ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER DAYS!!(10)<決意と想い>


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(03/ 3/ 6)




神界最高軍事裁判



それは神界に多大なる影響をもたらしたとされる
政治犯・テロリストの裁く為のものであり
裁判の内容、経過は決して外部に公開される事はない。

・・・・・だが結果だけは公開する必要すらないのだ。
『神界最高裁判では罪状より先に判決が決まっている。』
これが暗黙の了解であった。

事実、神界最高裁判において
死刑以外の判決が出された事は・・・・・・一度もない。


「それでは、これよりテロリスト・アシュタロスとその一味に対する
 神界最高軍事裁判を行う!!」

裁判官のハンマーが激しい音をたて、法廷内に響き渡った。

「被告人3名、ルシオラ!ベスパ!パピリオ!出廷せよ!!
 まずは罪状確認からだ。
 『主犯格、アシュタロスは霊的秩序を転覆させ、
 神族・人類を滅ぼしアシュタロスを頭とする魔族単独による霊界構造を打ち立てる為
 人間界において神・魔界への妨害電波を使ってチャンネルを遮断。
 その上で人間界でエネルギー結晶を手に入れるために数々のテロ活動を行うも
 人間界に駐在していた神族たちの活躍のより未遂。
 だが、神界、魔界、人間界において与えた影響は大きく、
 その罪は死をもって償うべきと考えられる。』」

裁判官の言葉は客観性に欠け、事実もかなり改ざんされている。
神族にとって都合の悪い事は全て消され
アシュタロスの危険性だけが強調されているのだ。

「待ってくれ!!!!
 アシュ様はそんなくだらない事の為に戦ったんじゃない!!」

「被告人に発言権は無い!!」

裁判官のあまりに一方的な言葉にベスパが思わず反論するが
その反論は一喝され無視される。

その後も同じようなものだ。
一方的にアシュタロスに不利な証拠などが提示され
ルシオラ、ベスパ、パピリオに反論は認められない。

これが
『神界最高裁判では罪状より先に判決が決まっている。』
理由だ。







ひとまずこの日の裁判は終了し、
ルシオラ、ベスパ、パピリオは再び拘留室に戻されることになったのだが
彼女達の心にははっきりと『怒り』と『絶望』の二文字が刻み込まれる結果となった。

side:ルシオラ

「・・・・くっ!
 何なの!?あの裁判は!!?
 アシュ様を言いたい放題言うだけで私達には反論さえ許されない・・・
 これが神界最高軍事裁判なのね。
 話には聞いてたけどここまでなんて・・・
 でも、ベスパもパピリオもとりあえずは元気みたいで安心したわ。
 なんとか二人に連絡を取りたいところだけど
 鋼鉄のドアに鉄格子、床には霊力封じの結界がやっかいね・・・・」

なんとかベスパとパピリオに連絡を取るべく悩むルシオラ。
鋼鉄のドアを何とかできればそのまま脱出できるし
結界を何とかできれば眷属を使って二人の居場所を突き止める事ができる。

だが、そう簡単に抜け出せるほど神族の監視は甘くない。
悩むルシオラに突然新しい見張りがルシオラに声をかけた。

「おい!!お前に差し入れだぞ!!
 妙神山の斉天大聖老師からだ。なぜ斉天大聖ともあろうお方が
 お前のようなヤツと知り合いなのか理解に苦しむが・・・・・
 どうやら聖書のようだな。
 神の教えを読んで悔い改めろと言う事だろう。」

以前、グラップスに吹っ飛ばされた見張りに代わって新しい見張りが
ルシオラのいる拘留室に聖書を投げ入れる。

その聖書を読んでみるがホントに単なる聖書だ。
ひょっとしたらなんらかのメッセージが書いてあるのかとも思ったのだが
何も書いていない。

(斉天大聖ってヨコシマが『老師』って言ってたヒトよね・・・・
 ホントに悔い改めろっていうあてつけなのかしら?
 ・・・ううん。ヨコシマが
 『普段は単なるゲーム猿だけどいざって時には頼りになるヒトだよ。』
 って言ってたしね。何か意味があるはずよ!!)

そう思って差し入れの聖書を読みつづけたルシオラだったが
何度か読み返しても怪しいところは何一つ見つからない。

(そうよね。向こうも検閲くらいはしてるだろうし
怪しい部分があったら消されるわよね。
 ・・・・・でも消した部分も無いようだけど?)

ふう、と一息つくルシオラ。
考えてみればずっと差し入れの聖書を読みっぱなしだ。
少し疲れてきたので聖書をポンっと机の上において休もうとしたとき・・・

「こ、これは!?!?」






side:ベスパ

「まさかルシオラとパピリオまで捕まるなんて・・・・
 命に代えてでもアシュ様の孤独な戦いを伝えようと思ったが
 あの2人まで犠牲するわけにはいかない・・・・
 アシュ様・・・・私はどうすれば良いのでしょうか?」

『やっぱりそんな事考えてたのね?
 ダメよ!!
 あなたが死んでしまったらアシュ様は決して喜びはしないと思うわ!』

どこからかルシオラの声が聞こえる。
何故!?ここは床に描かれている霊力封じの結界のせいでテレパシーなどの
霊的交信はできないはずだ。

ベスパが辺りを見回してみると窓の外にルシオラの眷属である蛍が一匹
旋回している。

「姉さん!!姉さんなのか!?」

ベスパが声を潜めて窓にもかかっている鉄格子に寄りかかってその蛍に話しかける。
ルシオラと同じ霊其構造を持つベスパやパピリオは簡単な情報なら眷属を使って
情報の交換ができる。ルシオラの眷属は蛍の光、ベスパなら蜂の羽音といったように。

「姉さん!なんで姉さんの眷族がここにいるんだい!?
 姉さんのとこにも結界があるんじゃないの!?」

『斉天大聖ってヒトから聖書の差し入れが来なかった?
 アレにはちょっとした仕掛けがあるのよ。
 このヒト、かなりの策士ね。』

「聖書?
 一応、ヨコシマの知り合いだし一通り調べてみたけど何もなかったよ。
 見張りのやつは悔い改めよっていうあてつけだって言ってたけどね。」





〜数分前〜

「こ、これは!?」

ルシオラは聖書そのものではなくその本のカバーに注目する。
カバーの裏側を向こう側にしてドアについている鉄格子にかぶせてしばし待つ。

そして数分後、見張りが何の物音もしないルシオラの拘留室を不審に思って
ドアの鉄格子の隙間からその中を見るが・・・・

「な・・・・!!誰もいない!?」

あわててドアの鍵を開けて中を確認する見張り!!
・・・だがちゃんとルシオラはベットの上にいる。

「どうしたの?次の裁判にはまだ早いと思うけど?」

「な・・・・・?今、確かに・・・・・」

狼狽する見張り。結局、そのまま見張りは帰っていったのだが
当然その隙にルシオラの眷属が拘留室から出ていったわけだが。

「本のカバーの裏側に誰もいない拘留室の写真を張りつけてあるだけなのに
 こんなに簡単に行くなんて・・・・・
 まっ、この部屋が相当薄暗いから仕方ないけどね。」





「・・・・・・・というわけなのよ、ベスパ。
 パピリオのところにも私の眷属が行ってるはずよ。
 さっ!!こんなところからは抜け出しましょ!!
 あんな裁判、受けてても無駄よ!!!!」

ようやくルシオラ、ベスパ、パピリオの3人がそろいそうなところで
ルシオラが脱出をもちかける。
・・・・・だがベスパの答えはNOだった。

「すまない・・・
 今はまだここを離れるわけにはいかないんだ。
 姉さんとパピリオでひとまず脱出して欲しい。」

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