ザ・グレート・展開予測ショー

黒い猫 −後編−


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 3/ 3)


 「・・・シロ・・・どけっ!!」

 「どかないでござるよッ・・・先生・・・拙者の後ろに隠れているでござるぅ」

 「・・・シロ、何てお前は師匠思いの弟子なんだろ・・・あ、やっぱ・・・シロ、どいてくれ」

 「な・・・先生っ!?何を・・・」

 「・・・お前が・・・痛い目にあったら・・・嫌だからな」

 「せ・・・先生・・・」



 完全に二人の空間を作っている横島とシロ。美神は、変身中のヒーローに攻撃してはいけない理論に引っ掛かってでもいるかのように、固まっていた。

 いや、よく見るとプルプルと震えているのが見える。

 ―――寒いのだろうか?

 
 「・・・ありゃあ、天然ね。自分に酔ってる」

 「そういえば、先生言ってたわ・・・しばらくの間は頭がはっきりとしないとか何とか・・・」

 「何で?外傷があるようには見えないけど・・・」

 「中のダメージが酷いって話だけど・・・頭が・・・」

 「頭が悪いのね」

 「・・・うん」


 中が、ね。とフォローしようとしたおキヌちゃんだったが、フォローにならないことに気付き、止める。


 「あんたら・・・何人の前でいちゃついてんのよ・・・」

 怒りが昇華し、呆れてしまっている美神だったが、パイプ椅子を離す事はなかった。

 「先生〜♪」

 「シロ・・・♪」

 「キサマラァァァァ!!!!」

 当然と言えば当然であるが―――再熱したようである。

 「おキヌちゃん、そろそろ止めないと・・・本当に拙いわよ」

 雑誌をお見舞いの品を入れる棚の上に置き、おキヌちゃんに呼びかける、この場を収められるのは、彼女しかいないからだ。
 が・・・。

 「・・・横島さん(ムッ)」

 彼女も怒ってた。その顔はまた、超絶なまでに(以下略)。

 そして、タマモは呟いた。















































 「・・・駄目だこりゃ・・・」

 全くである。




 横島の通う高校には、良く餌をねだりに来る猫がいた。

 黒い手並みの猫。誰にも飼われていない筈なのに、とても美しい猫だった。
 ただ、黒猫と言う、あまり良いイメージのない猫ゆえに、あまり好まれてはいなかった。
 皆無と言うわけではなかったが、それでも、餌をくれる人は少なくて、猫はいつもお腹をすかせていた。
 俯き、にゃあと鳴いている猫に同情したのか、しばし、逡巡しながらも、青年が近づき、自分の持っていたパンを、無造作にちぎって猫に放った。

 「・・・ゆっくりと食えよ?詰まらせたら・・・大変だから」

 それは、何となく出た言葉だった。
 別に、猫が人間の言葉を解するとなんて思ってはいなかったけれど。
 それでも、口に出た言葉だった。
 猫はきょとんとした顔でその青年を見ていた。
 そうしていると、くすりと彼は笑って頭を撫でた。

 「・・・俺もいつも腹空かしてるし・・・同じだな」

 その毛並みの感触は、本当に心地良かった。何時までも、何時までも、彼は撫でつづけた。
 猫は「にゃあ」と一鳴きすると、その与えられたパンを食べ始めた。
 彼から言われたとおりに、ゆっくりと、ゆっくりと。

 撫で撫でが―――心地良かった。






















 彼女はゆっくりと、彼の病室の中に入っていった。

 ぴょこんと飛び出た猫耳に、看護婦は訝しげな顔をしていたが気にする事無く彼の病室を聞き―――。

 そして、途中で買ったカレーパンを手土産に―――

 彼の病室のドアに手を掛ける。







 「・・・横島さん。待ってるにゃん♪」

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