ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫33歳のある日


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 3/ 1)

「ん〜・・・とこれでもないし・・・」

俺は今、今度の仕事に要る道具を探している。

「お?このへん結構それっぽいの多いな・・・」

場所は自宅の物置・・・っていうかこの広さはすでに倉庫と言った方がいいか。
ま、見たのは随分昔だからな。こりゃあ下手すると半日くらいかかるかも・・・

・・・・・・・・・・・・





俺の名は横島忠夫。
見習時代を含めると、もう15年以上もゴーストスイーパーをやっている。
自分としてはただがむしゃらにやってきただけだったのだが、いつのまにやら業界では最強のGSなんて呼ばれるようになってしまった。
ちょっとこそばゆいとは思うのだが、実際にそれなりの成果を上げているという思いは有る。事務所の他のメンバーや、時には友人達の力が有ってこそだけどな。
俺は今でも『美神&横島除霊事務所』の副所長をしている。所長は昔から変わらずに令子のままだ。
令子だなんて呼んでいるので驚く人もいるかもしれないから、一応説明しておこうか?
俺は20歳の時、当時はまだ美神さんと呼んでいた令子と結婚したのだ。それ以来、あいつの希望で「令子」って呼んでいる。
ちなみに夫婦別姓を取っているので、彼女は今でも美神令子だ。
やっぱり「美神」の名前はこの業界じゃ影響力でかいんでね。令子と話しあってそうしようって決めたのさ。
今これを読んでいる君達には信じられない事かもしれないが、結婚してから・・・いや、今にして思えばもっと前。俺が勝手に事務所から1年もいなくなったのに、それを許してくれたあの時からだろうか?
令子は俺の事を1人前として扱ってくれるようになって、信頼を寄せてくれるようになったんだ。
成功して褒められて、失敗して叱られて、難しい仕事もやらせてくれるようになって、一緒に仕事をする時には俺に背中を預けてくれて・・・
全てをひっくるめて言うと、やっぱり1人前に扱ってもらったって言うのがピッタリだと思う。
だからこそ、俺も必死になってそれに答えようとしてきたんだ。
結果、今の自分をかんがみれば、何とか答えられたんじゃないかな?と思う。
そしてその途中、俺は令子に惹かれてた。
前みたいに身体にじゃないぜ?勿論、女性としてさ。
あ、ルシオラはどうしたのかって聞かないでくれると嬉しい。あの当時から、俺にとってルシオラっていうのはもう蛍の事で・・・それってつまり娘として見てたってことなんだよ。
当然愛してた。いや、今でも愛してる!
ただ、あの時はもう、ルシオラ=蛍は恋愛対象じゃなかったんだ。
これを酷い話だって言われれば、俺に否定出来る要素は無いわけで、それでも分かって欲しいとも思う訳さ。
ま、その話はややこしくなるから置いておこう。
それでな?
驚いた事に、令子も俺の事を好きになってくれたんだ。いやあ・・・あの時はビックリしたのなんのって!
俺としては気持ちを打ち明けるつもりも無かったんだ。
美神さんがオーケーしてくれるはずなんて無いと思っていたし、蛍って言う子供を持ってる俺だから、正直迷惑になると考えてた。
そしたら美神さんから告白されて・・・

―― 嬉しかったなぁ ――

ただ、俺がその喜びに浸る間もなく令子と美智恵さんの怒涛の攻勢があって、1ヶ月で結婚式なんて早業だったっけ・・・
何で急ぐのか?って聞いても曖昧にして答えてくれなかったんだけど、そしたらそのうち西条の策略に嵌ったおキヌちゃんが俺に告白してくれて・・・
いや、俺も男だから嬉しかったさ!おキヌちゃんみたいな健気で可愛い女の子に告白されて本当に嬉しかったさ!
むしろ。なんでおキヌちゃんが俺の事を好きになったのかが分からないほどだったよ。

―― でも ――

それ以上に地獄だった。
1週間くらいだったかな?毎日毎日2人の間に挟まれて、何度も何度も何度も何度も挟まれて・・・
脂汗で脱水症状をおこしたほどだよ。
しかも何故か小竜姫様の粋な計らい(?)で、俺は両方と結婚する羽目になっちまったし。
今でこそこれも良かったと思えるけど、当時は自分を殺してやりたいと思ったほどだ。

―― なにしろ ――

それから2年後に、俺は更に2人の嫁さんを貰っちまったからな。
シロとタマモと、半ば強引に押し切られた形で結婚しちまったっけ。

「俺が俺じゃなかったら、俺が殺してたな。」

てくらいヤバイ事しちまったよ。
まぁ、それも良い思い出って事にしとこうぜ?
じゃないと自己嫌悪で沈みそうだ。

・・・・・・・・・・・・





「ねえねえ忠ニィ!どこ〜?」
「ん?ひのめちゃんかい?こっちだよ。」

と、その時入り口の方からひのめちゃんの声が聞こえてきた。俺は探し物の手を休めてひのめちゃんに声をかける。
美神ひのめ16歳。俺の家族で優秀なGS候補だ。俺の弟子でもある。
ひのめちゃんは令子の妹だから、俺にとっては義妹ってことになるんだけど・・・むしろ蛍の親友って事で娘に近い感覚だな。

「忠ニィ〜♪ラ〜〜〜ブ♪」

―― ダキッ ――

「うあっ?!こら、ひのめちゃん駄目だって!?いつも言ってるだろう?そんなに直ぐに抱きついたらイカンて・・・」

駆け寄ってきたひのめちゃんは、そのままの勢いで俺に抱きついてくる。
少しよろめいたが、流石に女の子なんで軽いから、俺は崩れずに抱きとめる事が出来た。

「もう、忠ニィってば相変わらず堅いんだから〜・・・いいじゃ無い?これくらいのスキンシップ。」
「ああ、コラ?そう言いながら首に腕を回すな!それと足を絡めるのもヤメいっ!!女の子がはしたない!」

何が気に入ったんだか、ひのめちゃんは俺の事が気に入っているらしい。
それで、高校を卒業したら俺の嫁になるだなんて戯言をほざいていらっしゃる。

『出来るわけ無いだろ?』

って言ったら、

『忠ニィなら出来る。そんな台詞に説得力無い!』

なんて言われて、二の句が告げられなかった。前科持ちはつらい・・・
とは言え、流石にこれはヤバイ!なんと言っても彼女は令子の妹!つまり結婚したら『姉妹ど○ぶり』になってしまうでは無いですか?
これ以上、人様に顔向けできない人生は勘弁です。
そう言うと今度は、

『もう手遅れだって♪だからほら?毒食らわばそれまで・・・じゃ無い、皿までって事でね?』

にこやかに堕落への道を誘うんじゃ有りません!
そんな訳で、ここの所いかに彼女に諦めさせるかで頭を悩ませている。

「あ・・・それで何か用事なのか?」
「あ、うん!ねえねえ忠ニィ、今日はこれから暇ある?」

小首をかしげて尋ねる仕草は確かに可愛いんだけどね。

「ん〜・・・まあ、これもそんなに急ぎの探し物でもないし、とりあえずは暇も作れるぞ?」
「ほんとう!じゃあ、今日はデジャブーランド行きたい!」

デジャブーランドか・・・そう言えば定期除霊点検もボチボチ行く時期なんだよな。

「ん、まぁ問題無いよ。仕事のついでに遊んで来るかい?」
「やった!決まり〜♪」

デジャブーランドもすっかりオカルトアトラクションが定着しちまって、今では俺の監修した男の子向け施設やら、おキヌちゃんが監修したカップル向け施設やらシロやタマモが監修した施設なんて物まであるのだ。
どれもちょっとしたオカルト技術を用いてるので、霊的にどうしても不安定になる部分も出てくる。
そんな場所には霊が溜まり易いので、ウチの事務所では定期的に点検と雑魚霊の掃除をしているのだった。

「じゃあ準備してきなよ?俺も直ぐ行くからさ。ちなみに他に誰かいた?」
「え?あ、ううん!今日はみんな出払っているみたいよ?」

そうか・・・ま、この仕事なら別に2人でも問題ないか。

「じゃあ、玄関で待ってるね♪」

そう言うと、ひのめちゃんは倉庫から出て行った。

「やれやれ、相変わらず忙しい娘だなぁ〜・・・」

俺はそんな呟きを苦笑と共に漏らしつつ、ちと散らかったままの倉庫を後にした。

・・・・・・・・・・・・





「お待たせ〜♪」

そう言って玄関に下りてきたひのめちゃんは、普段の彼女なら着そうも無いような可愛い系の白いワンピース姿だった。
う〜む。

「ひのめちゃん、すっかり遊びがメインだね?一応除霊もするって事分かってる?」
「勿論!でもデジャブーランドでの除霊くらいならそう気張るもんでもないでしょう?」

まあ、確かにそうだけどね。

「何より、メインはデートの方だもん!折角2人きりなんだから、当然お洒落した私を見せたいのよ♪」
「は〜・・・さいですか・・・」

ほんとに、どうしたもんかね・・・

「ま、車乗って。」
「うん♪」

そう返事をして、ひのめちゃんは嬉しそうに助手席のドアを開ける。
俺も運転席のドアを・・・

「あーーーーーっ?!!」

突然ひのめちゃんが悲鳴を上げた。そのまま助手席を指差す。
それを見るまでも無く、俺にも何が起こったのか直ぐにわかった。

「蛍ちゃん!?」

さっきまで誰もいなかったはずの助手席に、いつのまにやら蛍が座っていたのだ。

「今日はみんな出払っている?じゃあ、なんで私はここにいるのかしら、ひのめちゃん?」
「あ、あれ?あはは・・・こ、こら!蛍ちゃんってば可愛い顔が台無しだぞ?スマイル、スマイル♪」

ああ・・・さては幻術で姿を眩ましてたのか。

「抜け駆けは無しよね、ひのめちゃん?ふふふ・・・さ、みんなで行きましょう♪」
「あ、あはは・・・う、うん!勿論みんなで行きましょうね♪・・・・・・(チッ)」

にこやかな会話だが、最後にひのめちゃんが舌打ちをしたような気が・・・気のせいか?

「ん、じゃあお前らは2人とも後ろな。」
「え〜?」
「え〜?」

ハモる2人。でも、昔っからこの2人は何故か助手席が好きで譲らないので、これが一番早い方法なのだった。

―― ブォォォン ――

渋々ながらも2人は共に後ろの座席へ座る。
それを確認して、俺は車を走らせた。
走り出すと直ぐに、2人はワイワイと話し出す。
基本的には仲の良い2人だからな・・・

「・・・結婚は2人で一緒なんだからね?」
「分かってるって・・・ちゃんと蛍ちゃんの卒業まで待つから。」

なにやら危険な会話が交わされているような気がしたが、怖いので気のせいにしておこう。



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