ザ・グレート・展開予測ショー

こんなおキヌちゃんは好きですか?2 −中編−


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 3/ 1)


 妄想過多。(おひ)

 で、双方考えることは一緒だったわけで。

 ギイッ・・・

 ドアがきしんだ音を立てながら開く。


 「(あれ・・・少し―――どころか、かなり―――早いし、呼び鈴もなってないけど・・・ま、いっか♪)・・・横島さぁん♪・・・・・・・・・って、何で・・・?」

 そこに立っていたのは獣娘’z。

 「な・・・何でと言われても困っちゃうな(汗)♪」

 「せ・・・拙者達、決して先生を誘惑しようと思っていたわけではござらん
よっ!!」

 「ほう・・・誘惑ねぇ・・・」

 「(ば・・・馬鹿犬っ、何を言ってんのよっ)あはははは・・・それじゃあ・・・」

 「マテ」

 そそくさと部屋から出ようとするタマモの襟首を異常な握力で掴む正妻。

 「はひっ・・・」

 「・・・ペットは・・・お外にいるべきよね・・・」

 「「は・・・はい・・・」」



 で。

 「・・・甘く見てたわ。おキヌちゃん、くみやすしなんて、誰が言ったのよ・・・?」

 「拙者は・・・タマモがそう言ったのを聞いた覚えがあるでござるが・・・」

 「そうよっ!!だって、普通そう思うじゃないっ!!だって、おキヌちゃんよっ!?いつもほのぼの、性格もすこぶるいいっていうあの子がえげつない真似を出来るはずはないと思うじゃないっ!!」

 「美神殿への仕打ちを見れば・・・一目瞭然だと思う・・・でござるよ・・・・・・・・・」

 「・・・寝るなぁぁぁぁぁ!!寝たら死ぬわよっ!!シロっ・・・」


 



 夜からの除霊作業を明日に繰り越すことになり、いつもの定時に帰ってきた横島に、先ほどまでの妄想過多な策略を封印することをやむなくされたおキヌちゃんは夕食の準備を手際よく行なっていた。
 手伝うよ、と言う彼の言葉をありがたく受け取りながらも、私の出来ることはこれだけですからと、貞淑な妻を演じていた時に、彼から予想していたもののあまり聞きたくない質問がなされた。

 「・・・あれ?シロとタマモは?」

 「ええ、今日は外に出ているそうです」

 「外に?」

 眉をひそめる横島。

 「ええ、何でも、祭りがあるそうで」

 「祭り?」

 「ええ、犬祭りだそうです」

 でたらめである。

 「・・・犬?」

 シロは・・・狼だよな。いや、待てよ、最近じゃあタマモの言葉にも反応しなくなってきてるし・・・

 「犬・・・祭りか」

 「ええ、犬祭りです」

 「楽しそうだな・・・」

 「そうですか?あまり楽しいものではないと思いますけど」

 彼女の想像の中の犬祭り。

 追い払おうとして逆に威嚇された店員が怯えて恐怖にぶるぶると震える中で、飢えた野犬達が、ファーストフード店の残飯をあさっている。そこにやってくる一際大きな身体の犬。―――しばし睨みあう―――が。
 その犬の吼え声一つで、囲んでいた犬達は四方へ散ってゆく。
 勇ましいその犬は、堂々とそこにある食べ物の占有権を奪い、むしゃむしゃと食べていく。
 そこにやってくる飢えたシロとタマモ、そのいかにも強いですよぉと言わんばかりのその犬を無視して生ゴミをあさり始める。
 何をしやがるんだ・・・この、と言いかけたその犬の咽喉元を掴んで、締め上げる。口から泡を吐き、倒れ付す犬。それを遠めで見ていた先ほどまで餌場を占有していた野犬たちの長がその身体を足蹴にして吼えるところに投げつけられる鳥の骨。

 「うるさいでござる」

 「黙んなさいよ、あんた」

 ほぼ同時に放たれた無慈悲な言葉に、半泣きしつつ、睨みつけるが無視。
 そして、店員ももうどうでもよくなり店内へ戻る。
 すごすごと群れへと帰り、仲間から慰められつつ、自分たちの溜まり場に戻っていく野犬達。
 それを背にただひたすらに残飯をあさるシロとタマモ。





 って。

 もちろん、こんな光景があろう筈はない。なんと言っても、彼女らは賢いのである。


 「ねえ、見つかった?」

 「駄目でござる・・・葉っぱなんて見つからないでござるよ・・・」

 「・・・うーん、それじゃあ、私たち、この寒空の下で野宿する羽目になっちゃうわよ・・・」

 「そうでござるな・・・でも」

 「でも?」

 「やっぱり、葉っぱをお金に変えるなんて・・・先生が知ったら怒っちゃうでござるよ・・・」

 「・・・そうね、あいつ、変な所で真面目だし」

 「それに・・・妖狐がいることが分かってしまったらいろいろ問題に・・・」

 「・・・結構、あんたって賢いのね?」

 「どういう意味でござるか・・・」

 「ま、気にしないで。別にからかうつもりはないから。素直に感心してるのよ」

 「・・・あんまり嬉しくないでござるよ」


 吹き付ける風が、容赦なく体温を奪ってゆく。二人身を寄せれど、焼け石に水である。凍える夜に震えながら、死の予感に絶望を覚える。





 「・・・シロっ!!死ぬわよっ!!眠るんじゃないっ!!」

 「タマモ・・・もう眠いでござるよ・・・あ、父上・・・」

 「父上・・・?っ!!駄目っ!戻ってきなさいっ!シロッ!!」












 「それにしても・・・大丈夫かな?今日は冷えるだろうに・・・」

 「あら、心配なんですか?」

 「そりゃあ・・・ね。探しに行こうかな?」

 「犬祭りの邪魔をするわけには・・・」

 「それに・・・見てみたいしね。犬祭りってどんなのか。おキヌちゃんはご飯作ってて、期待してるよっ」

 「・・・はいっ!・・・(拙いわね)」





 「・・・タマモ。拙者達・・・本気で・・・拙いのでは?」

 「・・・このままじゃ・・・死ぬわね」

 「・・・先生・・・悲しんでくださるかな?」

 「・・・泣いて・・・くれるかもね」

 「・・・それなら・・・拙者・・・先生に思ってもらえるなら・・・」

 「馬鹿・・・あんた・・・もう少しで・・・横島を自分の物に出来るのよ?」

 「・・・だって、おキヌちゃんが・・・」

 「馬鹿・・・あのおキヌちゃんでさえ、難攻不落の美神から横島を奪い取ったのよ・・・。私たちが出来ないはずがないじゃない」

 そこはかとなく矛盾している気がしないでもない。

 「・・・そうでござるな。拙者達・・・もうすぐ・・・先生に・・・」

 「・・・そうよ、だから・・・この際、生き延びる為にはどんなことでもするわよ」

 「どんなことでも?」

 「・・・美神」

 彼女らの顔色は冴えなかった。あくまで、最終手段でしかなかったのだから。

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