ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 3/ 5)


西暦2015年 5月某日・・・

人類は格段に科学を進化させ、その発展をますます強大ものへとしていった。
宇宙進出は遥か木星圏まで進み、ついには夢の自律思考アンドロイド、ドラ●もんの開発に成功・・・・









という、ことはなく。
文明レベルは20世紀末からそんな進化したわけではない。
電子機器の小型や、医療技術の進化が進んだくらいで人類自体の生活の変容などあまり変わってはいなかった。

そして物語は日本・東京から始まる・・・











「はぁ〜、今日もまたダメだった・・・」

少女は誰に言うでもなく一言呟きながらコツっと目の前の小石を蹴った。
年は15、16歳。髪は亜麻色長さはセミロングより少し短いという感じだろうか、
スタイルはスレンダーという言葉があてはまり、胸、腰、ヒップの成長も年相応。
そして服装は・・・胸についてる校章のバッジのとおり、『六道女学院』のブレザー姿だった。

「私って本当に美神家なのかぁ〜」

少女・・・『美神ひのめ』はまた小さく囁いた。
土曜の昼下がり、半日授業の帰りということもあり、まだ陽は高くぽかぽかと暖かい光がひのめに注がれた。
もちろん世間は週休二日制なのだが、霊能科はその授業内容から相変わらず第2第4土曜日しか休みにはならなかった。

「はぁ〜、我ながらよく霊能科に入れたものよねぇ・・・」

今日の授業内容を思い出すひのめ。
霊能格闘授業だったのだが・・・・・結果はレベル70の式神にいとも簡単に投げられてノックアウトという悲惨な内容だった。
しかもクリアできなかったのはクラスでひのめだけ・・・
その事実がまたひのめの心を落ち込ませるのだった。

「ただいまー」

なんだかんだで我が家であるマンションに帰宅し、ひのめは玄関のドアを無造作に開けた。

「おかえり」

それに気付いた本日は休暇の『美神美智恵』が笑顔で出迎えた。そして・・・

「あ、ひのめおかえり〜」

靴を脱ぎ家に入ったひのめが見たのは

「あれ?令子姉ちゃん」

居間のソファーでだらしなく寝転がりながらファッション誌をパラパラめくる姉・美神令子の姿だった。
いや、正確には13年前から『横島』令子となっているが。
その態度はだらしない主婦を形容してるようだが、体型、顔立ちはとても30代とは思えないほど引き締まり、若く見える。
髪は以前のようなロングヘアーではなく肩のあたりでそろえていた。

「はぁ、どうしたのよ、また忠夫義兄さんとケンカしたの?」

夫である横島とケンカするのはいまや珍しいことではなく幾度と無く怒りながら実家へと帰ってくる令子。
もちろん、すぐに「すいません、すいませんウチの令子がお邪魔してませんか!?」とヘコヘコしながら横島が迎えに来るのだが。

「あんたねー!たまに実家に来るくらい、いいじゃない!」

「たまに・・・って、お姉ちゃん2週間前にも来てたし・・・」

「あ〜、細かいことは気にしないの!」

ひのめはやれやれとタメ息をつくとバッグを自室に置いてくる為居間を後にした。
カチャっとドアノブに手をかけたとき

「あ!ひのめお姉ちゃんこんにちは〜」

「え!・・・あ、令花ちゃんも来てたんだ。ふふ、こんにちは」

ひのめは目の前にいる10歳くらいの女の子に笑顔で挨拶をした。
美神令花・・・横島と令子の三番目の子供で、その姿は小さい令子という感じか。服装は動きやすいオーバーオールで髪型はポニテール。

横島と令子の間には三人の子供がおり・・・長女・蛍(13歳)、長男・忠志(12歳)、そして次女・令花(9歳)、
そして横島と令子を合わせての五人家族となっていた。

「着替えてくるからちょっと待っててね」
「うん♪」

令花は素直に返事をする、その愛くるしい笑みにひのめの胸がキューっとなったのは秘密。


「ふふ、令花ちゃんは相変わらず可愛いなぁ〜」

年は近いが可愛い姪っ子の笑顔を思い出しひのめの口から笑みが漏れた。
令花だけではない、蛍もまた実の姉のようにひのめのことを慕ってくれていた。
しかし・・・

「忠志・・・」

甥っ子の名を口にする。
令子の子供から見ればひのめは血縁上叔母ということになる。
だが、まだ女子高生のみそらで

『ひのめおばさん』

などと呼ばれては堪らない・・・・ということで幼少の頃より三人には『ひのめお姉ちゃんって呼んでね』
と調教・・・もとい、言い聞かせてきたのだが・・・・忠志だけは生意気盛りなのか、未だにからかうように
『ひのめおばさん』と言ってくる。
もちろん、次の瞬間にはひのめのガゼルパンチが飛ぶのだが・・・。
そんな光景を見て母の美智絵が

「あら、何か懐かしい光景ねぇ」

と呟き、その言葉に横島と令子が苦笑いを浮かべるのがお約束となっていた。

「ったくぅ・・・忠志も蛍ちゃんや、令花ちゃんみたいに素直な子になればいいのに」

はぁ、と一つタメ息をついてひのめは再びドアを開けた。

「あ、ひのめ。今ちょうど、クッキーが焼きあがったところなのよ、一緒に食べましょう。
ほら、令花もいっぱい食べなさいね〜♪」

「わーい!おばあちゃんのクッキー令花大好き!」

「ホント!?もう可愛いわね!」

そういって令花を抱き上げる美智恵。
その光景にひのめと令子は・・・

((ババ馬鹿))

と、同時に心で呟(つぶや)いた。

「今日は忠夫兄さんは?」

ひのめはヨっとソファーに腰をかけると令子の声をかけてみた。

「ん?ああ・・・・なんか、急な仕事とかで九州に飛んでったわ」

「相変わらず忙しいみたいねぇ」

「蛍は友達と遊びに行っちゃうし、忠志はサッカークラブだし・・・もう暇で暇で」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(こんな嫁だけにはならないどこう)」

心に強く誓うひのめだった。
そのとき・・・・



ちゃら〜ちゃちゃ〜ら〜♪




ひのめも聞いたことのある最新ヒット曲のイントロが聞こえてきた。
確か歌ってるのは近畿剛一・・・・だったけ?と思っていると

「はい、もしもし美神&横島除霊事務所です」

令子はバッグから携帯を取り出すとピっとスイッチを入れた。
どうやら、事務所にかかってくる電話を携帯に回ってくるよう設定していたらしい。

事務所名で『美神&横島』と使っているのは、この業界で『美神』のネームバリューはやはり高く、
お客が食いつきやすいという令子の狙いでもあった、
そして10年ほど前から価値が急上昇した『横島』という名も使わぬ手はないということだった。


「ええ、・・・・はい・・・・それでは契約書のほうを書きますので・・・・はい・・・・では、今日の4時ですね・・・はい、分かりました・・・
では、お待ちしています」

ピッ

美神は携帯の電源を切るとすばやくバッグへと戻した。
そしてだらしなく脱ぎ捨ててあった上着を着ると美智恵に声をかけた

「ママー!ちょっと仕事が入ったから帰るわね〜」

「あら、そう・・・じゃあ令花は私が面倒みててあげるわね♪」

「契約書書くだけだから連れて帰るわよ(汗)」

「そんな!令花はおばあちゃんと一緒にいたいわよね!」

「おばあちゃん・・・苦しいよぉ・・・」

ギューと美智恵に抱きしめられる令花が助けを求めるように手を振った。
やれやれとひのめが見ていると・・・



プルルルルル・・・プルルルルル・・・プルルルルル・・・プルルルルル・・・


今度は自宅の電話がコール音を流した。
チラっと令子と美智恵を見るが出れる状態ではないほど騒いでいる。
ひのめは今日何度目かのタメ息をつき受話器を持ち上げた。

「はい、もしもし美神ですけど・・・」

『もしもし!あ、ひのめちゃんかい!?西条だけど・・・至急先生に代わってもらえないかな?』

「あ、西条さん・・・ちょっと待って下さいね。・・・・・・・・・・・・・・ママー、西条さんから電話ぁ〜」

「え!西条クンから?」


それまで令子と令花を取り合っていた美智恵の表情が少し真剣なものになった。

「もしもし、代わりました・・・・・・・・・・・・・・ええ・・・・・はい・・・。!!・・・分かったわ、至急そちらに向かいます。
ええ・・・それまで耐えてちょうだい・・・・じゃあ」

カチャン


「西条さん何かあったの?」

「ふぅ・・・ひのめにはちょっと難しい政治の問題よ。
私も少し出かけるから、あとはお願いね」

「う、うん」

先ほどまでとは違う母の表情に少し戸惑うひのめ。
こうやって公私のけじめがつけれる母は凄いと思いながら、ひのめはそんな美智恵に日頃から畏敬の念を感じていた。

「さ、出かける前に令花に挨拶♪・・・・ってあら?」

美智恵が再びニヘっという表情で振り向くが、そこにはかわいい孫・令花の姿はなかった。ついでに令子の姿も。

「ああーー!令子逃げたわねぇ〜〜!!!」

やっと事実に気付き怒りをこめて叫ぶ美智恵、さっきのオカルトGメン幹部の顔はどこにいったのだろう・・・とひのめは心で囁いた。











30分後

やっと美智恵も令子もいなくなりホっと一息つくひのめ。
ソファーに深く腰をかけると目の前にあったTVリモコンを持ち上げピっとスイッチを入れた。
だが、総じて土曜の昼過ぎの時間の番組は面白いものはあまりない・・・

ぴっ

ぴっ

次々とチャンネルを変えていく、そして、あるCMに目が止まった。




『ガチンコGS道!!次回も衝撃の出来事が!!!』

熱いナレーションと共に流れる画面、そこには・・・

『オレらは早くGSになりてぇんだよ!!』
『GSをなめんなぁ!ガキどもぉ!!!』

受講生を神通鞭でぶっ飛ばす姉・令子の姿。






「そういえば、お姉ちゃんTVにでてたっけ」

CMの内容にクスリと笑みを漏らす。
しかし、そのまま続きを見ることなくテレビの電源を切った。
リモコンをテーブルの上に置くとその隣にある皿に盛られたクッキーを口に運ぶ。

(お姉ちゃんは世界最強のGS・・・・ママはオカルトGメン最高責任者・・・・
そして・・・・・私は・・・・・・・・・)

ひのめはそのままゴロンとソファーの上に横になる・・・

サクっと噛み砕いたクッキーの味は分からなかった・・・・・・・

           



                                        次回へ続けっ!!



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