勿忘草を変わらぬ君に
投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 3/ 5)
勿忘草は永久の愛を示すと言う―――その花を、出来ることなら贈りたい。
今のこの中途半端な思いでは、あんまりにも情けないから見せる顔さえ持てないけれど。
いつかは胸を張って君の元へと行きたい。
流れる年月が人を変えるといえども―――変わらぬ愛を。
幻想の中の君に逃げはしない。俺は美化しない君を愛す。
飾らない素顔のあなたを―――
優しくて、少し厳しいあなたを―――
微笑が、柔らかくて
やきもち焼きで
いつも―――不安がってたあなたを―――
俺は―――愛す。
時は残酷で
君の姿を闇に隠す
色褪せない思い出と共に
ありつづける証明は
今の俺にはない
あの頃の記憶が少しでもあるなら
こんなに切なくないのに―――
乾いた風に流されて
持っていたはずの勿忘草が舞い散った
冷たい風が俺の頬を打つ
凍えた空気が俺の生気を奪っていく
俺の中から―――君が消えていく―――
「・・・まさか―――ザコ霊相手に・・・倒れることになるってなぁ・・・」
何の因果だろう―――?
東京タワー―――生と死を別した場所―――
「・・・少し―――寒いな」
返事はない。
少し、苦笑い。
「・・・ごめんな、一人にさせて―――」
身体を―――起こす。
激痛にうめく―――霊的中枢に与えられたダメージは致死傷だった。
「・・・忘れようと思ってたわけじゃない・・・。お前にふさわしい男になろうと躍起になってた・・・」
情けないほど―――小さな声。
「お前を受け入れて―――次へと進むんだって―――」
這うように―――彼女の元に向かう。
風は、強かった。
「・・・自分勝手と―――笑うかな?」
いや―――
「・・・でも、そうしないといけないって思ってた。―――俺の為に、お前の為に」
言い訳か―――と、心中で呟く。
知れず―――涙が流れた。
激痛のせいで―――流した涙だと嘯いた。
「・・・何で、こんなことを言うんだろう?・・・ここにおまえはいないのに・・・こんなことを言ったって―――感傷でしかないのにっ!!」
「忘れていくのが怖かったんだっ!!俺の中で―――ゆっくりとお前の輪郭を掴めなくなっていくのがっ!!」
「いつまでも、本物のお前を心に映していたいと思ってたっ!!でも、俺の中で記憶が変わっていってる気がするんだっ・・・本当のお前を見ていない・・・最低だ・・・俺ってさ・・・」
―――風が吹いた。
優しく―――身体を包み込む、いっそ優しい倦怠感。
悲しいほどに生を感じさせる激痛―――
ゆっくりと―――それが消えていく。
「・・・何て―――勝手なんだろ?」
「あの世に行けば―――お前に会えるとか・・・思ってたのかもしれない・・・」
「何時になく弱気だな、俺―――」
「今更・・・だけどな」
「・・・油断したっ!!畜生・・・」
口中でくぐもってしか聞けないほどに小さな声。
もう、動けない。
「・・・生きたいよ・・・見苦しいほど生きて・・・お前と会う―――お前を幸せにしてやりたいよ・・・何で何だよ・・・何で・・・何で・・・ちくしょう・・・」
「―――横島?どうしたの?」
「・・・ん?」
「・・・うなされてたから―――!・・・泣いてるの!?」
「あ、いや・・・何でだろうな?」
「嫌なことがあったんなら―――何でも私に言って・・・私・・・頼りないかもしれないけど・・・あなたの妻なわけで・・・(ぽっ)」
「ははは・・・大丈夫・・・。嫌な、夢を見たんだ。凄く、嫌な・・・」
今までの
コメント:
- 今回の作品は意味深ですね。
ルシオラが死んだ世界の横島くんの心を夢で感じたのか?それともただの夢だったのか…
う〜ん……それにしてもやっぱり最後に出てきた横島くんの妻は……
とっても面白かったッス!投稿お疲れ様〜! (リュート)
- 得てして死した想い人の記憶と言うのは、時と共により高い次元へと昇華されてしまうものなのですが、そんな形で自分のルシオラに関する記憶が代わってしまうのが横島クンとしてはイヤだったのでしょうね。飽くまで生きていた時の、ありのままのルシオラを思い出として残したいとするあたりが彼「らしい」と思いました。妻に心配をかけまいとするあたりはいいのですが、逆にそれが夫婦仲を悪くしないかと危惧しているお節介なkitchensinkでございました(笑)。投稿お疲れ様です♪ (kitchensink)
- さて、またまた痛めの話が・・・
最後に夢だったとなっていますが、このまま死ぬかと思ってはらはらしたですよ。
時が癒す心の傷、でも癒える事が怖い・・・
シリアスです。
実はこの妻自体がルシオラ様ではと思ってしまう・・・
だったら又話が違ってきますな。 (KAZ23)
- 思い出ってのは、美化・風化するものでして。
私も記憶の中の昔の彼女達は美人ばっかりで・・・写真を見ると現実に溜息をつくわけで・・・(爆)
最後の奥さんをveldさんは誰を念頭に書いたのかを検討したのですよ。暇でしたからw
ポイントは、『呼び方が横島』、『自分を私と呼ぶ』、『語尾に特徴が無い』なわけで。
呼び方が横島ってのは、エミかワルキューレくらいしか浮かばずw
そして二人とも自分はアタシ、或いは私。
語尾の特徴が無いという時点でエミ脱落。
つまり、奥さんはワルキューレに決定しますたw
ただ口調にちょっと違和感が・・・謎だ。 (NAVA)
- 本命忘れてた!!タマモがいた?!そうだ!全ての条件を満たしそうなのはタマモだった!!
・・・でも、『あなた』じゃなくて『アンタ』のような・・・。
まぁ、希望ということでw (NAVA)
- リュートさん、kitchensinkさん、KAZ23さん、NAVAさん、コメントどうもっす。
というわけで、コメント返しをば。
・リュートさん
意味深ですな。というよりも、どう受け取るかによっていろいろ変わってくると思います。それによって幾通りの解釈が生まれるのではないかと。だから、限定するのは少しもったいない気もします。
ですから、敢えて、私的な解釈で言わせて貰うと。
残念ながら、その二つの解釈は正しくありません。私の中では。
そして、それは最後の妻が誰なのかによって分かるものでもないです。・・・近いのは前者、でも・・・違います。 (veld)
- ・kitchensinkさん
過去は誰しも美化するものです。そして、その美化した人の事を思うもの。それは、その本人ではない、違う誰かを思っていることになる。と、思うので。
それが、間違っているとは思いませんが、しかし、それは別人でしかない、と。
ありのままの彼女を残そうとするのは難しく、そして、思い出とは忘れてしまうものです。どれほど思っていても、色褪せてしまう。思い出すと作り出すは違うわけですから―――余計に。
夫婦仲は上々でしょう・・・といってもいいのか分かりませんが。これは後ほど。 (veld)
- ・KAZ23さん
これ、痛いです。かなり。
夢かどうか・・・彼はそれを夢と思ってるかもしれないけれど、本当はどうだろう。・・・と。
時が癒す心の傷。そう、喪失感というなの心の空白はやがては埋められていくものです。それは、作り出された『素晴らしい思い出』というもので。
美化しないということは、ありのままの彼女を思いつづけると言うこと。つまり、思い出が減っていくことはあっても、増えることは無い。時が経てば経つほどに、彼女の面影は消えていくわけです。―――だから、怖い。
珍しく、シリアスです。
ちなみに、KAZ23さん、正解。この妻は、ルシオラです。 (veld)
- ・NAVAさん
むぅ。口調から呼び方で限定されるとなると、まず最初に除外されてしまったことが気になるんですが・・・ルシオラ。まぁ、話の中でフェードアウトされてしまっている部分もあるので仕方がないかと・・・。
タマモ様、違います。最近、タマモ様=お揚げになってしまい、シリアスが書けない今日この頃。
で、前半部。これは横島クンのいうような、夢ではありません。あえて言うならば、後半部こそが夢です。致死傷のダメージを受け、東京タワーの上で昏睡状態に陥っている横島クンの見た夢。―――残酷ですかね・・・このラスト。 (veld)
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