ザ・グレート・展開予測ショー

僕の精一杯の黒で。


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 3/ 4)


 NAVAと、桜華さんに捧ぐ。文句は受け付けません、お二方に比べれば稚拙ですが、僕の精一杯です。(をい)

 普通の人は―――注意してください。まぁ、二つ混ぜて五十で割ったくらいです。(謎)



 金縛りにあった。
 霊能力者がそんな目にあうとは何事かとおっしゃる人もいるであろう。
 が、時たま、こんな根性があるんだか、馬鹿なんだか分からない悪霊がつくことがある。
 こんな連中の大半は、ポルターガイスト起こす力も無いから驚かして自分の存在をアピールしようといきがる連中が殆どだ。ごく希に、暇つぶしにこんなことをする強力な悪霊がいるが―――ここまで聞いてくれたら分かるだろう。つまり、馬鹿と言うことだ。

 俺は目を開けると、右手に栄光の手を編み出し、何も無い空間を凪いだ。

 ―――悲鳴も、何も、聞こえない。

 しゅっ・・・と、僅かな何かの息遣いが聞こえる。
 底冷えする―――気配。殺気ではないと思う、思いたい。
 風斬り音と共に、首筋に何かが近づいてくるのを感じる。
 前方に身体を丸めながら回転する。―――まぁ、早い話が前転したわけだ。雑然とした部屋の中でそんなことをすれば、なにやら嫌な音とかが背中に響いてくるのが分かる。
 ―――そういえば、スナック菓子を袋ごと置いていた気が―――

 振り向く。が、暗闇の中なので、相手の姿が見えない。

 ただ、底冷えするような冷たい視線が、俺の首筋を狙っているのを感じる。



 ・・・首筋?

 霊ならどこかに特定して攻撃するなんてことがあるだろうか?
 いや、あったとしても、霊的中枢部のはずだ。
 ―――首筋?

 静かに―――息遣いを聞く。

 息遣い?

 霊にそんなもんがあるはずが無い。

 ・・・ということは―――人間!?

「誰だっ!?てめえっ!!」

 前方に見える闇の塊に向かって問う。蛍光灯の紐に触れるにはいささか―――距離がある。視覚で判断することは難しい、いや、無理だ。

 返事は無い。当然ではあるが。

「この家に・・・お前の欲しいもんなんて無いぞっ・・・そう・・・絶対にないぞ・・・」

 何故か末尾は尻つぼみだった。ついでに言えば、涙声だった。

 「・・・って、突っ込めやっ!!」

 返事は無い。ただ―――まただっ!!



 首筋っ・・・光も無いのに煌く―――三角形の―――!?

 牙、そうかっ、こいつはっ!!


 「シロかっ!?」

 いや、違うっ、栄光の手で透かして見えた体躯はやせぎすではあるが男のもの。

 ん!?栄光の手?

 ―――俺はあほかっ!?これで光を作ればいいじゃねえかっ!!


 「・・・なぁ、俺に何をしたいんだ?」

 「・・・」

 返事は無い。

 痩せぎす、牙、男―――?

 「ピートォォ!!」

 はっ、と。その体が震える。

 その間に栄光の手で横薙ぎする。先ほどとまるで同じスピード―――避けられる。
 そして―――再び首筋に感じる―――寒気。
 
 「悪いがっ!!」

 そして、その手を戻す。もう片方の手に纏われた―――霊気の盾。

 「!?」

 二つが接触し―――光が放たれる。

 そして―――その瞬間、悲鳴が部屋を震わせた。





 「どうしたんですっ!?よこし・・・ま・・・さ・・・ん?」


 隣の部屋から駆けつけてきた子鳩が見たのは―――

 横島を押し倒すピートと―――
 ぎゅっと目を瞑っている横島の姿だった。

 「・・・あ・・・あ・・・あ・・・あ・あ・あ・ああ・あ・あ・あ・あ・・・・」

 しばらくうめいていたピートが・・・ゆっくりと体を起こす。

 「・・・あ・・・ここは・・・横島さん?どうしたんですか?」

 「こっちが聞きたいわ・・・」

 「あ・・・あ・・あ・・あ・あ・あ・あ・あ・あ」

 指を差したまま固まった子鳩、そして、今ある二人の体勢―――

 横島が、子鳩の姿に気付く。

 「・・・子鳩ちゃん・・・?」

 そして、ぎぎぃぃぃと、錆付いたロボットが首を回したかのような音と共に、押し倒した体勢を維持しつづけるピートに視線が向く。

 にこっ、対女の子に関しては無敵のピートスマイルも、今の現状の横島にはおぞましいものにしか見えない・・・。
 そして、またぎぎぃぃぃぃ・・・と子鳩に視線を向ける。

 にこっ、対女の子に対しても、男に対してもあまり効力はない(身近な女の子には別らしい)横島スマイルが子鳩にはとても遠いものに感じた。

 ―――横島さん。私の知らない場所へ行ってしまったんですね・・・。


 あんまりな結論だった。








 「夢遊病―――?」

 「少し違うね。夢で遊び、病に惑ふの薬あるよ」

 「・・・厄珍さん、つまりどういうものなんです?」

 「つまりは、ね?夢の中で思うことが眠っている間にやってしまうと言うことよ」

 「・・・成る程」

 「夢の中で思うこと・・・例えば、おキヌちゃんの家にいる狐娘」

 「タマモちゃんのことですか?」

 「そ、彼女はいつも頭の中、お揚げでいっぱいある」

 「そうね・・・うん」

 「ということは夢の中でもお揚げ食べてるね」

 「それは・・・どうかと」

 「その場合、夜もお揚げを食べるね」

 「・・・厄珍さん。このお薬一錠下さい」

 「一錠だけあるか?」

 「そうですけど。何か?」

 「・・・サービスあるよ。いつもご贔屓にしてもらってるから」

 「あら・・・有難う・・・」

 「使用後のレポート・・・三枚でOKね」


 ちっ・・・
 去り行く華奢な背中から舌打ちが聞こえた気がしたが、厄珍は聞かなかったことにした。











 「よ・・・横島さん・・・すいません・・・」

 「な・・・何がすまないんだっ!?」

 「・・・あの・・・血を・・・」

 「はぁっ!?」

 「血を・・・吸わせてくださいっ!!」

 「だぁぁぁぁ!!止めろっ!!子鳩ちゃん助けてっ!!頼むっ!!・・・って、白目剥いちゃってるしっ」

 「・・・横島さん・・・うーん・・・ジュテームっ!!」

 「ピートさん、やりすぎです」

 ばごっ・・・

 何やら鈍い音が部屋の中に響いた。
 それは、首筋にあるはずのピートの口が何故か横島の唇に触れる瞬間だった。

 派手に部屋の中を転げ回り、壁にぶち当たり、その動きを止める。
 痙攣すらしていない。即死だった。(をい)

「横島さん・・・大丈夫ですか?」

 トンファーをくるくると回しながら、尋ねる少女。
 鮮やかな黒髪は闇の中に溶けて。
 そして、凛とした瞳は月明かりに輝いていた。

 その少女の名は―――おキヌ。

 「・・・助かったよ・・・おキヌちゃん・・・」

 「良かった・・・」

 「でも・・・ピート・・・なんであんなことを・・・」

 まさか―――あいつがホモだったなんて・・・。

 「本当に―――一見まともに見える人物が実は『アレ』という話に偽りなしですね」

 ・・・そうだ・・・子鳩ちゃんは!?

 入り口で、崩れ落ちている子鳩ちゃん白目を剥き、何やらぶつぶつと言っている。

 「・・・横島さんとピートさんがこにゃこにゃでふにゃみゃ・・・ふふふ・・・美味しいですかぁぁぁぁぁ・・・」

 「いかん・・・完全に我を忘れとる・・・おキヌちゃん・・・あ・・・のさ・・・おキヌちゃん?何してんの?」

 瞼を開き、懐中電灯で確認する。完全に瞳孔が開いていた。・・・首を横に振る。そして、それをレポート用紙に書き込む。
最早、男前の影さえないピートの腕を掴み、脈を計る。・・・そして、首を横に振る、そして、それをレポート用紙に書き込む。

 「いえ・・・少々調べ事を」

 「・・・何を?」

 思わず、冷めた視線で見つめてしまう―――と、おキヌちゃんは、すくっと立ち上がり、子鳩をこれでもかっ、と言うくらいに心配そうな顔で見た。
 ごく自然に―――。

 「・・・子鳩さんっ!!大丈夫ですかっ!?」

 普通なら―――白々しいと思うだろう。が、先ほど子鳩ちゃんを見つめたおキヌちゃんの優しく―――慈愛に満ちた眼差しを直視してしまった横島は疑うことが出来なかった。
 それに―――彼女に持っている清純可憐―――というイメージが彼の判断力を鈍らせるのに、一役も二役もかっていたことは言うまでも無い。

 「・・・そ・・・そうだ。そんなことよりも子鳩ちゃんがっ・・・」

 身体を揺する振動にも、まるで反応を示すことは無い子鳩ちゃん。―――彼女を隣の部屋で未だに寝ていた貧に引渡し―――ピートを神の袂へと帰すべく教会へと歩く。

 月明かりの下で見つめる彼女の姿は―――痛々しかった。

 仕方が無いだろう、今日で二人も大切な友人を失ってしまったのだから(をい)。






























































・・・厄珍さん。本当に、たまたまではありますが、二人(?)のライバルを戦闘不能に追い込むことには成功しました―――あなたのお陰です。
―――これからも―――長い付き合いになりそうですね(ニヤリ)。

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