ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その2)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 3/ 6)








キーンコーン カーンコーン・・・

学校へ通った事のある者ならば、必ず聞いたことのある学校のチャイムが鳴り響く。
六道女学院も例外なくチャイムによって生徒達の行動が始まるのであった。

「はぁ〜・・・やっと今日の授業も終わりぁ・・・」

ひのめは「んー」と座りながら背伸びをする。
そんなひのめに隣の席に座る黒髪の少女が、やさしい声で呼びかけた。

「ふふ、でもひーちゃんは今日掃除当番でしょ?」

「あ゛・・・・・・・そういえば・・・。あ〜あ、さっちゃんが言わなければ帰ろう思ったのにぃ」

ひのめはさっちゃんこと中学時代からの親友・江藤幸恵をジーと睨んだ。
幸恵はロングストレートの黒髪をかきながら「あはは」と苦笑いをする。

・・・・・そんな二人に割り込む声。

「あら、美神さん・・・ちゃんとクラスで決めたルールは守って下さらないかしら」

幾分高圧的な言葉尻にひのめはその声の主をジっと睨んだ。
その姿はふた昔前のお嬢様・・・という感じか、その髪型はこれでもか!というくらいカールがかかっている。
彼女の名は三世院京華(さんぜいん きょうか)。GS界の名家『三世院家』のご令嬢だった。


「三世院さんだっけ?・・・悪いけどこれから掃除なんで失礼するわ!」

そういって、ひのめは乱暴に立ち上がると机の横にかけてあったカバンを手に取った。

「ふふ、あなたにはゴミ掃除がお似合いよ・・・
所詮美神家なんて偶然成り上がった一族なんでしょ、もうすぐメッキが剥がれるんじゃないかしら」


ガタっ


次の瞬間ひのめは怒りの形相で京華の胸倉を右手掴んだ。
その行動にまだ教室に残っていた生徒達がざわつく。

「あら・・・何の真似かしら・・・」

京華はそのようなことに動じず、相変わらず見下ろすような目でひのめを見た。

「私のことをバカにするならまだいい・・・・・・・・でもママやお姉ちゃんを侮辱したのは許せない!!」

ひのめの怒号が教室中に響いた。
その声に他の女生徒達は動きが取れない

「許せない?・・・・だったらどうするの・・・・私に一度でもあなたが勝ったことあるかしら」

「くっ!」

「GSは実力が全て・・・それを分からせてあげましょうか!?」

京華はパンっとひのめの右手を払いのけるとそのまま左手に霊力を集中させる。
その拳をひのめのみぞおちに叩き込むために。

「くらいなさい!」

「しまっ!」

誰もがひのめがぶっ飛ばせると思ったその瞬間・・・


バシイイイィィィっ


甲高い音が鳴りびくと同時に霊力のスパークが起こった。
やがて、それが収まり生徒達がゆっくり目をあけ見た光景・・・

「あら・・・江藤さんまで私の邪魔をするの?」

ひのめを庇うように京華の拳を手のひらで受け止める幸恵の姿だった。

「さっちゃん・・・」

「もうそれくらいでいいでしょ?三世院さん」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふん・・・・・・・・・・・・・・まぁ、今日は江藤さんに免じて許してあげようかしら」

そういって手を引く京華。思考が基本的に『実力主義』なので自分に次ぐ霊力を持つ幸恵のことは認めていた。

「待ちなさい!」

「ひーちゃん!ダメ!」

なおも気が収まらないひのめは京華に挑もうとするが、それは親友に止められた。

「じゃあ、ゴミ掃除お願いしますね美神さん・・・・・ふふ、間違って自分を掃除しないように」

そういって京華は高笑いをあげると取り巻きの生徒を連れて教室を後にする。
残されたのは怒りで拳を震わせるひのめと、それをなだめる幸恵、そしてやっと緊張から解放された女性徒達だった。






















「あー!もうムカツク〜!!」

ひのめはガンガンと目の前にある木を蹴飛ばした。
その威力にまだ緑色の葉がパラパラとひのめの頭に落ちてくる。

「はぁ〜・・・にしても広いなぁ〜」

自分が掃除している場所、体育館裏を見渡しタメ息もらすひのめ。
そう嘆いても仕方が無いと思いながら手にしている竹ほうきでさっさとゴミを掃いた。
そのとき・・・

「おい!お前・・・・例の美神令子の妹だろ?」

急に声をかけられビクっとするひのめ、そぉと後を向くとそこには・・・スケバン(死語)が三人ひのめを囲むように立っていた。
三人とも女性とは思えないゴツい体、その一人は花粉症でもないのにマスクをしている。

(うわ〜・・・この学校にもこういう人いるんだ・・・)

入学して一ヶ月足らず、また新しい事実を知ったと一人頷くひのめ。

「何に見てんだ?・・・あんた、美神令子の妹で合ってんだろ?」

「美神・ひ・の・めよ!で、何の用ですか?」

一応先輩だろうと思って敬語を使うひのめ、もっとも心の中では「早くこの場を離れたい」と言っているが。

「聞いたぜ、お前あの三世院と揉めてるんだってな!
あたいらもあいつは気に入らないわけでよ」

「・・・で?」

「あたしらと力を合わせてみないか?あいつにギャフンと言わせてやるのさ!」

「は?」

「クズはクズなりにやれるってこと見せてやろうじゃないか!」

「・・・・・・・・・」

力説の終えた不良三人。
自分達の中では最高の演説が決まったと思っているのだろう、目を輝かせてひのめの返事を待つ三人。
そしてその返事は・・・

「興味ないので失礼します・・・」

「な!?」

ひのめは冷たい声を投げかけるとスタスタとその場を後にした。
そうはさせまいとその行く手を阻む三人。

「おい!待て!美神令子の妹!」

「・・・・・・・・・・・・・ひのめって言ってるでしょ」

「そんなことはどうでもいいんだよ!何が納得いかないっていうんだ!」

ひのめはう〜んと考え、2、3秒目をつむるとやがて三人の前に指を三本立てて言った。

「はぁ・・・じゃあ言いますけど、
一つ、三世院さんは気に入らないけど倒すなら自分一人でやります
一つ、自分をクズだって思ってる人達と力合わせる気は全くありません
一つ、私、不良って嫌いなんですよ

・・・・じゃあそういうことで失礼します」

そういって再び去ろうとするひのめ・・・だがそういかなくなるのは当然のことだろう。

「それだけいって帰れると思うのかよ!」
「言いたい放題言いやがって!」
「てめぇもムカツクんだよ!」

(はぁ〜・・・何でこう単純なんだろう・・・)

自分の挑発も一つの原因と思わないひのめはやれやれと首を横に振った。

「何だその態度はぁーー!!」

ひのめの挑発的な態度に激昂したリーダー格の不良が拳を振りかぶる。

「・・・そっちこそなめるんじゃないわよ!!」

ひのはゴウと自分の頬をかすった拳をよけると、そのまま右腕を掴み相手のバランスを利用して見事に一本背負いを決める。

「悪いけど、運動神経は並以上なんだからね!」

ひのめはキっと残りの不良を睨んだ。
その眼光にビビった不良の動きが止まる・・が・・その油断がいけなかった。

「なめんなぁーー!!」

投げ飛ばしたはずの不良が再びひのめ目掛けて拳を突き出した。
よける間はない、ガード!と思ったひのめだが・・・

「ごはっ!」

その拳はひのめの両手を弾き、見事にひぞおちへと決まった。
一瞬呼吸が止まり、息苦しさからその場に崩れるひのめ。

(しまったぁ・・・霊力が込めてあったのか・・・)

ひのめはうずくまりながらも、先ほどのパンチを冷静に分析する。
そんなひのめを尻目にリーダー格の不良はグっとひのめを持ち上げた。

「けっ!噂は本当だったみてぇだなぁ・・・・」

「う・・わさ?」

「美神令子の妹は落ちこぼれの霊能力者ってな・・・」

「!!」

「今のだってそうだ・・・全く霊的ガードが出来てねぇ・・・はん!あたいらもクズだが、もっとダメな奴がいたとは驚きだね」

そう言って大声で笑う不良三人組・・・
くやしい・・・こんな奴らに・・心でそう叫ぶひのめ。

「なのによぉ・・・・その『あんた達とは違う』っていうツラが気に入らないねぇ!」

胸倉を掴む力が更にこもり苦しいそうに顔を歪めるひのめ、
普通の人間ならここで力に負けて謝ってしまうところかもしれない・・・・だが、ひのめはやはり美神家だった。

「あんた達とは違うわよ・・・ベー」

と、舌を出して更に挑発・・・こういうところは姉・令子譲りだろうか。
だが、そんなことをすれは更に相手が怒るとは当然なことなわけで・・・

「そのきれいなツラ潰してやらぁーーー!!!!」

霊力が最大限に込められた拳がひのめの顔面に叩き込まれると思った・・・その瞬間。


「こらあああぁーーっ!!!お前ら何やってんのやああーーーーーっ!!!」

20m程離れたところから聞こえる声にハっと振り返る4人。
その声の主、六道女学院・教師、鬼道政樹がこちらに走ってくる。
今では『六道』政樹となっているが、理事長も『六道』なわけで区別をつけるため学校での苗字は『鬼道』を使っている。


「やばっ!ずらかれ!」

その声共にひのめは息苦しさから開放された。
数分振りの大地に膝ををつき空気を吸い込む。

「ごほ、ごほ・・・」

「おい!大丈夫か!?保健室行くか?」

「あ、はい・・・・大丈夫です。あの一人で帰れるんで・・・失礼します」

「そおか?ならええけど・・・。・・・・・ん?お前・・・美神はんとこの・・・」

それを聞いて肩を貸そうとする鬼道の腕を払いのけるひのめ。
鬼道はその行動に「?」と少し驚いた目でひのめを見つめた。
ひのめはそんな鬼道に振り返らず自分のバッグを拾うと家路を歩き出す・・・・




「私の名は・・・・・・・・・・・・・・美神ひのめですよ・・・」






帰り際そう小さく呟いたひのめの声は鬼道には聞こえなかった・・・・・・・





                                その3に続く













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