ザ・グレート・展開予測ショー

失われたドクロ(10)


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(03/ 2/28)



これは、師匠を助ける弟子のお話である。



「ピート君……こっちだよ、ピート君…」

「先生っ!?待って下さい先生ー!」

幻の師匠に導かれるままに突っ走るピート。

しかし不思議な事に、それでも彼は横島達と同じようにピラミッドに辿り着く事が出来た。

……本当に不思議だ。

「ここは…そうか!ここにいるんですね?先生っ!!」

そして当然の様に突っ込むピート。

すでに躊躇も迷いも一切存在しない。

見事なまでの暴走ッぷりだ…どうやら、道に迷っているうちに悟っちゃいけない事を悟ったか、入っちゃいけないスイッチが入ってしまったらしい。

「先生!今行きますよ、先生っ!」

目は血走り、呼吸は荒い。何か助けに行くと言うよりも、トドメを刺しに行くかのようだ…

そもそも、唐巣が攫われたのかどうかもハッキリしていないのだが…

すでに、彼の中では邪教徒に攫われて生贄にされかかっているのは確定事項らしい。

いや、もしかしたらすでに故人にされている可能性すらある。

恐るべし、ピエトロ・ド・ブラドー!



そして、そのピートの向かう先には…



「そんなにくっつくなよ、シロ…動き難いだろうが」

「いいではござらんか、先生♪」

横島と腕を組み…というより、横島の腕に抱きつくシロと、それに文句を言う横島がいた。

『遺跡での冒険』という心踊るシチュエーションに喜んでいたシロだが、ふと気付けば横島と2人っきり。普段のサンポでもそれは同じなのだが、そこはそれ。今は『遺跡での冒険』というシチュエーションなのだ。

こういう場合、ひろいんとひーろーは協力して危機を乗り越え、最後には結ばれると決まっているでござる!

ハリウッド製のアクション映画のお約束を元に静かに妄想を開始するシロ。

このまま行けば、拙者と先生は……



「大丈夫か、シロッ!」

「拙者は大丈夫でござる。でも、先生は…」

「ふ…シロ、お前が無事ならそれでいい。それでいいんだ…」

「先生…」



横島の腕にさらにギュッとしがみ付き、顔を赤らめてシッポを激しく左右に振るシロ。

そんなどこか馴染み深い症状に、こめかみから汗を流しつつ気付かない振りをするしかない横島。

そんな時、横島の耳に何かが聞こえてきた。

「シロッ!」

緊張した横島の声に瞬時に我に返り、横島の腕を離して霊波刀を作り出して構えるシロ。

「先生…」

「ああ…何か来るな…」

同じく栄光の手を発動して、足を肩幅に開いて腰を落とし、戦闘体制を取る横島。

2人の霊感と直感が告げている。これから来る相手は、敵だ。

キィキィ キィ キィキィ

段々と音は近付いてくる。

音は鳴き声に変わり、バサバサという羽音も加わった。

そう思ってすぐ、2人の視界は黒一色に染められた。

「な…なんだーー!!わぷっ!?」

「先生っ!?」

わけが分からず、闇雲に栄光の手を霊波刀状態にして振り回す横島。だが、口を開いて叫んだせいで、何かが口の中に入ってしまった。

シロにはそれが何かが分かっていた。視界をふさがれる前、人狼の動体視力で飛び掛ってくるモノ達が何かが見えていたのだ。

それは、蝙蝠だった。

「グウッ!?」

数十匹の牙で齧られ、激痛に顔をしかめるシロ。

だが、蝙蝠達の勢いは止まらずなおも齧られる。

「う…うあぅ……こ…の……なめるなぁーー!!!」

シロは己の霊力を全開にして放出。全身に取り付いた蝙蝠を弾き飛ばす!

「先生っ!!」

そのまま、横島のいた方を振り返る。そこには…

床に横たわる黒い塊…倒れて蝙蝠に全身を齧られるがままになっている横島の姿が有った。

「先生から離れろっ!」

シロは怒りのままに霊力を込めた両腕で横島に取り付いた蝙蝠達をなぎ払う。

その攻撃で背中から足に掛けて取り付いていた仲間がやられたのを感じ、横島から一斉に飛び立ち、攻撃目標をシロに変えて襲い掛かる蝙蝠達。

しかし、今のシロの敵ではない。

シロは超加速並みのスピードで全ての蝙蝠を切り払う!

蝙蝠達もその攻撃を感知は出来た。超音波を発し、その反射を耳で聞く事で地形や物体を感知する、ソナーの原型となった能力を蝙蝠は持っている。

しかし、回避が追いつかない。見えたからといって、避けられるわけではないのだ。

回避が、攻撃が、シロに届かない。

一分もせずに、そこに動くモノはシロ以外にはいなくなった。

「ぐ…」

怒りで一時的に忘れていた疲労や痛みがシロを襲う。しかし、シロにはまだ倒れるわけにはいかない理由がある。

「先生…」

うつ伏せに倒れたままピクリともしない横島をひっくり返し、上を向かせてヒーリング…傷口を舐めながら呼びかける。

「先生…先生…起きて下され、先生…」

シロも全身に浅いとはいえ傷を負っている。しかも、一時的にリミッターをブッちぎって体を酷使した反動と疲労が眠りへと誘う。

「先生…」

それでも、ヒーリングを続けるシロ。

「せ…んせ…」

しかし、限界が来たのだろう。シロは横島に覆い被さるようにして気を失ってしまった。





その直後にその場に来た半吸血鬼が2人が殺されたと勘違いして暴走をシフトアップ。「仇は取ります」と言って2人に対して十字を切って先へと進んだのだが…

しばしの休息を取る2人には、そんな事は関係が無かった。



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