ザ・グレート・展開予測ショー

失われたドクロ(11)


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(03/ 3/ 1)



これは横島とシロが倒れた後のお話である。



「あれ?」

「どうしたの?タマモちゃん」

手頃な大きさで綺麗なロッククリスタルを心行くまで選び、美神も妄想から帰って来たので通路を進み、その先にあった階段を下っていた美神とおキヌ、タマモだったが…タマモが何かに気付いたようだ。

「血のニオイがする…誰か、この先で怪我をしてる…」

肉食の獣は、血のニオイならほんの僅かでも恐ろしいほど遠くから嗅ぎ付ける。獲物を狩る為の本能だ。

「…急ぐわよ」

その事を聞いて嫌な予感がした美神は一言そう言って走り出す。

今回は密林の探索もあった為にいつものボディコンにハイヒールではなく、Yシャツにジャケット、ジーンズにジャングルブーツという格好なせいか、いつもよりも速い。

「あ、待って下さいよ〜!」

無言で美神の後を付いて行くタマモと、2人の速さに付いて行けずに徐々に置いていかれるおキヌ。

だが、美神もタマモもスピードを緩めない。階段を何段も飛ばして下へと走っていく。

美神は直感に従って、タマモはシロと横島のニオイを嗅ぎ取って。

おキヌは、何とか少しでも置いていかれないように懸命に走るしかなかった。こんな所ではぐれたらシャレにならない。

「ふぇぇぇ〜…待ってって言ってるのにぃ〜」

段々遠ざかる美神の持つ明かりとタマモの狐火を見て、おキヌは泣き言を言いつつ走った。



美神は走る。

自分でも何故こんなに急いでいるのかは分からない。でも、絶対に今走っている事は間違っていない。そんな確信を持って美神は走る。

タマモも走る。

近付くにつれてどんどん血のニオイは強くなっていく。横島とシロが危ないかもしれない。仲間の事を思い、タマモは走る。

そして、走る2人の前にピラミッドが見えてきた。

一瞬立ち止まって素早く周りを見渡し、危険が無いと確認してピラミッドへと走る美神。

立ち止まらずに己のカンと嗅覚を信じて、危険は無いと判断してピラミッドを駆け上がるタマモ。

立ち止まらなかった分、少しだけ早くタマモがピラミッドの中へと入っていく。

そして遅れて来たが、2人がピラミッドへ入っていくのを見て追いかけるおキヌ。

「ふぇぇ…また階段ですかぁ〜…しかも登り…」

…泣き事は言っていたが。

そして、おキヌが階段の途中で少し休もうか悩んでいる頃…美神達は倒れている横島とシロを見つけた。



「横島っ!シロッ!」

すぐさま駆け寄り、ヒーリングを開始するタマモ。どうやら横島よりシロの方が少しだけ重症らしいが、人狼だから大丈夫だろうと判断して横島の治療を優先する。

一方、美神は何もせずにただ立っていた。

かつて中世に横島やマリアと時間移動した時の事がフラッシュバックする。

血を流して、動かない横島。あの時、若きカオスはこう言った。

「残念じゃが……死んどる」



「イヤァァァ!横島君っ!?」

「ちょっ…どうしたの美神さん!?落ち着いて!横島は大丈夫よ!ちゃんと生きてるわ!!」

突然取り乱して、横島をタマモから奪い取ろうとした美神をタマモが叱咤する。

「…あ…」

それで落ち着いたのか、自分が何をしようとしたのか気付いて顔を赤く染める美神。

この美神令子ともあろうものが、動揺して横島なんかに縋り付こうとしたなんてっ…

かぁっ!

ますます赤くなる美神。もうすぐ湯気でも立ちそうだ。

見かねたタマモが声をかける。

「美神さん、それよりもシロを…」

「あああああ!!横島さん!シロちゃん!」

そこにおキヌが到着した。

ああ…コイツも落ち着かせないといけないのか…

タマモは少し投げやりな気分になった。



タマモが横島を、その横でシロをおキヌがヒーリングする。おキヌも横島の方を担当したかったのだが、早い者勝ちとばかりにタマモが放さなかったのだ。

おキヌのヒーリングは手からだが、タマモのヒーリングはシロと同様、舐めて治す。おキヌは恨めしそうに横島を見ていた。

その間、美神は周辺を警戒する。ヒーリングという癒す能力は彼女にはトコトン向いていないようで、さっぱり出来ないのだ。

そして、あたりにやたら蝙蝠が落ちている事に気付いて調べる美神。

「これは…蝙蝠が横島君達を襲ったっていうの?」

「違うんですか?」

ややご機嫌斜めのまま、美神に聞くおキヌ。

「このあたりにいる蝙蝠はメキシコヘラコウモリって言って血を吸ったり人を襲ったりしないはずなのよ…それも、とっくの昔に絶滅したはずなのに…」

「でも、現にいるじゃないですか?それに横島さんもシロちゃんも怪我してるんですよ?」

「だから、おかしいのよ…何かに操られたとかでもない限り、こんな事は起きないはず…」

「って事は…親玉が近いって事ね」

今まで横島の治療に掛かり切りだったタマモが口を出す。仲間に手を出された落とし前は付ける、とその目が語っていた。

「ええ…そういう事よ」

そう言った美神の目もそう語っていた。



そしてそんな燃える2人に、唐巣さんの事を覚えていますかー?とツッコミたいけど、怖くて出来ないおキヌは…シロのヒーリングに集中した。

宴会で一人だけ最後まで素面だったり、こういう時乗り遅れた人間は損をするという良い例である。

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