽と立つ唐巣が立っていた。
「な〜に。教え子を守るのが師の勤めだよ」
「まあ、素敵ですわ」
 言葉だけを聞けば和やかな会話だが、唐巣はダガーに向け鋭い視線を、美智恵もマガジンを換えつつ視線を外さなかった。
「ふむ。美智恵君、どう思う?」
「強いですよ」
「なるほど」
「失礼ですが、あなたは?」
 小声で会話をする二人に、ダガーは疑問の声を投げかけた。
「ああ、失礼。私は唐巣という。これでも神父の端くれさ」
「ほう。あなたがですか」
 唐巣の自己紹介を聞き、ダガーは驚嘆の声を上げた。
「おや?私を知っているのかね?」
「ええ、あなたもある意味では有名ですよ」
「どういう意味出だね?」
 なんとなく嫌な予感をしつつ、唐巣は尋ねてみた。
「・・・美神令子に、師のくせに馬車馬のごとく使われていつも苦労をさせられている数少ない美神令子の周りにいる常識人」
 ダガーの言葉を聞き、時が止まったように感じられた。
「は、はは。は、は、はは」
「あ、あの子は〜」
 唐巣は力ない笑い声を上げ、美智恵は後で娘を叱りつけようと心に決めていた。
「あと―」
「ま、まだあるのかね?!」
「―美神親子の師であり、その膨大な知識は侮れない、ですね」
 狼狽する唐巣を無視し、ダガーは自分の知っている唐巣に対する認識を口にした。
 それを聞き、唐巣もさっきまでのギャグ顔から一転してシリアスに変わった。
「で、そんなあなたがなに用で?」
「な〜に。美智恵君だけでは辛そうだったのでね。微力ながら助太刀さ。弾を込める時間ぐらい稼げるからね」
「なるほど」
「先生」
「な〜に、心配ないよ。足手まといにだけはならないからね」
「いえ、とても心強いです」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「くす。思い出しますね」
「何をだい?」
「昔、先生と一緒に働いていた時のことですよ」
「ああ。そうだね。では、二十数年ぶりに一緒に戦おう!!」
「はい!!」
 二人はそう笑顔で言葉を交わし、戦闘体勢を取った。
 前衛に美智恵、後衛に唐巣という布陣だ。
「ほう」
 二人を見てダガーは感嘆の声を上げた。
 先ほどとは比べ物にならない力を二人から感じたからだ。
(共鳴、というやつか。だから人間は面白い)
 そう思いながらダガーも構えを取った。
「では、仕切りなおしで」
「ええ」
「うむ」
「「「勝負!!」」」
 双剣の戦士と、昭和の名コンビの戦いがここに始まった。

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