ザ・グレート・展開予測ショー

酔えども、見えず 〜外道編〜


投稿者名:桜華
投稿日時:(03/ 3/ 4)


 最初は、尊敬の念だったと思う。

 あなたの、その素晴らしい能力と人格に対する敬意。

 そして、憧れ。

 僕はあなたの弟子となり、あなたは僕を教えてくれた。他の人間と、なんら変わることのない愛情を注いでくれた。


 嬉しかった。




 はじめてそれを意識したのは、いつからだっただろうか。

 故郷に戻り、そこが破壊されていたときのショックは、それまでのなによりも大きいものだった。

 そこにいたはずの先生の姿が、なかったから。

「まだ、そうと決まったわけじゃない」

 言い聞かせ、落ち着かせた。

 いつでも冷静さを保つこと。あなたの教えの一つだったから。

 心配で心配で、胸が張り裂けそうでした。

 あなたが生きていると知ったときの僕の喜びを、わかってくれますか?

 生きているあなたと再会したときの僕の安堵を、わかってくれますか?

 あの時、知ったんです。

 僕の中で、あなたの存在がこんなに大きくなっていることを。

 あなたがいなければ、僕は生きていけないことを。

 それは、決して褒められることではありません。いえ、非難されるに違いないことです。

 だけど。

 僕は、気づいてしまったから。

 僕は、自分に嘘をつきたくありません。

 先生。






 深夜。

 ノック。

 緊張。

 扉が、開く。

 その人に向かって、口を開く。

 膝が震えて。

 唇は乾いて。

 頭は真っ白になって。

 それでも、無け無しの勇気を振り絞って、僕は言う。

「先生! ずっと前から愛してました!」

 その人は。

 その人は、少し驚いた顔をして。

 そして、優しく微笑んだ。

「私もだよ、ピート君!」

 そう、言ってくれた。






 そして、夜は更けていく。




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