ザ・グレート・展開予測ショー

本当の自分


投稿者名:NGK
投稿日時:(03/ 2/28)


―都内某所―
「ちぃ・・・これでラストか・・・!」
予想外の苦戦で無駄弾を撃ちすぎた―――西条は舌打ちした。
「ならばいっそ賭けにでるか・・・?」
装弾しつつ自問自答をする。
「チャンスは―――必ず来る筈だ」
相手は知能がほとんど崩壊した悪霊。
こちらが冷静になれば如何と言うことはないはずだ。
そう、精神を落ち着かせる。

深呼吸を 1回 2回 3回 ・・・・・・今っ!!




ややあって、悪霊が完全に滅びたのを確認すると西条は適当な場所に腰掛けた。
「ふぅ・・・これで今日の仕事は全て完了・・・か」
口に煙草を加えライターで火を点ける。
「最近、悪霊の発生率が高まりつつあるな・・・上に報告しないといけないな」
鞄の中に入れていた資料に目を通す。
やはり、去年の今頃のデータと違って今年は二割ほど頻度が高い。
「だからこそ、僕たちGメンの必要性が生まれたわけだが」
「・・・なに格好つけているんだ?」

!?

「よ、横島くんか・・・驚かすな・・・」
西条が見たのは、額にバンダナにGジャンにGパンの少年―――横島忠夫であった。
「へっ・・・あんまり『俺はカッコいいぜ』なポーズをしていたからだ」
横島はそう言うと意地悪な笑みを浮かべた。
「ふん・・・君の相手をしているほど僕は暇じゃないんだ」
そういうと西条は場を立ち去ろうとした。
「・・・・・・あんまり怒るとハゲが広がるぞ(ぼそっ)」

?!?!

「な・・・!最近、妙な噂が流れていると思ったら・・・君が広めていたのか・・・っ!」
「おいおい、俺はただ、『西条が毛生え薬をじっと見ていた』とだけしか言ってないぞ」
そう言いながら横島の目は笑っている。
「馬鹿にするのも大概にするんだな・・・この霊剣ジャスティスが正義の刃を振るう―――」
口上を述べている間に横島の姿は視界から消えていた。
「まったく・・・あの男は・・・・・・」


―魔鈴の店―
「?どうしたんですか西条先輩。不機嫌そうですねぇ」
「・・・僕は別に不機嫌なんかじゃない。」
そうかな?と思いつつ深い詮索を魔鈴は避けた。
それで話を変えようとする。
「そういえば、今日、横島さんが店にいらしてました。それで横島さんったら・・・」
魔鈴は笑い顔を浮かべながら楽しそうに横島の話をする。
―――それがたまらなく西条には不快だった。
だから思わず口に出る。
「魔鈴君はあんなやつの何処がいいんだ・・・?」
魔鈴と西条のつきあいは二人がイギリス某大学の同じオカルトゼミの先輩、後輩だったからもう、7年以上になる。
その魔鈴が自分に不快を与えている横島の話を楽しげに話しているのが気に食わなかった。

それだけではない。

自分の師である美神美智恵の一人娘にして、現在西条が好意を寄せている美神令子も横島のことをあしらいつつも何処となく好意を寄せている感がある。
「(詰まる所、僕は奴が気に食わないんだな・・・)」
西条は、そう自問自答する。
奴に初めて会ってから自分がオカシクなっていく。
自分も。そして周りも。
「・・・横島さんのいいところは、西条先輩が一番分かっているんじゃないですか?」
魔鈴が西条の心の声を聞いたかのように言う。
「(僕が?馬鹿な・・・ダメなところしか見えないぞ)」
「うふふ・・・」
魔鈴は笑いながら食べ終わった皿を下げる。
「・・・なにが可笑しいんだ?」
「先輩のその顔です」
はぁ・・・。
どうも魔鈴と話すると気が削がれる。
「頼むから真面目に答えてくれないか?」
「私は答えを言いましたよ」
新たな料理を載せた皿をテーブルに運びながら魔鈴は さらり と言った。
「そうですね・・・先輩って変わりましたね」
そうだ。たしかにあの男と出会ってから僕は変わった。昔の自分と比べると雲泥の差であるように思える。
巷では『愉快な西条』という風聞も立っているという。
「昔の先輩はどちらかと言うと取っ付き難いというか・・・彼女を連れていても楽しそうな表情をあまりしてませんでした」
魔鈴は西条の目を真っ直ぐに見る。
「だから、すぐ別れて・・・また新しい彼女を作って・・・の繰り返しでした・・・よね?」
「まぁ・・・な。実際、なんで彼女たちが別れを次々に告げるのか、僕はその理由が分からなかったけどな」
魔鈴は表に掛けてある表札を『CLOSE』にすると使い魔の猫を抱き寄せた。
「でも今はそんなことありません。傍で見て先輩の感情がすぐ分かります」
「―――だが、僕は僕らしさを失った―――あの男の所為で」
「そうでしょうか?」
飽きたのか使い魔の猫は魔鈴の胸元から飛び出し、厨房の方へと去っていく。
「私は今の西条先輩が本当の姿だと思っています。なにより自然に振舞っていますし」
「・・・・・・」
馬鹿なっ!と一蹴したかった。
魔鈴に向かって「僕はそんなに面白い男ではない」と言いたかった。
けれど・・・・・・。
否定できない自分が居る。
たしかに、日本に戻ってきて―――横島と出合ってから内にストレスを溜め込むこともほとんど無くなった様な気がする。
大学の頃は理由も分からず別れを告げられたことや人間関係の煩わしさにストレスを感じることも少なくなかった。
けれど今は―――。
「そうだな・・・少しだけでもあの男に対する認識を変えても良いかもしれないな・・・」
あくまでその点だけは。
西条は口をフキンで拭いた。




―――人は出会いと別れを繰り返す。
西条は横島と出会って果たして良かったかどうかは自分で出すこととなるだろう。
その時、西条が如何いう結論を出すかは―――西条自身を含めてまだ知る者は居ない。










―――ちなみに翌日、美神から毛生え薬を涙を抑えながらプレゼントされた時は横島に対して殺意を持ったという。

西条が剣を横島に向かって振り回している姿が目撃されているというが・・・それは又、別の話だ。


――――――完――――――

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