ザ・グレート・展開予測ショー

KINKIステーション悪霊事件 ―1前半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 3/ 4)

「おー!これが撮影スタジオってやつかー・・・」

初めて間近でジックリと見るテレビ局の撮影スタジオ。
横島はすっかりおのぼりさん状態だった。

「あ〜・・・こらこら横っち!そないにキョロキョロするもんや無いで!」

一緒に入ってきたのは幼馴染にして親友の銀ちゃん事、アイドル俳優の近畿剛一。
最近は本格派俳優としての地位もすっかり定着した感のある、おしもおされぬ芸能界の花形スターの一人である。

「いや〜・・・やっぱ華やかなもんだ〜!銀ちゃんはこういう所で働いているんだな〜・・・」

横島は相変わらずキョロキョロと辺りを見回しながら落ち着かない風であった。
銀一の声も全然入っていっていないようである。

「まったく!・・・あんまりみっともないとこ晒すんやないで?」
「あ〜、わ〜ってる。わ〜ってるって!今日は銀ちゃんの連れだからな。あんまし変な事したら銀ちゃんにも迷惑かけちまうし・・・大人しくしてるって。もともと、あんまし乗り気でもないしな。」

そう、横島はこの話にはあまり乗り気では無かった。しかし、それでもこの話を断ることが出来なかったのである。
何故か?
その理由は、横島が1年間も音信普通のまま姿をくらまして、銀一、他さまざまな人間に大変な心配をかけてしまったからだった。
落とし前をつけると言う形で、それらのメンバーへの謝罪の意味もこめて、横島は彼らの言う事を暫くは無条件で聞いているのである。
そして今日は銀一の番と言う事で、彼のいいつけの元、彼がMCを努めるゴジテレビの人気番組「KINKIステーション」の公開録画へとやって来たのだった。
番組のコーナーの一つに、「○○さんの幼馴染」というコーナーがある。
これはゲストの芸能人の幼馴染を連れてきて昔話を暴露したり、一緒に簡単なゲームをしたりするコーナーだ。

「銀ちゃんの昔話か・・・一緒にスカート捲りした話とかしてもいいのか?」
「ん〜・・・ま、ネタとしては割合ウケるやろ。ええんとちゃうか?」

横島としては意地悪で言ったつもりだったが、銀一は意外なほどにあっさりと答える。それが横島には意外だった。

「いいのか、銀ちゃん?イメージ悪くなったりせんのか?」
「あ?なんや、スカート捲りくらいなんでもないやろ?子供の頃の話なんやからな。やんちゃな子供時代っちゅうてなかなかにうけるモンなんやで!」
「ほ〜・・・銀ちゃんもやっぱり芸能人なんだな。ちゃんと効果とか考えてるんだ・・・」

横島は感心して呟く。

「これくらいは、普通だれでもやるもんや。なんたって自分の番組なんやからな。どうすれば面白くなるかは自分で考えないかんのや!」
「あれ?そういうのってプロデューサーが考えるんじゃ無いのか?」

横島の頭の中に、某有名プロディーサーがスタッフに指示を飛ばすシーンが浮かぶ。

「まあ、基本的な部分はそうや。けどな、特にこういうMC役なんかやるとそれだけや無いねん。」
「それだけじゃ無い?」
「せや!枠分の時間を貰ってな?それの中で自由に構成せないかんねん。これが上手く出来んと、次から呼んでもらえなくなるやろ?だから真剣勝負なんや!」

そう語る銀一を、横島は少し眩しそうに見ていた。
普段は幼馴染の友人としか見てなかったが、こうして見るとやはり売れっ子芸能人であると思う。

「近畿君!」
「あ、おはようございますプロデューサー。今日も宜しくお願いします。」

現れたのは、あごヒゲも立派な40歳くらいのがっしりした男だ。ダンディーなオジサマなんて言われそうな見た目である。
横島は思う。
おお、なんていうか業界人って感じだ!
その男にはえもいわれぬ雰囲気を感じる。
これが芸能界で成功している人間なのか!

「アレ?こっち見ない顔だね?誰?新人のお笑い芸人?」
「ガッ?!」

いきなりお笑い芸人されて、横島はこけた。
どうせ俺はお笑い芸人さ・・・
そして銀ちゃんはモテモテの格好良い俳優で・・・

「あ、いえ・・・こいつは俺の幼馴染なんですよ。」

何やっても女の子にキャーキャー言われる銀ちゃんと・・・
何やっても笑いを取れて美味しい俺・・・

「ああ、そうなんだ?ゴメン、ゴメン!ははは・・・」
「良いんだ良いんだ、どうせ俺なんて・・・・・・」

横島はすっかりいじけてしまった。

「ああ、ホラホラ横っち。そんなところでいじけてないで挨拶してくれ!こちら、ゴジテレビの坂田プロデューサーさん。」
「ああ、宜しく。さっきは済まなかったね。KINKIステーションのプロデューサーをしている坂田だよ。」

坂田はそういって右手を差し出す。

「あ、はい!横島です。こちらこそ宜しく。」

流石に横島もいじけるのを止めて、右手を差し出し軽く握り握手をした。
坂田さんは、笑うと意外に人好きのする表情である。
横島は意外に良い人そうだと思い直していた。

「あ、そうだ!これどうぞ。」

そこで思い出して、横島はカジュアルジャケットの内ポケットから名刺を取り出して渡す。

「美神&横島除霊事務所、副所長横島忠夫・・・・・・へぇ?おたくGSですか?しかも副所長さん。そりゃあ凄い!」
「ああ、いえ!副所長といいましても1ヶ月前になったばっかりで!全然たいしたこと無いんで!」

思いがけず感心されたので、横島はわたわたと手を振ってそう言い出した。

「あ、でもうちの所長の美神さんは業界でもトップクラスのGSですから。今度何か、霊障でお困りの事がありましたらご利用ください。」
「ああ、有り難う。覚えておくよ。」

坂田は名刺を懐に入れながらそう言う。
副所長になった横島は、自分で考えて名刺を配りだした。とにかく新しく出会う人には渡すようにしている。
ちなみに、まだ成果は無い・・・
これが未を結ぶのはまだまだ先の話となるだろう。

「現役のGSかぁ・・・その辺もいじれば番組も盛り上がりそうだね?」
「ははは!勿論その辺も考えて有りますよ。とりあえず公開前のリハで、簡単に見せながら説明しますので。」
「ああ、近畿君の仕掛けなら心配無いよ!今日も期待してるからね・・・っと、じゃあ又後でね。」

そう言うと、坂田はスタスタと行ってしまった。

「うわ?早足だな!大阪人みたいだ?!」
「この業界にいればみんな早足になるで。いつでも時間が足らなくなるのが常やからな。少しでも無駄にしないようにっしてるんや。」

等と話しているところに、また別の人たちが近づいてくる。


<後半に続く>

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