ザ・グレート・展開予測ショー

KINKIステーション悪霊事件 ―1後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 3/ 4)

<前半からの続き>


「近畿君おはよう!」
「おはよう、近畿君♪」
「おはようございます〜♪」

それは女性の3人組だった。

「やあ、ミユちゃん、椿ちゃん、翔子ちゃん、みんなおはよう♪」

すると、銀一は爽やかな笑顔を浮かべながら返事を返す。
横島はその横で頭をひねっていた。
この娘達ってやっぱり芸能人だよな?誰だっけ?なにしろ1年も日本の文化からは離れたからな〜・・・
そう。横島はすっかりその方面に疎くなっていたのだ。特にこの1年で登場したような芸能人には全滅と言っていいほどだった。
でもな・・・流石に芸能人に「あなた誰です?」って聞くのも失礼だよなぁ・・・

「アレ?近畿君、こっちは誰?」
「AD?」
「エキストラじゃ無いの?」

3人娘は横島に気がつくと、遠慮なくそんな事を言い出す。
勿論、横島は「どーせどーせ」状態だった。
ちなみにこの娘たちの素性を説明すると・・・
それぞれのフルネームは朝井ミユ、井上椿、上田翔子。
3人組の歌手で、ユニット名は「シャイン」という。1年前、丁度横島がアメリカに渡った後で登場。一気にブレイクした。
だから、横島は彼女たちを知らない。帰ってきてからでも、テレビなんかはあまり見ずに仕事に打ち込んできたせいもある。

「あ、あれじゃない?お笑いの!」
「え〜?・・・あ!分かった、マジシャンズの動きの面白い方の人でしょう?」
「ああ!そうそう、あの動きの面白い人ねだね!」

3人娘の話は違う方向に向かいだした。

「いや、こいつは・・・」
「マジシャンズって何処のお笑い芸人じゃ!?そんなに俺に似てるのか!?やっぱり俺はお笑い芸人かーーー?!!」

銀一がフォローを入れる前に、横島の方がキレる。

「ああ!?こら横っち!騒ぎを起こすんや無いで!落ち着け!落ち着くんや!」
「あれ〜?違ったの〜?」
「じゃあ誰?やっぱりAD?」
「近畿君の知り合い?」

流石に芸能人。この程度では取り乱さないらしい。なおかつ、全く悪びれてもいないようだ。

「ちくしょー!!」

―― ダダダダダダダダ ――

「ああ、コラ横っち!何処行くんや?!」
「トイレじゃーーーーー!!わ〜〜〜〜んっ!!!」

横島は、泣きながら駆けて行く。その背中に声をかけた銀一だったが、横島はそのまま振り向かず行ってしまった。

「はぁ〜・・・トイレの場所なんて知っとるんかいな?まったく・・・あ、ごめんね3人とも。あいつの事は気にしないでいいからね。今日は宜しく♪」
「あ、待ってよ近畿君。」
「ごめ〜ん!俺もボチボチ準備が有るんだ〜・・・」

引き止める3人組をあとにおいて、銀一は横島の行った先に駆け出す。
折角の「近畿君」に振られた格好になった3人はちょっとだけ不満げにしたが、すぐに気を取り直して別の出演者の所に向かった。

「あ、秋田く〜ん♪」
「おはよう〜♪」
「おはよう!今日も決まってるね♪」

ちなみに狙いは、甘いマスクの人気者だけである。

・・・・・・・・・・・・





「・・・な〜んてな。あ〜あ、やっぱり銀ちゃんと一緒だと惨めになるなぁ・・・」

スタジオから少し離れた場所で、横島は階段に腰掛けて顎に手をつきつつため息を吐いていた。
どうやら、さっきの泣きは半ば演技だったようである。こんなだから芸人て言われるのにね・・・

「やっぱりバックレるか?・・・・・・」

ちょっとだけそんな事を考える。

「・・・・・・流石にそれはまずいか。」

が、直ぐに思い直した。これは落とし前なんだから、キチンと始末をつけないといけないだろう。
そんな事を横島が考えていると、右のほうから女の子が歩いてきた。

―― あれ? ――

何気なくそちらを見た横島。横島はその娘に見覚えがある事に気がつく。
綺麗な黒髪を片側でまとめた、スレンダーな美人。まだ高校生だった頃に何かの番組でみた顔だ。
たしか・・・

「きゃっ?!」
「うあっ?」

と、丁度横島の前でその娘が足をもつれさせて体勢を崩す。

「あぶっ!」

横島は咄嗟に腕を掴んで引っ張る。女の子はクルリと反転して、横島の腕の中に引き込まれた。

―― あ ――

ちょっと・・・ほんのちょっとだけ、横島は昔を思い出す。
心の中でそんな自分に苦笑した。

「大丈夫か?気をつけないと駄目だぞ?」
「あ、すみません。助かりました。あの、有り難うございました!」

不可抗力とは言え、男に抱きかかえられたことが恥ずかしいらしい。
直ぐにパッと横島から離れ、ペコペコと頭を下げて礼を言う。

「ああ、いや・・・怪我が無いなら良かった。」
「あの・・・失礼ですが名前教えてもらって良いですか?あ!私の名前は・・・」
「ああ、確か・・・葛井リオさんでしょう?」

横島は名前を思い出して聞いてみた。

「あ!私のこと知ってるんですか?有り難うございます。嬉しいです!」
「いや、最近のは知らないんだけど・・・1年くらいまえにドラマに出てたよね?」
「わあ!『緋色の雨』ですね?あの時ってちょっとした端役だったんですけど、覚えてくれてるんですか?」

リオの表情が輝く。

「ああ、確かに端役だったみたいだけど・・・とても良いと思ったんだ。あ、いや!おれ素人だし、専門的な事なんて何もわかんないけどさ・・・」
「いえ!嬉しいです。有り難うございます。あ、それで・・・すみません。お名前聞いて良いですか?」

横島の両手を握って、10回くらいブンブンと振る。
そのあとでもう一度名前を聞いてきた。

「俺、横島忠夫って言います。え・・・と、単なる一般人なんで、名前覚える必要なんて無いですよ?」
「そんな事・・・」
「お〜い・・・横っち〜・・・」

そこで、遠くから銀一が呼ぶ声が聞こえてくる。

「おっと、ボチボチ行くか・・・・・・ごめん!呼ばれてるから行くわ。じゃあ、頑張ってね。応援するよ。」
「あっ!あの・・・」

横島は銀一の声のした方に駆け出した。
あっというまに、その場所にははリオだけが残される。

「・・・・・・行っちゃった。」

ポツンと呆気に取られた表情で呟く。

「あ!?いっけない、リハに遅れちゃう!」

それも一瞬だけで、リオは急いで現場に駆け出す。
その現場というのは・・・

・・・・・・・・・・・・





このとき、とある計画が企てられていたのだが・・・
今はまだ誰も・・・
それに気がつくものはいなかった。


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