ザ・グレート・展開予測ショー

ずっといるから−後編−


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 3/ 4)


 「あの・・・美神さん、話があるって・・・」

 「あ・・・あ、そうなのよっ、とりあえず、座ってっ!!」

 「は・・・はぁ・・・」

 つい先ほどまでたーくん人形が座っていた辺りに腰を下ろし、横島は頭を掻いた。
 昨日の事はなかったことにして下さいと言うつもりだった。
 独立など考えてみると無謀なことでしかないように思えるし、自分はやはりここにいたいのだと。
 そう言う結論に達したからだ。
 あまり建設的な話ではないが、でも、自分の中で出せた結論には満足していた。
―――が、彼女から話があると言う。
 流れから考えてみても、昨日の話の続きだろう。
 不安な心を打ち消して、横島は耳を傾けた。

 「あ・・・あのね・・・」

 「は・・・はい」

 「し・・・申請書、ここにあるのよ・・・」

 「へ・・・?」

 「あ、昨日のは・・・燃やしちゃったから・・・昨日のじゃないんだけど・・・」

 「・・・」

 横島の顔が曇る。気にしていないわけではないのだ。
 その顔を見、一瞬、彼女は戸惑った。

 (な・・・だ・・・だから、あるって言ってるじゃないの!!申請書・・・)

 「・・・でね。これは・・・私の頼んでたものなのよ・・・」

 「美神さんが?」

 「ええ、私が・・・ね」

 「えっと・・・で・・・」

 「これ、GS協会に提出するから・・・」

 「・・・!?」

 「あ、うん・・・つまり・・・そういうこと」

 ここで、一つ、彼女の予想だにしなかった出来事が起こる。

 「・・・美神さん・・・俺に・・・独立して欲しいですか?」

 「・・・は?」

 「・・・独立・・・して欲しくないなら・・・そう言って下さい」

 「・・・何言ってんの?あんた・・・」

 「どうなんですか?」

 もしも、彼が独立申請書の意味を知っていたなら―――こんなことを聞くことはなかったろう。―――或いは、独立申請書が、近い将来そうなるように、GS免許皆伝認定書と言う名になれば受け取り方は全く違っただろう。

 「・・・え・・・と・・・?」

 つまりは、勘違いである。

 「・・・俺・・・いいっす。独立なんて・・・する気ないっすから」

 好都合である。
 ―――が、先ほどまでた〜くん人形で行なっていたリハーサルの成果は要らない所で生まれてしまった。

 「・・・あ・・・あのねっ、あの申請書、請求してしまった時点で私の面子ってもんが潰れちゃったわけよっ!!」

 「・・・!?」

 「だ・・・だから、この申請書は・・・私の名で出すから・・・」

 「美神さん・・・そうっすか・・・そうっすよね・・・」

 「あ・・・あのねっ・・・」

 「美神さん・・・今まで・・・お世話になりました・・・」

 「・・・お世話・・・って、あんた・・・」

 「・・・俺、いろいろ、ここで経験させてもらいました・・・」

 「だからっ・・・」

 「・・・すいませんでした・・・いろいろ迷惑かけてしまって・・・」

 「えっと、だからね?」

 「・・・俺・・・」

 「・・・ちょっと」

 「ずっと・・・美神さんの事務所にいたかったっす。みんなと一緒に・・・美神さんの傍で・・・美神さんと・・・一緒に」

 「・・・あ・・・あの」

 「でも、我が侭ッすから。気にしないで下さい。・・・面子。潰すわけにもいきま
せんし。この世界、信用第一ですし・・・」

 「うん、まぁ、そうだけど・・・って!」

 「・・・それじゃあ・・・クビっすね・・・」

 そう呟き、踵を返す。
 と、その腕が掴まれる。

 「・・・何すか?」

 「あんた・・・さっき言ったわよね?」

 「何をっすか?」

 「ずっと、私の傍に居たかったって。あれ、本心?」

 「・・・本心っすよ」

 「そ・・・じ・・・じゃあ、私の傍にいなさいよっ」

 「へ?」

 「ど・・・独立申請書を出したからって・・・独立を許したわけじゃないんだからっ!!」

 「あ・・・あの・・・」

 「あんたは・・・ずっと、ずっと、私専属のGSなんだからっ!!」

 「だ・・・え・・・?」

 「きゅ・・・給料は幾らぐらい欲しいの!?」

 「え、あの?」

 「じ・・・時給700円なんてけち臭いこと言わないわっ・・・、月給100万、払ったげるっ!!」

 「・・・あ・・・ひゃはひゃはやはやはやひゃはやひゃ・・・ひゃくぅ・・・」
 
 「な・・・何よっ!!文句あるっての!?」

 「な・・・ないっす。それよりも・・・本当にいいんすか?」

 「・・・良いのよッ!!」





















































 良いのよッ!!・・・ピー・・・きゅるきゅるきゅるきゅる・・・かしゃっ・・・

 ・・・ふふふ・・・令子・・・まさかここまで上手くいくなんてね・・・
 ・・・美智恵君、君って奴は・・・
 ・・・あら?これであの娘も少しは素直になるんじゃないですか?
 ・・・彼女に限ってそんなことはないと思うが・・・
 ・・・まぁ、後は彼次第でしょうね。ふふふ・・・それにしても・・・
 ・・・完璧に・・・プロポーズだね・・・これは・・・
 ・・・意識しないうちに本音が出たってところかしら・・・?
 ・・・どうだかね・・・まぁ、私は・・・横島クンの未来に幸あらんことを祈るよ・・・
 ・・・どういう意味です?神父・・・
 ・・・そのままの意味だが?・・・
















































 「あの・・・美神さん?」

 「何よ・・・」

 「俺・・・ずっと、美神さんの傍にいます」

 「・・・うん」





 そして、高給取りになって初めての給料日―――












 105万円の入った給料袋を持って、本気で殺されるかもしれないと思ったのは内緒の話である。

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